特集 「一帯一路」、世界の繁栄を促進

2019-08-05 14:27:18

「一帯一路」イニシアチブは、2013年に打ち出されて以来、6年連続して政府活動報告に盛り込まれた。その表現は当初、「計画を急ぐ」だったが、近年は「着実に進める」に変わり、今年は初めて「第三国市場での協力を開拓する」となり、「一帯一路」建設の事業配置もますます具体化、着実化している。

成果を評価し、疑問を直視する

「『一帯一路』の共同建設に重要な進展があった」。今年の政府活動報告は、「一帯一路」イニシアチブの昨年の成果をこのように評価した。同イニシアチブが打ち出されて5年来、「一帯一路」建設は毎年新たな発展があり、その成果は誰もが認めるところだ。中国と「一帯一路」沿線諸国との5年間の輸出入貿易の総額は、6兆4691億9000万に達し、関連する国々への直接投資額は800億を上回る。中国の企業が沿線国家で建設した海外経済貿易協力区は計82カ所で、当該国に収めた税金費用は累計20億1000万に達する。また、当該地域に24万4000人の新たな雇用機会を産み出した。「一帯一路」は、各国が抱える発展という課題を解決し、各国との共同発展を推し進めるために、新たな道筋を切り開いた。こうしたことから、「最大規模のグローバル経済振興計画」と賞賛されている。

「一帯一路」イニシアチブは数々の成果を上げ、それはまた各国の共通利益と合致しているが、またいくつかの疑念も出された。これに対して中国政府は積極的に発言し、道理にかない根拠のある説明をし、こうした疑問や困惑について答えてきた。いわゆる「債務のわな」の問題については、王毅国務委員兼外交部長(部は日本の省に相当)は、以下のように述べている。「一帯一路」が各方面にもたらしたものは、あまたの協力のチャンスである。「一帯一路」の協力を通して、アフリカ東部には初めての高速道路が作られ、モルジブでは初の海上大橋ができ、ベラルーシでは自国で初の自動車製造業を立ち上げた。こうした事実は、「一帯一路」は決して「債務のわな(陥穽)」などではなく、人々に恩恵をもたらす「餡餅(中国風お焼き)」である(注陥穽と餡餅の中国語の発音が似ている)。これは決して「地政学的な道具」などではなく、共同発展のチャンスである。「一帯一路」建設への参入は、各国が発展の歩みを加速させ、沿線諸国の人々の生活改善の要求を実現するとともに、互恵ウインウインの将来を切り開いた。

同イニシアチブが透明性に欠けるという疑義に対し、第13期全人代第2回会議で張業遂報道官は、「一帯一路」は共同協議共同建設共同享受(7)を堅持し、また市場化した運営モデルを堅持する。プロジェクトの選択、あるいは投資や融資の協力であろうと、いずれも参入する各方面が共同して意思決定する――と述べた。

「一帯一路」は各国の主権を尊重する土台の上に、平等の参入、互恵ウインウイン、考え方を押し付けない、従来の発展モデルの真似はしない――という形で築く。「一帯一路」建設は、沿線諸国への「輸血」であるとともに、それ以上に、これらの国々が自ら「造血」機能を強化し、当該地域の経済社会の発展とグローバル経済の枠組みの中で、競争力アップを促進することに力を入れており、沿線諸国から広く歓迎されている。

「第三国市場協力の開拓」を提起

今年の政府活動報告で李克強総理は、「共同協議共同建設共同享受を堅持し、市場の原則と国際的に普及しているルールに従って、(中略)、生産能力をめぐる国際協力を強化し、第三国市場での協力を開拓する」と打ち出した。注目すべきは、この「第三国市場での協力開拓」だ。これは、政府活動報告の「一帯一路」に関連する部分に初めて盛り込まれた。

「第三国市場での協力」は、中国が創設した国際協力の新たなモデルだ。中国の優位性のある生産能力と先進国の先進技術、多くの発展途上国の発展の需要を効果的に結び付け、1+1+1<3の効果を実現するものだ。現在、「第三国市場での協力」は、すでに「一帯一路」を共に建設する重要な内容となっている。

