PART2 世界平和と繁栄に新たな力
段非平=文
今年は「一帯一路」共同建設の構想が打ち出されて10周年になる。この10年、「一帯一路」建設は、分裂ではなく団結、対立ではなく協力、排除ではなく包摂という理念を貫き、徐々に平和の道、繁栄の道、開放の道、イノベーションの道、文明の道へと発展してきた。「一帯一路」は中国の発展と繁栄を促すと同時に、人類運命共同体の建設を積極的に推進し、新たなグローバル化の発展をリードし、世界に幸福をもたらす「発展のベルト」であり、人類に恩恵をもたらす「幸福のロード」である。
新時代開く開放・包摂・共有
古代シルクロードは、これまで千年以上にわたって繁栄と友情の奇跡を目撃し、戦乱と衰退の悲劇を見続けてきた。いかにして富を創造し、利益を分かち合い、友好を発展させ、協力・ウインウインと平和的共存を実現するか――これは古代シルクロードが現代人の知恵を試す歴史の問いである。
現在の世界はこの百年なかった大変動にあり、一国主義や覇権主義、強権政治がけん伝され、国際情勢は深刻で複雑だ。こうした背景の下、中国は「一帯一路」共同建設の構想を打ち出した。これは、各国の協力の最大公約数と利益の接点を模索することにより、地域、ひいては全世界に平和協力の懸け橋を築くということだ。「共に議論し、共に建設し、共に分かち合う」という核心原則であれ、「政策面の意思疎通、インフラの連結、貿易の円滑化、資金の融通、民心の通じ合い」という目標・方策であれ、どれも平和協力のビジョンを反映している。平和の希求は「一帯一路」の本質的な特徴で、協力の促進は「一帯一路」の基調でありベースカラーである。
「一帯一路」建設を推進する過程において、「中国の地政学的道具説」や「債務のわな説」「立ち遅れた生産能力の移転説」などの疑義と雑音が絶えず上がっている。こうした誤解や中傷に対し、中国は事実によって答えている。この10年、中国と「一帯一路」沿線諸国・地域の協力において、中国がいかなる政治条件も付けず、他国の内政に干渉せず、社会制度や発展モデルの押し付けや、物品の押し売りもしないことを国際社会ははっきりと目にしている。ましてや、「一帯一路」は地政学ゲームの一手などではない。対立を対話に代え、対抗を協力に代え、文明の学び合いによって文明の衝突を乗り越えるという「一帯一路」の理念は、徐々に全世界のコンセンサスとなった。
「一帯一路」が強調するのは、開放・包摂・共有という発展のプロセスであり、排他的な「グループ」を作ることではない。イデオロギーで参入者を区別はせず、ゼロサムゲームの論理も取らない。中国がその後に打ち出したグローバル発展イニシアチブ、グローバル安全保障イニシアチブなどは、「一帯一路」をさらに力強く後押しした。
イタリアのロレンツォ・ディ・メジチ国際学院のファビオ・マッシモ・パレンティー副教授は次のように指摘する。現在、人類は気候変動やエネルギーの転換、食糧危機など多くの課題に直面している。国際社会は一致協力して問題解決に当たる必要があり、対立ではなく互いに助け合う必要がある。中国が提唱する「一帯一路」構想は、人類が21世紀の課題に勝利し、平和な未来に向かう方向性を明示している。
「中華文明には『平和の配当』を輸出する特質がある。中国が発展すればするほど、世界に平和と調和の要素をもたらす」と中国科学院の科学技術発展戦略研究院の楊多貴研究員は述べる。さらに、「一帯一路」構想の核心的な使命と価値は、世界の平和と調和を守り、世界の人々に団結を促し、人類運命共同体を打ち立てることだと考える。
また楊研究員はこう評価した。「一帯一路」は、文明やイデオロギー・発展モデル・地域の特色・国と地域の発展段階の違いを超え、現在、世界が公認する「文明の衝突地帯」「発展の貧困地帯」「地縁の破砕地帯」「政治の激動地帯」を貫いている。さらに、これらの国々や地域を「交流」「連結」「協力」させ、平和共存の要素を効果的に増やし、不安定化や緊張化、流動化する要素を取り除いた。「古代シルクロードは単なる貿易ルートではなく、平和の道、友好の道だ。『一帯一路』は、今や古代シルクロードの精神を受け継ぐ世界平和の『新たな絆』となりつつあり、世界の平和と調和のために絶えず公共財を提供し、より多くの『平和の配当』を世界に送り出している」
西安国際港駅で、クレーンが世界各国から来たコンテナを積み上げている(vcg)
内陸部と沿線諸国の発展促進
改革開放から40年余り。中国の対外開放は世界が目を見張る成果を上げた。だが、地理的な制約や資源の偏在、発展の土台の有無といった条件の差から、全体的に中国大陸の東部地域の開放が速く西部地域が立ち遅れ、また沿岸部が大きく内陸部が少ないという構図になっている。「一帯一路」建設の加速と推進は、沿海部から内陸部へと対外開放を絶えず伸展させ、全面的な対外開放という新たなエンジンとなった。
