メカニズムを構築し健全な関係を
中国社会科学院日本研究所研究員呉懐中=文
今年は中日平和友好条約締結45周年に当たり、両国にとって重要な意義を持つ年だ。今年に入ってから、双方の安全保障分野での対話や意思疎通は進み、いくつか具体的な進展も遂げた。
防衛交流が順調に再開
2月、中日は東京で4年ぶりに第17回安全保障対話を行い、中国外交部の孫衛東副部長と日本外務省の山田重夫外務審議官が議長を務めた。双方はそれぞれ自国の外交・安全保障の理念や防衛政策を説明し、共に関心を持つ多くの議題について踏み込んだ意見交換をした。また、防衛当局間における海空連絡メカニズムの下でホットラインを早期運用開始することで合意した。3月末、両国の防衛当局の合意に基づき、双方はホットラインの設置を完了させ、運用開始に向けて調整を行った。4月、第15回中日高級事務レベル海洋協議が東京で行われ、中国外交部の洪亮辺境海洋事務司(局)司長と日本外務省の船越健裕アジア大洋州局局長が議長を務めた。双方は全体会議のほか、「海上防衛」「海上法執行および海上安全」「海洋経済」の三つのワーキンググループ会議を行い、海洋関連の両国間の問題について全面的かつ踏み込んだ意見交換を行った。5月、中国の李尚福国務委員兼国防部長は北京で日本の浜田靖一防衛大臣と初めて海空連絡メカニズムホットラインで通話し、両国関係と両国の防衛関係について意見を交換した。
これらの措置は非常に必要で時宜にかなったもので、中日の安全保障関係の発展・変化および現在の状況と密接に関わっている。現在の状況は1978年のときと全く違っている。
安全保障関係の四つの段階
78年に平和友好条約が締結されたとき、両国の関係は平和と友好だと定義されたが、当時の大きな特徴の一つとして、中日の間には、安全保障の分野における直接なやりとり、または接触などがほぼなかった。安全保障は中日間において問題ではなかった。これは、両国の間に、実際は安全保障の懸念も実質的な協力もなく、主として共通の脅威に直面する場合の戦略的な歩み寄りと協調だけがあったことを意味している。
条約の締結から、中日の安全保障関係はマクロ的に少なくとも四つの段階を経てきた。72年から90年代前半までは全体として戦略的相互支援と政治的友好という段階だった。90年代半ばからは、相手国に対してある程度安全保障上の懸念もあったが、比較的大きな戦略的曖昧さと安全保障上の進退できる余地を保っていた。2010年代に入ると、両国には、ある種の安全保障が緊迫化する傾向があり、日本は中国を「国際社会の懸念事項」とし、中国も日本が中国を潜在的な脅威と警戒対象としないよう忠告したり批判したりしていた。しかし、特に注目すべきはもちろん、現在の第4段階だ。
この段階は基本的にいえば、昨年末に発表された日本の外交・防衛政策の最上位の戦略文書に当たる国家安全保障戦略が中国を「これまでにない最大の戦略的な挑戦」と位置付けたことから始まっている。現在、両国間の戦略・安全保障上の相互不信や軍事的対峙の態勢および防衛上の摩擦は、1978年の平和友好条約締結以来の頂点に達している。日本は、国力が向上し、国防現代化建設が急ピッチで発展した中国を明らかに「軍事的脅威」と見なし、大掛かりな対応措置を講じた。一方、中国は日本が中国を対象とした自国の軍事大国化を進めていることに対して警戒を強めており、その「軍事力強化」や「米国に追従し中国を抑圧する」などの政策について厳しい批判や非難を与えた。詳しく分析すると、日本側の主動的な行動が両国間の不安状態を刺激し、悪化させていることがよく分かるだろう。
防衛強化は平和に役立たず
日本は「中国脅威」への対応を政策の原点とし、安全保障の転換や防衛態勢の強化を進め、これまでになかった遠距離攻撃能力を構築するために第2次世界大戦後の最大規模の防衛力整備計画を閣議決定した。また、島や海の紛争を巡り、強硬な姿勢で中国と対峙し、日米同盟および地域外勢力との軍事・安全保障上の連携を強化し、台湾や南中国海など中国の核心的かつ重大な利益に関わる問題において両国関係に消極的な動きを取り続け、その国内で「台湾有事は日本有事」という論調・認識はどんどん強まり具現化している。このような日本の動きについて、米国のタイム誌すら、岸田首相にインタビューした特集記事で、岸田首相が世界第3位の経済大国である日本を真の軍事大国に変えるビジョンを立て、何十年も続く平和主義を放棄したと記述した。中国外交部は日本側に対し、「事実を無視し、中日関係に対する約束と両国間のコンセンサスに背いた」「軍事力整備の口実として、いわゆる『中国脅威』をあおり立てることは必ず失敗に終わる」などと批判した。
前述のような日本の動きはすでに中国が非常に懸念している安全保障問題となっており、近年の中日の安全保障上の緊張はすでに公開化し激化している。安全保障と軍事の話題は両国民の両国関係への考え方を左右しており、両国関係の大局に大きく影響し、さらに長期にわたる消極的な影響をもたらす可能性もある。このような状況は東アジアの安全保障リスクの深刻さを反映し、警鐘を鳴らした。両国民の利益に合致しないし、地域ひいては世界の平和と繁栄にも役立たない。
安全保障対話を早急に
このため、中日は長期にわたって続いた得がたい平和の状態を大切にし、平和友好条約締結45周年という節目を生かし、両国関係の緩和と改善に資するさまざまな交流・祝賀イベントを行うべきだ。新しい時代の要請にふさわしい建設的かつ安定した関係を構築するために、両国はこれから「時は人を待たず」の覚悟で安全保障と防衛の分野で信頼醸成のために力を入れて短所を補い、基盤を打ち固めるべきだ。
まず、海空連絡メカニズムとホットラインを十分に活用し、ほかにも各レベルでさまざまな意思疎通・危機管理メカニズムを構築し、双方の海上・空中における危機管理能力を強め、誤った判断による軍事的トラブルを回避するようにすべきだ。その上で、マクロ的な取り組みについて、両国は安全保障・防衛分野の戦略的対話と政策協議を行い、関連分野の高官の交流・意思疎通を強化し、それぞれの能力と意図の透明性と相互信頼を増進すべきだ。また、世界の戦略的勢力均衡と地域の安全保障情勢を共に検討し、世界の平和と安定の維持に建設的な役割を果たすこと、中日と国際の多国間協力などについて対話・協議することも考えられるだろう。具体的な取り組みと実際の運営について、中日は「重大軍事行動相互通報メカニズム」や「海空衝突回避ルール」などの確立、両国の海上法執行機関を海空連絡メカニズムに組み入れること、双方の各兵種や軍事学校、現場の士官・兵士の交流のさらなる開放ひいては制度化・定期化を検討してみるのがよいだろう。
2019年4月、海上自衛隊のあきづき型護衛艦「すずつき」が青島の港に到着し、中国海軍成立70周年記念国際観艦式に参加した(vcg)