PART1 社会に浸透し産業を活性化

2023-02-20 10:06:00

沈暁寧=文

「クラウド」展示は人々が現場に足を運ぶことなくさまざまな展示会に参加できるようにし、5G+8K技術は北京冬季オリンピックの模様をあらゆる角度から捉え、高解像度で世界中に配信し、インダストリアルインターネットは従来型製造業のハイエンドな特注生産を可能とした。 

2012年の中国共産党第18回全国代表大会(第18回党大会)以降、中国はデジタル経済発展戦略を踏み込んで実施し、デジタルインフラを絶えず整備して、データ要素の潜在力を活性化させ、デジタル産業化と産業のデジタル化を力強く推進し、デジタル経済の発展で大きなブレークスルーを達成した。今日の中国に目を向けると、デジタル経済は目覚ましい成長を遂げ、中国社会と人々の生活に幅広く大きな変化をもたらしていることがうかがえる。 

  

政策が導く急速な発展 

19年以降、中国政府は相次いで「国家デジタル経済イノベーション発展試験区実施方案」「より整ったリソース配置システム・メカニズムの構築に関する意見」など、デジタル経済分野のトップデザインを打ち出している。21年に公表された第14次五カ年計画(2021〜25年)綱要は、「デジタル経済を発展させ、産業のデジタル化とデジタル産業化を推進し、デジタル経済と実体経済の深い融合を後押しする」と、いっそう明確に提起しており、デジタル経済の発展を各分野、さまざまな次元からサポートするとしている。 

昨年1月、国務院が通達した「第14次五カ年計画デジタル経済発展計画」は、25年までに中国がデジタル経済における中核産業の増加値(付加価値額)をGDP比で10%にまで伸ばし、データ要素の市場システムをおおよそ確立し、産業のデジタルトランスフォーメーションを新たな段階に押し上げると指摘している。また、デジタル産業化水準を顕著に高め、デジタル化公共サービスをより広く、均等に恩恵をもたらすものとし、デジタル経済ガバナンスシステムをより整備すると明記している。さらに、35年までに統一的かつ公平で、秩序のある競争が行われ、成熟して整ったデジタル経済現代市場システムをつくり上げ、デジタル経済の発展水準が世界トップレベルとなるよう目指すとしている。 

昨年10月、第20回党大会が盛大に開催された。中国の今後の5年間、さらにはより長期的な発展を図り、布石を打つこのたびの大会で、習近平総書記は第19期中央委員会を代表して報告を行った。その中でデジタル経済を加速させ、デジタル経済と実体経済の深い融合を促進し、国際競争力を持つデジタル産業クラスターを築かなければならないと指摘した。 

欧陽日輝・中央財経大学中国インターネット経済研究院副院長は、中国のネットユーザー数は世界一であり、デジタル経済の規模は長年にわたって世界第2位をキープしており、デジタル経済と実体経済の深い融合は中国式現代化を具現化する重要な事例となっていると述べた。 

先日、国家発展改革委員会のスポークスマンは、今日における中国経済・社会の発展状況に関する記者からの質問に対し、5Gやデータセンターに代表される新型インフラは経済・社会のデジタル化、スマート化によるモデルチェンジと人々の素晴らしい生活への願いを満たす強力な支えであると指摘した。国家戦略レベルから新型インフラ整備を統一的に推進する上で、注目すべきは次の五つのキーワードだ。一つ目は「イノベーション」である。テクノロジーの反復応用を加速させ、システムとメカニズムのイノベーションを深化させ、新技術・新産業・新業態・新モデルを積極的に育み、科学技術の自立自強を力強く支える。二つ目は「融合」である。次世代情報技術と従来型インフラの深い融合を推進し、交通・教育・医療・金融など各業界のデジタルトランスフォーメーションを加速させ、民生分野のスマート化サービス水準を高める。三つ目は「システム」である。空間レイアウトとサプライ構造を最適化し、新型インフラの総体的発展におけるパフォーマンスを向上させる。四つ目は「人民のために」という点である。人民を中心とすることを堅持し、共同富裕の目標を実行に移し、デジタルデバイド(情報格差)をなくすよう努め、人民の満足感と幸福感を高める。五つ目は「安全」である。新型インフラの建設で常に安全発展の理念を貫き通し、データの安全、インターネットの安全を重視して、リスクを事前に防止し、取り除いて、新型インフラの安定的な運営を担保する。 