陝西省の西安国際港ステーションでは、8基のガントリークレーンが世界中から集まってきたコンテナの積み下ろし作業を行っていた。毎日、同駅に発着する中欧(中国_欧州)国際貨物列車「長安号」は10本以上に上り、省内外の20余りの都市と45の「一帯一路」沿線諸国・地域を結んでいる。
「10年前、ここは新筑と呼ばれる4等級の駅にすぎませんでした。省内外をつなぐ貨物輸送の路線はわずか5路線だけで、貨物ヤードもありませんでした。それが今では貨物路線は53路線にまで増えました。カバーする範囲も当初の中央アジアの国々から、徐々にロシアやハンガリー、ドイツなどの欧州内陸部へと伸び、一躍、中国西北地域最大の国際物流のターミナル駅になりました」。世界各国から集まったコンテナを前に、西安国際港ステーションの李沛当番駅長は感慨深げにこう語った。
「一帯一路」構想の提唱後、習近平総書記はたびたびこう強調した――中国内陸部の省は積極的に自ら「一帯一路」共同建設に溶け込み、そのユニークな地の利を開放・発展の強みに転化し、開放によって改革と発展を促さなければならない。
以来、ますます多くの国境沿いでも海沿いでもない内陸部の省が、開放の末端から最前線へと変貌を遂げ、中国のハイレベルの対外開放の新たな中心となり、質の高い発展に強力な原動力を注いだ。
中国中西部地域で運行される中欧班列は、この10年で4万5000本近く増え、全国の総運行本数の75%を占め、欧州の24カ国とつながっている。新たに開通した「一帯一路」沿線諸国への空路は130路線を超え、全国の新たに開通した国際航空路線の60%以上を占める。また、すでに承認されている21の自由貿易試験区は、3分の1以上が内陸部の省にある。
「一帯一路」は、中国の対外開放の広さと深さを最大限アップさせただけでなく、より多くの国・地域のためにも経済貿易の交流・協力の懸け橋を築いた。また、実際の行動で世界と発展のチャンスを分かち合うことで、開放型の世界経済の構築を推し進めている。
東アフリカ高原のケニアの首都ナイロビと同国第2の都市モンバサを結ぶモンバサ・ナイロビ標準軌鉄道は、東アフリカ全体の急速な発展を促した。また、中国の昆明市とラオスの首都ビエンチャンを結ぶ中国・ラオス鉄道は、かつての「内陸国」ラオスを「連結国」へと変身させ、中国の高速列車「瀾滄(ランツァン)号」はラオスの「国の名刺」となった。さらに、ハンガリーの首都ブダペストとセルビアの首都ベオグラードを結ぶハンガリー・セルビア鉄道の中で、開通して1年になるベオグラード・ノビサド間は、輸送旅客数が累計で延べ293万人を突破。同地の人々の移動が大いに便利になり、科学技術・資金・人や文化など、より多くの生産要素の融合と流動化を推し進めた。こうした中国が建設に参加した一つ一つの大きなプロジェクトは、沿線諸国の発展の血流を加速させ、経済成長の潜在力を解き放った。
「世界経済の低迷と不振が続き、一国主義と保護貿易主義が常に台頭する背景の下、各国は、力を合わせて開放型の世界経済を建設し、より性を備えた地域・グローバル産業チェーンを構築する必要に迫られている。中国が打ち出した『一帯一路』構想は、この目標を実現する上で非常に重要だ」。シンガポール国立大学東アジア研究所の余虹シニア研究員はこのように話す。余研究員によれば、一貫して明確な開放志向を堅持する「一帯一路」建設は、各国の市場開放のさらなる拡大を推し進め、各国の経済成長を促進するために、広い空間と力強い原動力を提供してきた。
貧困脱却など多分野に注力
「一帯一路」は、単にインフラの連結だけでなく、経済協力の深い融合である。現在、世界で最大規模の国際協力プラットフォームとして、「一帯一路」は中国と世界経済発展の新たな一章を開いた。
この10年、「一帯一路」建設は、質の高い発展という注目される「成績表」を提出してきた。現在、中国はすでに150以上の国、30余りの国際機関と200件余りの「一帯一路」共同建設に関する協力文書に調印。その協力内容は、貧困削減・撲滅や食糧の安全保障、教育・保健衛生、グリーン開発、デジタル経済など多くの分野に及ぶ。中国と「一帯一路」沿線諸国との物品貿易額は、2013年の1兆400億㌦から22年には2兆700億㌦へと拡大、年平均成長率は8・6%、沿線諸国との双方向投資は累計2700億㌦を上回った。この他に、中国企業が沿線諸国で建設した国外経済貿易協力区における累計投資額は571億3000万㌦に達し、現地に42万1000人の新たな雇用をもたらした。
