科学的な砂漠化防止・抑制
王朝陽=文
荒れ果てた塩害地を遠くから見渡すと、植物が生えている小さな緑地がある。ここは中国科学院新疆生態・地理研究所(以下「新疆生地所」)が、ウズベキスタンの塩湖「アラル海」に面したモイナクに建設した30ムーの実験モデルエリアだ。町の土地は重度塩害地域に指定されており、中国の研究者はここで耐塩耐乾植物を選別し、アラル海に「緑を添える」ことに成功した。
アラル海は中央アジア第2位の塩水湖と世界第4位の内陸湖として、かつて220万平方キロの流域面積を持つ砂漠の中の緑の真珠だった。しかし、1960年代以降、アラル海に注ぎ込む二大河川の水が発電に大量に使われた結果、水位が低下し、面積が一時は約3000平方㌔にまで縮小した。それに加え、地球温暖化によって水分の蒸発が激化し、毎年7500万㌧以上の塩塵が空気に混ざり、強風による「塩塵嵐」を引き起こし、農地を汚染して住民の健康に深刻な影響を与えていた。2006年の国連の「世界水開発報告書」では、アラル海問題は「20世紀最大の環境破壊」と呼ばれていた。
新疆生地所は砂漠化とアルカリ化が進んだ土壌改良に特化した研究機関だ。20年以上の努力を経て、研究者たちは多種の「塩を食べる植物」を発見した。これらの植物は重度塩害地域の塩分を吸収し、塩類・アルカリ土壌の植生成長を促進し、土壌のアルカリ化を軽減することができる。18年9月、新疆生地所はウズベキスタンのイノベーション発展省からアラル海の生態系管理に対して中国の支援を求める書簡を受け取った。
19年、中国の科学者たちはウズベキスタンを訪れ、一連の砂漠化対策プロジェクトを支援した。その中には、アラル海流域の水資源管理の意思決定に科学的根拠を提供するための自動気象・水質観測所の建設や、アラル海周辺での生態系修復の実験と塩類・アルカリ土壌の修復・植物定着技術のデモンストレーションなどが挙げられる。新疆生地所シルクロードグリーン発展研究センターの李耀明主任(50)は次のように説明した。「実験モデルエリアに30種類以上の耐塩耐アルカリ植物を導入し、その中から選別した3〜5種類の植物が重度塩害地域と塩水灌漑の下でも順調に成長できることは、アラル海の生態系修復と管理に希望をもたらしました」
「アラル海の環境危機」解決への参入は、積極的に海外進出している多くの中国砂漠対策チームの活動の一つにすぎない。モンゴルでは、地元住民による生態保護のための野外観測基地の設立を支援した。ケニアやマリなどのアフリカ諸国では、現地の砂漠化防止・保護システムを確立した。
土地の砂漠化は人類の生存と持続可能な開発に影響を与える世界的な課題の一つであり、幅広い国際協力と世界各国の参加が必要だ。人類共通の故郷である地球を守るため、中国は今後も砂漠化防止・抑制の経験と技術を世界と共有し、「人と自然の生命共同体」の構築に貢献していく。