「一帯一路」建設推進事業指導グループ室の副主任で、国家発展改革委員会の寧吉喆副主任は、中国とフランス、カナダ、日本、シンガポールなどの国々が、すでに第三国市場協力の文書に正式に調印した、と紹介する。将来は、中国と関係国および企業が一緒に第三国市場の協力範囲を広げ、投資生産経営の市場を開拓し、積極的に新たな協力モデルを生み出し、互いに長所を発揮し、多くのウインウインを実現するだろう。

「一帯一路」の「細密画」を描く

「一帯一路」イニシアチブの提案と実施は、地域発展問題の解決に新たな構想を提供した。また、中国の(「一帯一路」)沿線省に発展思考の転換を絶えず促進し、同時に当地に発展のチャンスと幸福をもたらした。

開放のレベルが高い沿海部の省として、広東省ではこれまで積極的に「一帯一路」建設に参入してきた。国有企業以外で、広東省の多くの民営企業も積極的に「一帯一路」建設に身を投じてきた。こうした企業は、同省の地理的な優位性や華僑という資源、歴史的な伝統を利用し、東南アジアの諸国と多くの事業協力を展開してきた。その中の多くのプロジェクトはすでに定着し、素晴らしい成果を上げている。全人代の広東省代表で、華南師範大学経済管理学院の林勇教授は、「一帯一路」への参入は、広東省と沿線諸国から見れば、ウインウインの場であると話す。広東省の加工業の発展は速く、その商品と技術は「一帯一路」の沿線諸国の需要と合致している。品質がよく低価格な家電や洋服などは、東南アジア以外にアフリカでも大いに歓迎されている。もともと主な貿易の対象は欧米の国々だという企業は現在、欧米地域からの注文が減少しているが、アフリカなどの国からの注文量は絶えず増え続けている。このため、ここ数年、保護貿易主義のリスクが高まっているが、「一帯一路」の追い風を受けて、広東省の対外開放レベルは依然として上昇しており、輸出入額も持続して増えている。

これまでの成果という基礎の上に、中国政府は「一帯一路」に対して、また新たな要求を打ち出した。習近平総書記は、昨年8月に開いた「一帯一路」建設事業推進5周年の座談会で、以下のように指摘した。過去数年にわたる「一帯一路」の共同建設は、全体配置を終えた。大きな「全体像」は描き終え、これからは焦点を絞って仕上げにかかり、共同で念入りにきめ細やかな「細密画」を描かなければならない。世界が注目する「細密画」をどう描くか。どうやって「一帯一路」イニシアチブをさらに仕上げ、より深くより実質的に推し進めていくか――。この求めに対し、会議に出席した代表委員は次々と建議献策を述べた。

「民心が通い合うことは『一帯一路』協力の基盤と前提であり、沿線諸国の民衆の相互理解がなければ、プロジェクトも順調に展開できない。民間交流の促進について、日本には参考に値するものがある」。全国政協委員で人民中国雑誌社の王衆一総編集長は、かつて「一帯一路」沿線諸国を訪問視察したことがあり、現地で見たこと、聞いたことから民心が通い合うことの大切さを非常に理解している。「今年の私の提案は、いかに民心の懸け橋を共同で構築するかについてのものだ。沿線諸国の言語に対応する外国語人材の育成を強化し、人的文化的交流の基盤作りをし、発展の恩恵が現地の人々にもたらされるように提言したい」

また、全人代代表の雷軍小米(シャオミ)会長兼CEO(最高執行責任者)は、「一帯一路」の総合サービスプラットフォームの創設を進言した。政府の関係各部門や民間の関連団体、金融保険機構などの各方面による連携体制を構築し、これを通して企業の海外での経営行為の参入と指導、規範化を行い、無秩序で悪性の競争を防ごうというものだ。

全国政協委員で、中華全国弁護士協会の呂紅兵副会長は以下のように指摘する。複雑で変化の多い国際環境のため、海外投資はリスクにさらされている。「一帯一路」建設は法律を先行させ、海外業務を担当する弁護士人材の育成を国家人材育成計画に取り入れ、中国の弁護士事務所の海外での業務展開を奨励しサポートすべきだ。また「一帯一路」沿線諸国では、中国企業の後ろ盾となって守る役割を発揮させるべきだ。

