持続可能な青年交流を
東京都日中友好協会副理事長 井上正順(談)
2021年末、翌年の日中国交正常化50周年を記念するイベントに必要な資料を準備するため、日中友好協会が保管している往年の会誌をめくった。その際、1984年の「日本青年3000人訪中」を報道した記事を偶然目にした。その瞬間まで、両国間でこのような大規模な青年交流があったことは知らなかった。
私は大学時代から日中の学生交流イベントの運営に携わり、卒業後も普段の仕事のほか、日中友好協会を通じて多くの民間交流イベントを企画し、参加してきた。交流イベントを成功させるためにどれだけの努力が必要なのか身をもって痛感しているので、あの記事を読んで思ったのは、これだけ多い人数の訪中を完遂させるために運営側が大変苦労したに違いないし、また両国青年の交流に対する高い熱意と両国政府の青年交流事業に対する重視も欠かせない、ということだった。
40年前と比べて、現在の世界情勢、両国関係、人々の生活状態は大きく変化している。一方変わらないのは、互いのことを理解したい若者の意欲と青少年交流を積極的に推進したい政府の決意だ。この変わらない精神をいかに受け継ぎ、時代の新しい特徴に応じて新しい交流内容と形を企画するかが、両国の青年交流が直面する課題となっている。
40年前は相手国に行き交流するだけで良い効果を得られたが、今の時代では若者が情報を入手するルートの多様化に伴い、人々はもはや表面的なコミュニケーションに満足せず、深さと実際の効果を追求するようになった。ここ数年の経験として、テーマを設けず、単に友達をつくって言語を学ぶことを目的とする交流イベントに参加を申し込む若者の数は非常に少なくなった。
青年交流はテーマを明確にし、異なるグループの特徴に合わせて内容を細分化するだけでなく、潜在力を引き出して持続可能な発展を実現しなければならない。青年交流を含める民間交流は、ボランティアの無償活動だけを頼りに発展を図るのは不健全だと私はずっと考えていた。
このため、私は最近、北京のいくつかの大学と打ち合わせして、体験型週末留学の可能性を模索している。現在の留学は基本的に1年あるいは半年、最短でも2週間滞在する。今の忙しい若者が自分と合っていない学校を選んでしまったら相当の時間コストを払うことになる。私の企画は、三連休が多い日本のメリットを生かして、若者たちに週末留学を体験させることだ。体験者は金曜日の放課後または退勤後に飛行機で北京に来て、週末に学校の授業とキャンパス生活を体験したり、市内の観光スポットを見学したりして、月曜日に学校で半日授業を受けてから帰国する。3日間の日程で留学生活をコンパクトに体験することができる。
総合的に考えた後、母校「北京語言大学」と協力し、このモデルをテスト的に実施しようと決めた。もしうまく運営できれば、若者がより効率的に自分に適した判断を下せるだけではなく、事業で上げた利益も両国の青年交流に還元(10)できるので、青年交流の未来の発展にとって有益な試みになるだろう。 (王朝陽=聞き手・構成)