田:「稲魚システム」で耕地守る

2024-05-13 14:11:00

王朝陽=文 

960万平方余りの国土を有する中国には、さまざまな土地資源がある。黒土地帯から黄土高原、山岳地帯から豊かな平野まで、中国の人々は世々代々この地を耕し、悠久の輝かしい農耕文明を築いてきた。 

多彩に「地力」復活を推進 

昨年、農業のリアリティーショー「種地吧」(農家になろう)が、中国版X(旧ツイッター)の「微博」(ウェイボー)の関連トピックでアクセス数が12億回に達し、動画アプリ「抖音」(TikTok、ティックトック)での再生回数も2億回を超えるなど大ヒットした。 

番組では、10人の若者が1428ムー(約9、東京ドーム約2個分)の土地に、種をまいてから、水をやり、肥料を施し、収穫するまでの190日間の全過程を放送した。「土地は裏切らない、努力すれば報われる」は、この番組で若者たちがいつも口にする言葉だった。多くの視聴者も「耕作と収穫の過程を見る間に自分自身の未来に対する迷いや不安が消え、目標に向けて恐れずに一歩を踏み出したくなった」というコメントを残した。 

土地から安心を得て、土地を大切にするのは、多くの中国人の文化的な深層意識である。しかし、中国は決して耕地の資源に富んだ国ではない。第3次全国国土調査によると、2019年末までで、中国の耕地面積は19億1800万ムー(約1億3000万)で、1人当たりは136ムー(約009)。これは世界平均の40%にも満たない。耕地の総面積が少ないだけでなく、長期にわたる過度の耕作により、一部の耕地では基礎的な地力も低下する傾向にある。中でも、東北部の黒土地帯の土壌劣化や南部の耕作地の土壌酸性化、北部の耕地の土壌塩化アルカリ化などは特に厳しい状況にある。 

耕地の保全と土壌改善は差し迫った課題となっている。中国には古くから、作物栽培と家畜飼育を組み合わせた伝統農法がある。これにより農業廃棄物の資源利用率が向上し、土壌の地力も高まり、好循環が生まれる。 

浙江省麗水市青田県では、伝統的な農法からヒントを得て、耕地を守る方法を見つけ出した。水田で魚を養殖するという「水稲魚類共生システム」は、地元では1300年以上も伝わる農法で、稲作と魚の養殖の組み合わせにより、相乗効果が得られる。イネは魚に日陰と餌を提供し、魚は雑草や害虫を食べて土を軟らかくしたり地力を上げたりして、水田の土壌改善に役立つ。 

22年の統計によると、水稲魚類共生システムを活用することで、青田県の農薬と化学肥料の使用量はそれぞれ46%、26%と効果的に減らせた。また、稲作の1ムー当たりの平均収穫量も480という豊作を実現した。 

青田県の水稲魚類総合栽培養殖エコ修復プロジェクトは22年12月、中国の「山水プロジェクト」の代表的なケースの一つとして、国連の「生物多様性条約第15回締約国会議」(COP15)の表彰式で紹介され、世界の耕地保全(5)向上の課題に中国の解決案で貢献した。 

中国は、世界の耕作面積の9%で世界の約5分の1の人口を養っている。耕地の量と質を守ることは、自国の食糧安全保障を実現するだけでなく、世界の食料安全保障の維持に力を注ぐことにもつながっている。 

耕地のエコ環境を修復改善 

耕地は、食糧安全保障とつながる一方、生態保護ともつながっている。山や川、森林、田畑、湖沼、草原、砂漠という「生命共同体」の一員として、耕地は、気候調節や環境浄化、生物多様性の維持、水源保全など多くの面で不可欠な役割を果たしている。また生活レベルの向上に伴い、人々の耕地に対する需要は、もはや農産品の提供だけに留まらず、農耕伝統文化の伝承や農地のユニークなエコ風景の展開といった多彩な社会的ニーズも出てきている。 

5月に入ると、福建省漳州市九湖鎮の農民たちは田植えで忙しくなる。少し前、ここの水田には一面に水仙が咲き乱れていた。九湖鎮は中国では「水仙の里」と呼ばれ、「夏は稲作、冬は花の栽培」と、従来は季節ごとに作物を入れ替えてきた。現在は、秋と冬になると黄金色の稲穂と真っ白な花が互いに引き立て合う美しい豊作の風景が見られ、多くの観光客を集めている。 

しかし3年前、九湖鎮の生態環境は大きな問題を抱えていた。産業配置計画や産業政策に合わず、汚染物の排出基準を満たしていない小工場が鎮の至る所にあったのだ。このため、農業用水路の詰まりや土壌の汚染、水や土壌の流失、掘割の汚濁と悪臭などの問題が日に日に深刻になっていた。 

特に草花の栽培エリアは川に隣接しており、汚水は現地を流れる九竜江の主な支流の西渓に直接流れ込んだ。こうして西渓の水質は脅かされ、流域全体の環境が悪化し、水仙の品質低下を招いてしまった。 

「山水プロジェクト」の関連プロジェクトとして21年、漳州水仙栽培エリアの農地エコ環境改善と耕地整備プロジェクトがスタートした。地元では、プロジェクトエリア内の硬くなった耕地約1200ムー(80、東京ドーム約17個分)を耕作可能な優良農地に回復させた。また、全長61のかんがい用水路を新たに建設し、30にわたって農業用道路を整備し、耕地の水利施設ネットワークと農業生産条件を改善した。 

何世代も続いて九湖鎮で水仙栽培をしてきた農家の張明海さんは、こうした変化に深い感銘を受けている。「今では取水ダムやかんがい用の水路、排水用の側溝の流れがスムーズになり、水門から排水やかんがいが簡単に行えます。また全ての田畑で機械による農作業ができるようになり、以前よりずっと効率が上がりました」と喜ぶ。 

田畑の脇を歩くと、水路には底が見えるほど澄んだ水が流れ、水鳥やタニシが生息している。これは、地元の耕地の生態が改善していることの最も確かな証明だ。 

耕地の健全さは自然の健全さに影響を与える。「澄んだ水と青い山こそが金山であり銀山である」(豊かな自然こそが貴重な財産)というエコ文明建設の理念は、それぞれの耕地の変化に凝縮されている。耕地を守るということは、自然という生命共同体や、人類の生存と発展の物質的な土台を保護することでもある。 

人民中国インターネット版

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