世界経済発展への大合唱

この5年来、国際社会の「一帯一路」イニシアチブへの認識は、当初の疑心暗鬼から喜び歓迎へと様変わりした。ますます多くの国々が、「一帯一路」建設は一国の経済発展の一人芝居ではなく、世界経済発展の大合唱であり、中国と他の国々が共に発展するための協力ウインウイン(8)の道だと認識するようになった。

カザフスタンのカイラトケリムベトフ元経済発展貿易相はこう考える。「一帯一路」イニシアチブは他の何かの体制と競争しようというのではなく、人々の団結をグローバルに促進するだけだ。各国とも古い経済地政学的な競争の観念から脱却し、今の時代は多くの協力のチャンスがあるということを十分に認識すべきだ。また、ベラルーシのアナトリートジク元副総理は、「一帯一路」イニシアチブが着目するのはユーラシア大陸ではなく、地球全体である。リスクと不確実性が日増しに高まる国際的な枠組みの中で、「一帯一路」は先進国と発展途上国が協力する重要な懸け橋となっている。そして、相互不一致を相互信頼に転じ、障壁を寛容に変え、対立を協力に化している、と指摘する。さらに、英国ケンブリッジ大学のシニア研究員マーティンジャック氏は以下のように述べる。「一帯一路」イニシアチブが解決しようとするのは、1945年以降の世界の核心的な課題――世界の人口の85%を占める発展途上国のモデルチェンジの問題だ。「一帯一路」の沿線諸国は、全体的に依然として工業化の途上にあり、発展モデルの転換は重い課題だ。インフラ設備の建設や貿易投資の円滑化、貧困脱却、またバランスが取れ、包摂的で、恩恵が広く行き渡る持続可能な発展を推し進めるなど、遅れた地域の発展問題とモデルチェンジの問題の解決について、「一帯一路」は大きな支えとなっている。

最近になり、日本の各界の「一帯一路」に対する考え方と態度に、前向きな変化が出てきた。昨年5月、李克強総理が訪日の際に調印した『中日の第三国市場協力に関する覚書』も、中日の「一帯一路」協力の基礎を固めるものとなった。

外交学院戦略平和研究センターの蘇浩主任は、今がまさに中日がより深い協力を強化する良いタイミングだと指摘する。東アジアの経済発展は「雁行モデル」から「水平協力モデル」へと転換中で、「メードインチャイナ」と「メードインジャパン」は、「メードイン東アジア」へシフトチェンジ中だ。中日が東アジア経済共同体を推し進める中で、幅広い協力の空間と原動力が生まれる。中日両国は「一帯一路」イニシアチブをきっかけに、競争を協力に変え、互いの長所を補完(9)すべきである。また、立命館大学の周瑋生教授は、「一帯一路」は国際公共財として、その究極の目標は世界の持続可能な発展を推し進めることにあり、そのために中日は沿線諸国と協力し、低炭素共同体の建設やエネルギー環境共同体を作ることができる、と考える。さらに『国際開発ジャーナル』誌の竹内幸史編集委員は以下のように語った。中国はエネルギッシュな若者で、日本は衰えた老人のようだ。「一帯一路」イニシアチブのような全体的長期的な視野に立つ理念は、ある種のソフトパワーをもたらし、中国と手を取り合っての協力に、この老いた日本は引き付けられるだろう。

現在、深層的な協力が展開されている中日経済貿易関係は、新たな分野を切り開き、新たなモデルを模索する新たな段階を迎えた。「一帯一路」イニシアチブはまさに、共同協議共同建設を基盤とし、参加する全てに共通利益を大いに拡大し強化するプラットフォームだ。中日両国が「一帯一路」イニシアチブを契機に、より広い国際舞台で革新的な協力を展開できれば、中日関係の長期にわたる健全な発展、アジアひいては世界の安定と繁栄のために、より多くより大きな貢献を果たすことになるだろう。(段非平=文)

人民中国インターネット版 201985

 

 

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