世界銀行の予測では、2030年までに、「一帯一路」共同建設により全世界で760万人が極度の貧困からの脱却し、3200万人が中程度の貧困から脱却すると見込まれている。また、参加国の貿易成長は2・8%から9・7%の増加、全世界の貿易成長も1・7%から6・2%増が見込まれている。
「ジンバブエの経済変革は、『一帯一路』建設への投資によるところが大きい」とンザンゼ産業・通商大臣は話す。これまでジンバブエの主な輸出品目は石炭や農産物などの一次産品だったが、「一帯一路」建設は同国の発展の弱点を克服し、投資と貿易の強化によって同国に巨大な利益をもたらした。「われわれは将来、産業付加価値の増加、労働力の質の向上、クリーンエネルギー開発の促進などの分野で、中国とさらなる協力強化を望んでおり、『一帯一路』の発展のチャンスを共有したい」とンザンゼ大臣は語った。
「一帯一路」は沿線諸国に経済成長をもたらしただけでなく、各国の人々にもより多くの発展のチャンスと幸福をもたらした。
この10年、「一帯一路」共同建設の枠組みの下、一連の民生プロジェクトが現地に根付き、大きな花を咲かせた。モーリタニアでは、中国の支援により建設された牧畜業技術モデルセンターがアルファルファの大規模栽培を実現した。またエジプトでは、中国企業が計画・設計・建設した国家漁業産業パークが、水産関係の全産業チェーンのソリューションプランを提供し、現地の水産養殖・加工レベルの向上を推進した。さらにカリブ海の島国トリニダード・トバゴでは、中国企業が専門的な伝染病院を建設し、ベッド100床と手術室二つ、重症集中治療室、消毒センターを提供し、現地の新型コロナウイルス感染症対策をサポートした。
世界経済の成長鈍化と不均衡な経済発展を背景に、農業・貧困削減・衛生・保健などの分野に焦点を当てたこうした民生プロジェクトは、現地の実情や時宜に応じて実施され、共同建設国の生産条件を効果的に改善し、人々に実際的な利益をもたらした。
「私がいるアフリカでは、多くの国が長年にわたって立ち遅れた状況から抜け出せず、人々は発展と振興を切望している。『一帯一路』共同建設は、こうした国と地域に広々とした発展の空間を切り開き、前向きな変化を生み出した。遠方の辺境地域において、中国企業が学校・住宅・道路などのプロジェクトに参入したことで、発展の成果は隅々にまで行き渡り、多くの人々に幸福をもたらし、人心が通じ合う手本にもなっている」。ケニア東南協力シンクタンクのスティーブン・エンゲル代表はこう説明した。
文明交流と相互参考を発揮
「文明は交流によって多彩になり、相互参考によって豊かになる。文明は多彩なものであり、人類文明が多様であるからこそ交流と相互参考の価値がある。文明は対等なものであり、人類文明が対等であるからこそ交流と相互参考の前提条件を備える。文明は包摂的なものであり、人類文明は包摂的であるからこそ相互参考の原動力を持つ」――習近平国家主席は2014年3月27日、パリのユネスコ(国連教育科学文化機関)本部でこう演説し、中国が打ち出した新文明観について詳しく述べた。
新文明観の重要な実践の場として、「一帯一路」は異なる地域、異なる文化、異なる宗教・信仰を超えている。また、文明の交流によって文明間の溝を乗り越え、文明の相互参考によって文明の衝突を乗り越え、文明の共存によって文明の優位性を乗り越え、沿線諸国が人類運命共同体の共同建設を推進するために重要な役割を発揮している。
世界的な大発展・大変革・大調整の背景の下、「一帯一路」沿線諸国の人々は皆、協力による発展と繁栄の実現を希求している。だが、各国の歴史の発展段階や文化・伝統、社会制度が異なり、さらに地政学的な複雑さと不安定さも相まって、多くの国家間ではまだ信頼と協力が不足している。文明の閉鎖性と隔たりは信頼の危機と協力の困難を招く大きな要因の一つだ。文明交流と相互参考は、文明の多様さと相違を認めた上で、異なる文明間の相互尊重・対等な扱い・交流と学習・相互参考を通して、「一帯一路」沿線の異なる文明の閉鎖性と隔たりを打ち破り、沿線諸国の人々の「一帯一路」共同建設というコンセンサスを高め、人心とエネルギーを結集させた。
人類運命共同体の重要な構成要素として、「一帯一路」運命共同体の建設は「一帯一路」沿線諸国の人々に強い共感を生み、今まさにコンセンサスを形成しつつある。文明交流・相互参考は、国際紛争を解決し国際秩序を再建する新たな理念・プランとして、開放的で包摂的な「一帯一路」運命共同体の建設に方向と道筋を明示している。
現在、まだ多くの「一帯一路」沿線諸国が、平和の赤字・発展の赤字・ガバナンスの赤字の厳しい課題に直面している。「一帯一路」建設は、文明交流と相互参考によって国家・民族・宗教・社会制度とイデオロギーの相違を乗り越え、対立や衝突を絶えず解消し、沿線諸国が「互いの良さを共有する」新時代の到来を迎えるようけん引していく。