欧陽副院長はこの点について、デジタル経済は人々に多様化した製品とサービスをもたらし、物質文明と精神文明の調和のとれた発展を後押しすると分析している。また、同氏は、デジタル経済は社会の発展の活力を引き出し、産業の深い融合を後押しし、地域のバランスの取れた発展を促進するものであり、中国が共同富裕を実現するための重要な手段であると考えている。 

  

各地に生まれる新型インフラ 

どこまでも起伏が続くチョモランマの雪山に設けられた5G基地局が「世界の屋根」に5Gの信号を届け、通信技術の新たな世界記録を打ち立てた。 

近年、中国は5G基地局の整備をすさまじい勢いで進めており、5Gネットワークのカバーエリアを絶えず広げている。昨年8月末までに、中国の5G基地局の総数は210万2000カ所に達した。 

王志勤・中国データ通信研究院副院長は、「現在、5Gに代表される次世代通信技術のイノベーションが活発だ。中国の5Gネットワーク構築は世界をリードしており、技術革新は絶えずブレークスルーを果たし、大規模応用は正念場に入っており、デジタル経済の発展に強靭な原動力をもたらしている」と述べた。 

整備が進んでいるのは5Gだけではない。工業・情報化部のデータによれば、昨年8月末までにモノのインターネット(IoT)、4G基地局の総数はそれぞれ75万5000、593万7000に達し、複数のネットワークが共に発展し、都市部と農村部をあまねくカバーし、重要なシチュエーションにしっかりと対応できるインターネットインフラ網が形作られている。これは中国のデジタルインフラが絶えず整えられている縮図である。 

金壮龍・工業・情報化部部長は、地上と宇宙空間が一体化し、クラウドコンピューティングと通信ネットワークが融合し、スマートでアジリティがあり、グリーン・低炭素で、安全かつ制御可能なスマート化した総合デジタル情報インフラの建設を加速させ、経済・社会の発展におけるデータの「大動脈」を開通させると指摘した。また、金部長は、このことが次世代テクノロジー革命と産業変革のチャンスをつかみ、デジタル産業化と産業のデジタル化を促進し、発展の新たな原動力をつくり出すための必然的な選択であるとした。 

ここ10年間、中国は情報技術の進化の流れをしっかりと捉え、インターネット強国戦略を全面的に実施し、デジタルインフラは飛躍的発展を遂げ、世界で最大規模を誇り、技術的に先行した光ファイバー・モバイル通信ネットワークを構築してきた。また、全国の大都市・中都市全てを光ネットワーク都市とし、光ファイバーネットワーク帯域は10兆から100兆、1000兆ビットと指数関数的な伸びを実現している。モバイルネットワークは3Gのブレークスルーを果たし、4Gで世界に並び、さらには5Gで世界をリードするという飛躍を遂げ、全国の大都市・中都市全てと県城(県政府所在地)の中心部で5Gネットワークの全域カバーを実現し、全国の行政村でのインターネット環境整備という歴史的偉業を成し遂げた。 

  

人々の暮らしに浸透する 

データによると、12年から昨年までに、中国のネットユーザー数は5億6400万人から10億5100万人に増加し、インターネット普及率は42・1%から74・4%にまで向上した。 

それと同時に、「インターネット+(プラス)」が教育、介護、貧困扶助など多くの分野に深く浸透している。EC、リモートワーク、遠隔医療、オンライン教育といったインターネットの応用が全面的に普及し、モバイル決済の年間取引額は527兆元に達しており、ネット通販、ライブコマースなどに代表されるデジタル消費の新業態と新モデルは社会の人々、とりわけ若者が好む消費スタイルとなっている。デジタル技術やデジタル経済は個性と品質にこだわる人々の多様化したニーズを満たし、皆が目の当たりにし、実感できる恩恵をもたらしている。 

