植野友和=文・写真提供
日本でもきっとはやる!?
日本人の好みに合わせた中華料理ではなく、本場の味をそのまま提供する「ガチ中華」の飲食店が日本で今なお増え続けている。蘭州牛肉麺や麻辣燙(マーラータン)の専門店も今や都内では珍しくなく、この勢いはまだまだ止まる気配がない。では、次に日本でブレークする本場のグルメは何かと言えば、筆者の大予想では「螺螄粉」、すなわちタニシ麺である。
タニシ麺とは広西チワン族自治区柳州市のご当地グルメであり、タニシでダシを取ったスープに発酵させたタケノコや湯葉、野菜、落花生などの具材を加えた米粉(ライスヌードル)だ。そう聞くと何やらゲテモノのようだが、酸味、辛味、旨み、香りが絶妙にマッチしたスープと滑らかな食感の米粉の相性が抜群で、タニシの泥臭さはまるでない。ちなみに、中国ではこのタニシ麺が全国で人気爆発中。多くの人は「臭いけど一度食べるとやみつきになる」と言うが、この臭さとはタニシではなく主に発酵タケノコによるところが大きい。発酵食品を日常的に食する日本人にとって気になるほどのものではないというのが個人的な印象だ。
中国には悠久の食文化が存在するが、タニシ麺が生まれたのは1980年頃で、比較的新しいグルメと言える。改革開放後、柳州市は工業の発展により、各地から多くの労働者が集まる地となった。同時に、彼らの食の問題を解決する必要が生じたが、当時の中国は物資が豊かではなく、労働者が仕事を終えて帰宅する頃には肉がないこともしばしばだった。そこで、昔から食べられていたタニシを米粉の具としたところ、これはおいしいと評判になり、やがて柳州といえばタニシ麺と言われるほどのご当地グルメに成長した。
ECがブームを後押し
タニシ麺は、まさに柳州市の人々のソウルフード。それが全土に広まった背景には中国の発展が大いに関わっていると語るのは、中国最大級のタニシ麺製造企業である螺覇王食品科技有限公司の創始者・姚漢霖氏だ。
「2015年以降、中国の食品産業で技術革新と標準化が進み、かつて15日間しかもたなかったタニシ麺の半製品の賞味期限は9カ月にまで伸び、味もおいしくなりました。それと同時に、インターネットの普及に伴うEC産業の成長により、全国どこでもタニシ麺を購入できるようになったのです」
かつて柳州で暮らし、働いていた人々が別の地方に移り住み、ふとタニシ麺のことを思い出したとき、スマホさえあればすぐさまECで購入でき、早ければ翌日には自宅に届く。中国におけるITの進歩と応用、物流インフラの整備もまた、タニシ麺の全国的ブームを後押しした重要な要素と言える。
情報化時代において、一国で起きたブームは時としてまたたく間に世界を席巻する。タニシ麺ブームも同様で、中国国内にとどまらず、すでに海外でも広まりを見せている。
「私たちは一貫して海外市場を重視しており、米国、EU、東南アジア、そして日本など世界中に製品を輸出しています。反応は上々で、例えば米国を例に挙げると、かつての購入層は全て現地に暮らす華僑・華人でしたが、今では全体の18%が米国の一般の消費者、つまり中国をルーツとしない人々によって買われています。タニシ麺の世界への普及はまだまだ余地があると考えており、当社は各国の食品基準、そして人々の味の好みに合った製品を今後も開発していきます」(姚漢霖氏)
アジアの食を専門とするライターの友人によれば、都内の中国系雑貨店やガチ中華の店で近年タニシ麺をしばしば見掛けるという。皆さんも機会があれば固定観念にとらわれることなく、ぜひ味わってみていただきたい。さらに言えば、ぜひ柳州市を訪れて本場の味を体感してほしい。タニシ麺にも中国にも言えることだが、「食わず嫌い」ほどもったいないことはない。大事なのは、伝聞情報や思い込みで敬遠するのではなく、現地で自ら体験すること。タニシ麺、柳州市、そして中国はきっとあなたに新たな発見と感動をもたらしてくれるはずだ。
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