特集 さらに密なる日中関係に期待

2019-08-05 14:45:27

日興リサーチセンター理事長 山口廣秀(談)

 

現在の中国経済は、全体的に減速している。鉱工業生産が落ち込み、企業マインドも悪化している。需要面を見れば、個人消費、住宅投資が弱含み、固定資産投資もインフラ投資を中心に力強さに欠けるなど、内需が全体として低調だ。さらに対米貿易摩擦もあって、輸出が減少している。先行きについては、輸出のさらなる下振れなどから、減速感を強める可能性が高い。

以上が生産、マインド、需要項目といったものを見渡しての、中国経済への現状評価と見通しだが、このような動きの背景には、次のようなことがあるのではないか。一つは、明らかに対米貿易摩擦の影響が出ており、輸出や生産に下押し圧力がかかっていること。二つは、中国も含めたグローバルな半導体のサイクルが後退局面に入っている可能性があること。三つは、以前から言われてきたことだが、中国国内における設備ストックの行き過ぎた積み上がり、一部都市での住宅の供給過剰、企業の債務過多など、経済全般でいろいろな過剰が存在し、この面から調整圧力が強くかかっていることだ。

政府活動報告に対する印象の一つは、中国当局が今の中国経済について、相当厳しい認識を持っているのがはっきりしたということだ。私は先ほど、中国経済が減速しており、この先もさらに減速すると言ったが、政府もそのような認識を持った上で、より厳しい可能性も踏まえながら、大規模な景気対策を打ち出したということだろう。具体的には企業向けの減税、公的年金保険の企業負担の削減、地方政府の債券発行枠拡大、国有銀行の中小企業向け貸し出しの増加など、さまざまな手段を講じている。そういう点では、大胆な施策を必要な時にきちんと打っていく、いわば「果断さ」を感じる。一方、李克強総理は、「ばらまき型の景気刺激は行わない」と発言しており、政策のバランスへの配慮もうかがわれる。また、今年の国内総生産(GDP)成長率を60~65%と低めの見通しを頭に置いていることも現実的だ。

ただ気になるのは、先ほど述べた通り、中国が直面する課題が大きいということだ。対米貿易摩擦は、交渉がある程度前進しても、完全な解決は期待しにくい。景気の下振れ懸念に対し、当局が刺激策を打ち出しても、設備ストック、住宅ストック、企業の借り入れなどが過剰となっている下では、効果が出にくいかもしれない。その時にはいろいろな手立てを中国政府や党が考え対応すると思うが、ぜひ柔軟な構えでかつ迅速な対応をされることを期待したい。

「外商投資法」の成立によって、外資系企業の権利や権益がしっかりと確保されれば、外資系企業にとってメリットは大きい。同法がしっかりと実施されることが大切だ。そうなれば結果として、中国経済が一段と対外的な開放の度合いを強めることになる。外資系企業の権益がしっかりと守られるというのなら、日本企業の対中投資をプッシュする材料になるだろう。「外商投資法」の実効性について懸念の声があるようだが、中国政府もさまざまなことを考慮に入れて法律を作ったのだから、懸念の声などにも耳を傾けながら、きちんと実施してほしい。

以前から言われてきたように、日本と中国は一衣帯水の隣国だ。しかも、世界経済の中で第3位と第2位を占める両国は、これまで以上に密接な関係を築くべきだろう。その意味では、日中は、昨年来、政治的にも経済的にも非常に良好な関係にあり、これは今後も維持していくべきだ。ナショナリズムや自国第一主義が世界的に広がる今、日本と中国が手を携えて協力関係をより密なものにしていくことは、アジア経済、ひいては、世界経済にとって非常に重要なことだ。こうした面も含め、日中関係がますます密なものになっていくことに期待したい。

人民中国インターネット版 201985

 

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