現在、都市部ではQRコードのスキャンによる料理の注文や顔認証決済などが日増しに流行し、市民たちの日常生活をより便利なものとしている。また、農村部では、デジタル技術が従来型農業のスマート化農業への転換を加速させ、ライブコマースなどによって農産物がへき地から出荷されるようになり、ますます多くの農民たちの増収につながっている。 

新型コロナウイルス感染症の発生以降、デジタル技術とデジタル経済は感染症対策を後押しし、生産と生活を回復させる上で際立った効果を発揮した。数多くの市・県の病院や郷・鎮の診療所に5Gを使った遠隔医療設備が設置され、患者が診療を受けるまでの時間が大幅に短縮され、診療効率も明らかに高まった。また、5Gネットワークを応用して都市と農村の教室を結ぶことで、村の子どもたちが都市の優れた教育リソースを享受できるようになった。 

データが頻繁に行き交うことで、人々はその分出歩かなくて済む。ここ10年間、中国におけるデジタル政府ガバナンスのサービス機能は顕著に高まっている。「デジタル中国発展報告(2021年)」は、中国の電子行政がオンラインサービス指数の世界ランキングで9位にまで上昇し、「手のひらの上で行える手続き」「指先で済ませられる手続き」は各地の行政サービスで普通に見られるものとなり、インターネットを使ったワンストップ公共サービスや省を跨いだ一括手続きがプラスの効果を生み出していることを示している。また、90%以上の省級行政許可事項はインターネットを通じた受理と一括処理を実現している。 

  

各業種・業界を活性化させる 

昨年9月、2022年世界デジタル経済大会と第12回スマートシティー・スマートエコノミー博覧会が浙江省寧波市で開かれ、人工知能(AI)、ブロックチェーン、メタバースなどデジタル経済の先端分野とデジタル化改革の最新成果が一挙に発表され、デジタル経済の魅力を大いに示した。 

ここ10年間、中国のデジタル産業化は急速に発展し、先進的で完全なIT産業体系がおおよそ築き上げられた。12年から21年までに、通信ネットワーク事業の収入は1兆800億元から1兆4700億元に増加した。モバイル通信および光通信分野における一部のコア技術は世界の先端水準に達している。基幹をなす多くのリーディングカンパニーが登場し、そのうちインターネット企業9社は世界の時価総額トップ30に名を連ねている。 

同時に、デジタル技術と各業種の融合が加速しており、工業のデジタルトランスフォーメーションがスピードアップし、工業企業の生産設備のデジタル化水準も持続的に高まっており、より多くの企業がクラウド化を推し進めている。5G、インダストリアルインターネット、ビッグデータ、クラウドコンピューティング、AIの工業製造、港湾、鉱山といった業種・分野での応用が加速し、応用事例は累計5万件を超え、新技術・新業態・新モデルの発展が盛んになり、各業種・業界に顕著な効果をもたらしている。 

「第14次五カ年計画デジタル経済発展計画」は、21年から25年までの同計画の期間中、中国のデジタル経済が応用の深化、規範的発展、普遍的恩恵の共有という新たな段階に向かうと明確に指摘している。 

専門家によると、中国は要となるコア技術の難関攻略に力を入れ、新型インフラの建設を加速させ、デジタル経済と実体経済の融合発展を推し進め、重点分野のデジタル産業発展を推進し、デジタル経済の発展をルール化し、デジタル経済ガバナンスシステムを整備し、積極的にデジタル経済の国際協力に参加すべきであるという。今後、中国は必ずや膨大なデータと豊富な応用コンテキストの優位性を十分に発揮し、デジタル技術と実体経済の深い融合を促進し、従来型産業のモデルチェンジ・アップグレードを活性化し、新産業・新業種・新モデルを生み出し、デジタル経済をより強く、より優れ、より規模の大きなものとしていくことだろう。 


北京経済技術開発区の5Gクラウド運転代行ドライビングルームで、無人車をリモートで監視し操作するスタッフ(新華社)

 

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