【貧困脱却 決着に加速】起業奨励し「空洞化」解決

2019-08-08 10:03:46

 

 

かつて出稼ぎをしていた許華金さん夫妻は、ふるさとに帰って、そこで牛の牧畜を通して村民を豊かな生活へと導いた(写真喩捷)

 

青天村は豊都県の北部、県政府所在地から80も離れた深刻な貧困村だ。党支部の劉定甫書記によると、この村は人口1200人余りだが、1850歳の常住人口は200人足らずで、村に残るのはほとんどが高齢者と子どもだという。

正午近くになっても、村内ではあまり人を見掛けない。たまに見掛けても、高齢者ばかりだ。彼らは自宅で食事の準備をしたり、孫の面倒を見たり、道端でれんが積みの仕事をしたりする。このような高齢者や子どもだけが残った村に対しては、どのように的確な貧困救済を行うべきだろうか。

働き盛り「空洞化」の悩み

向正海さん(67)の息子は出稼ぎ労働者として、同村から1300余り離れた広州で働いている。2人の孫娘ももう結婚している。「この子は孫ではなく、ひ孫です。この子の親も出稼ぎに行っていて、家に残っているのは私と夫だけ。普段はこの子のためにご飯をつくったり洗濯したりしています」。向さんはそばにいる4歳の男の子を見てほほ笑んだ。現在、向さんは毎月約1000元の養老保険給付金と、数ムーの茶畑から得られる収入で生活している。「生活は何とかやっていけます。このひ孫がいて良かったです。夫と二人だけだと、きっと寂しかったことでしょう」

向さんより3歳年下の張淑芳さんの家で、劉書記は次のように状況を紹介した。「張さんの夫は腰の椎間板ヘルニアになって、重労働ができません。息子が2人いましたが、長男は十数年前、子ども1人を残して事故で亡くなりました。次男は重慶市で家庭を持ったため、年に2回しか戻りません」。この話になると、張さんは顔を曇らせた。

張さんは毎月約110元の社会保険給付金の他、基本養老保険給付金を受け取っており、裕福とは言えないが、金銭的には心配ない暮らしをしている。彼女にとって、いま一番の問題は夫の病気だ。治療を受けたが、効果はあまりなかった。そのため、家のことは全て張さんが一人で何とかしている。家の中や外であくせくしていると、暮らしが辛いと感じてしまう。

働き盛りの労働力の不足による「空洞化」現象(8)が、この村では非常に顕著に現れている。もともと村には61世帯248人の貧困者がいた。14年からの努力によって、すでに56世帯237人が基準に達し、貧困脱却を実現した。しかし、彼らのほとんどは出稼ぎによって貧困から脱却している。劉書記は言う。「出稼ぎする人さえいれば、その家庭は貧困になりません。そのため、出稼ぎはこの村で貧困脱却の鍵となっています。しかし、この方法は不安定で、『空洞化』した村の収入の問題と家庭の問題を根本から解決してはいません」

政府と村民の共同模索

中国では都市化の急速な進展に伴い、青天村のような農村地域における空洞化現象はますます多くなっている。農村に定住する働き盛りの労働力はどんどん少なくなっており、村に残った高齢者や子どもをいかに扶養するか、いかに農村の実情に基づいて豊かになる道を切り開き、出稼ぎに行った若者たちの帰郷起業を呼び込むかが、「空洞化」した村における貧困脱却の難関攻略の鍵となっている。これについて、劉書記は青天村が模索している発展モデルを紹介した。

まず、政府がインフラ整備に投資し、人々の生活環境を改善する。村民はその建設に参加し、労働報酬を得られるようにする。村では、数人の高齢者男性が階段や小道を敷設するための石材を運んでいるのを見掛けた。尋ねると、皆60代だった。1日働けば8090元の収入になるという。その中の一人が、「こういう仕事は体力を使いますが、家でじっとしているよりましです」と率直に話していた。

劉書記によると、こうすれば、村内の環境改善を通して、出稼ぎに行った人々の帰郷業を呼び込めると同時に、政府の投資が労働報酬の形で直接、村民の懐に入るという。「これこそ、政府と村民による共同建設と共同享受です」とは、村の党幹部の言葉だ。

さらに、村民が自分の土地を茶葉栽培のために企業に譲渡し、農家として1ムー当たり80元の譲渡費用を受け取るとともに、企業の労働者として整地や除草作業を行い、1日60元の報酬を得られるようにしている。昨年、豊都県政府は企業投資を誘致し、村民の土地を集団譲渡の形で茶葉生産企業に譲渡した。そして、集団としての村と企業がそれぞれ利益の30%(村の分は、その3分の1を貧困世帯の手当てに回す)、村民が40%を得る、いわゆる「3+3+4」の仕組みで収益を配分するようにした。劉書記は、「このような貧困救済のモデルなら、企業は損をしないし、村民は貧困を脱却できるし、産業のスケールメリット(9)も生まれます」とその特徴を説明する。

そして、三つ目の取り組みとして、村民の自発的起業を奨励している。「貧困救済の鍵は村民の心の中の原動力にあります。人々に充実感や素晴らしいビジョンを持たせてこそ、貧困を脱却する原動力を呼び起こせます」と豊都県の李五洲副県長は言う。劉書記の考えでは、貧困救済はまず志を育てなければならず、村民に原動力があって初めて、貧困脱却に励む行動が自発的なものになる。

長く出稼ぎに行っていた許華金さんと彭桂英さん夫妻は12年にふるさとに戻った。そして、村内の未開墾地で牛の牧畜を始めた。昨年、二人の小さな牧場の売り上げは三十数万元に達した。二人はさらに、牧場をやっている村民たちにノウハウを教えたり、製品の販売を手伝ったりしている。許さんは、こうすることが皆の利益になると考えている。牧場は普段、二人でやっているが、忙しい時は村の貧困世帯の人をアルバイトとして1人1日100元で雇うこともある。

現在の青天村は政府のけん引と村民の努力によって、次第に貧困の泥沼から抜け出し、新たな様相を呈しつつある。(李剛=文)

 

人民中国インターネット版 201987

 

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