人文交流で社会的基礎を

2023-08-26 17:48:00

中国社会科学院日本研究所研究員金嬴=文

今年は中日平和友好条約締結45周年に当たる。条約は1972年の中日共同声明を踏まえて、初めて法律の形で両国関係発展の原則と方向を確認した。その第3条には、「両締約国は、善隣友好の精神に基づき、かつ、平等及び互恵並びに内政に対する相互不干渉の原則に従い、両国間の経済関係及び文化関係の一層の発展並びに両国民の交流の促進のために努力する」と明記されている。 

ソフトパワーを注ぐ人文交流 

中日は一衣帯水の隣国であり、人々がよく言う両国の二千年の友好交流史は、中国の文字史料に基づくもので、両国民の実際の交流史は、史料に記載される時間をはるかに超えている。数千年来、交通が不便であろうと、政権が交代しようと、両国民の自発的かつ持続的な往来が阻まれることはなかった。 

両国がまだ国交を回復していなかった1955年、中日双方は民間協定の方式で「中日文化交流の発展に関する合意」に達し、民間友好を増進し、外交局面を打開するために先頭に立つ役割を果たした。中日平和友好条約が締結された翌年、両国はさらに「文化交流の促進のための中華人民共和国政府と日本国政府との間の協定」を締結し、両国間の文化、教育、学術、スポーツなど多分野の交流ルートを正式に開いた。 

2008年、二国間協力をさらに発展させ、互恵関係を促進するため、両国政府は「文化センターの設置に関する中華人民共和国政府と日本国政府との間の協定」に調印し、常設の文化交流プラットフォームを構築することによって、両国間の相互理解を増進し、両国の友好関係を発展させている。19年6月、習近平国家主席と安倍晋三首相(当時)は人文(人的・文化)分野の交流・協力を持続的に強化し、民間の友好・交流を積極的に展開するなどの共通認識に達し、そして同年11月に中日ハイレベル人文交流協議メカニズムを正式に構築した。昨年11月、中日首脳がバンコクで会談し、二国間関係の安定と発展について五つの共通認識に達し、人文交流の拡大が再び強調された。 

半世紀にわたるさまざまな歴史的段階において、中日の人文交流は積極的に発展し、両国関係も時代とともに絶えず前進してきた。1980年代は中日関係の「蜜月期」と呼ばれたが、当時の両国間の交流・協力は非常に限られており、二国間の貿易額は200億㌦にも満たず、年間の人的往来は30万人余りにすぎず、両国民はお互いに対して近くて遠い、なじみがあるようでよく知らないような感覚だった。しかし今は、中日の二国間貿易額はすでに3200億㌦に達し、新型コロナウイルス感染症発生前の2019年、両国の人的往来は年間延べ1200万人という歴史的記録を打ち立てた。中日関係が今日の広さと深さに達したのは、人文交流が必要不可欠な役割を果たし、大きな功績を上げたからだといえる。 

新時代の三つの基本的問題 

3年間のコロナショックと世界政治・経済構造の激変を背景に、中日人文交流事業は目下、岐路に差し掛かっている。いかにして交流の新たな局面を再開し切り開き、交流の新たな次元をレベルアップし開拓するかは、新しい時代の要請にふさわしい中日関係事業を構築する上で避けては通れない課題となっている。この課題に応えるために、私たちは三つの基本的な問題、すなわち何のために人文交流をするのか、人文交流とは何か、人文交流をどのように行うかを深く考える必要がある。 

何のために人文交流をするのかという問題に答えるには、まず中日関係が非常に特殊な二国間関係であることを明確にすべきだ。今年は中日平和友好条約締結45周年に当たる。筆者の知る限り、新中国がこのような条約に調印した国は二つしかなく、日本はそのうちの一つだ。そして日本がこのような条約を締結した国はただ一つ、中国だけだ。平和友好条約は両国の近代以降の不幸な歴史の終点であるとともに、平和友好の新たな出発点でもある。これはわれわれが先人から受け継いできた共通の歴史的な約束であり、常に肝に銘じ、身を粉にして実行し、人文交流によって中日の世々代々にわたる友好の社会的基礎を固める必要がある。 

人文交流とは何かという問題に答えるには、「人文」という言葉の核心的な意味を的確に把握しなければならない。人的・文化交流の分野は非常に広く、交通が便利で情報が発達した現在、中日両国間で毎年行われる関連活動は数え切れないほど多い。しかし、交流活動が増えれば増えるほど、トップダウン式の政策策定は核心に戻らなければならなくなる。「人文」が注目する核心は、人間活動の価値と意義だ。百年間なかった大変動の下、中日両国民は普遍的な不安ないしは困惑を覚えている。人文交流活動がより良い効果を上げるために重要なのは、混沌とした時代背景の中で真の人間を表現し、その人間が体験した文化活動を通じて、感動を得たり、感情を刺激したりすることだ。双方の同感と共感を呼んでこそ、共通思考と共同行動に向かうことができる。すなわち、相互につながる共通の運命を思考し、不確実な時代においてより価値と意義のある活動を確定することだ。 

人文交流をどのように行うかという問題に答えるには、交流の基本原則とはお互いを尊重し、平等に付き合うことにあることを肝に銘じなければならない。大国間の駆け引きが日増しに激しくなっている現在、国際的な人文交流活動には多かれ少なかれ、顕在的または潜在的に文化主導権に関する競争の要素が混じっている。そのため、中日関係が置かれている特殊な環境を踏まえ、両国の人文交流活動を推進する際、文化の異質性を特に尊重し、「和合の精神」を核心とする異文化的アイデンティティーを培い、より広い範囲の文明交流・相互学習・相互参考を展開し、地域を規範化し、世界に影響を与える人文共同体、人類文明の新たな形態の構築に努めなければならない。 


6月、日本人歌手のメイリアさん(右から3人目)が中国人歌手と中国のステージ上で、中日両言語で日本のアニメソング『ブルーバード』を歌った(bilibili)

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