文字が語る多様な魅力

2025-05-20 15:57:00

段非平=文 

「大学都市として有名なケンブリッジ最高の書店でも、中国の書籍が置かれた本棚はたった幅1しかないのです」と、英国の著名な翻訳家で漢学者のジュリアラヴェル氏はかつて、中国文学の海外での苦境を指摘した。しかし近年、この状況は変化している。次々と海外に進出し、海外で高い評判と好調な売り上げを誇る中国の優れた現代文学は、世界が中国を理解する重要な窓口となっている。 

良い物語が中国文学を世界に 

「私たちはずっと、中国文化が色濃く、素敵な物語をつづった小説を探し、それを中国に関心を持つ外国の読者たちにささげたいと思っていました。今、やっとそれを見つけました」と英ペンギングループアジア地域総裁の田培氏(当時)は語った。彼の言う「それ」とは、十数年にわたってベストセラーで、150回以上も再版されている小説『神なるオオカミ』(原題:狼図騰)のことだ。 

比較的早く海外で成功を収めた中国の現代文学の『神なるオオカミ』は英語、ドイツ語、フランス語、日本語など47の言語に翻訳され、世界120カ国地域以上で発売されている。ペンギングループだけで4種類の英語版を出版していることから、『神なるオオカミ』の人気ぶりが分かる。著名なフランスの映画監督、ジャン=ジャックアノー氏もこの作品のファンで、5年をかけて撮影した同名映画は、フランスでの公開初日、8万人以上の観客を集め、同年のアカデミー賞作品賞を受賞した『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』を上回る大ヒットとなった。 

『神なるオオカミ』が成功した理由はその独特な題材と奇抜な物語にあるだろう。作者は数十回にわたるスリリングな人とオオカミとの戦いを通じて、草原の遊牧民たちが何千年にもわたってオオカミと対立しながらも愛憎交じった感情を描き出している。これらの物語は、都市に暮らす今の人々には想像もできない奇妙な光景を構成し、人々を驚かせると同時に、その独特な魅力も感じさせる。『神なるオオカミ』が世界に広く認められたもう一つの要因は、物語に秘められた全人類共通の考え方にある。「『神なるオオカミ』は人と自然との共生の知恵を明らかにし、そのテーマは国境を超えて全人類から注目される」と著名な出版関係者の安波舜氏はかつて語った。 

近年、海外で最も影響力のある中国の小説といえば、やはり劉慈欣のSF小説『三体』だ。『三体』は2015年にヒューゴー賞の最優秀長編小説賞を獲得し、同賞が行った5回の投票で全て1位だったことから、どれほど世界のSFファンに支持されていたかが分かる。 

ヒューゴー賞受賞後、『三体』は世界で飛ぶように売れ、ブームを巻き起こした。SF大国の米国では、『三体』の英語版が各書店に平積みされ、当時世界で最も人気のあるファンタジー小説、ジョージマーティンの『氷と炎の歌』シリーズと隣り合わせに置かれた。『三体』ファンのオバマ元米大統領はインタビューに「この小説の内容に比べると、毎日の議会が取るに足らないことだと思える。なにせ私は宇宙人の侵略に心悩まされることはないのだから」と冗談交じりに語った。『三体』は日本でも大ブームを巻き起こした。第1部の発売当日に初版1万部が売り切れ、発売1週間で10回の追刷り(3)を記録した。『三体』3部作の日本での累計発行部数は100万部を超えており、SFというジャンルでは奇跡的といえる。日本の著名なゲームクリエイター小島秀夫氏は、『三体』を「普遍性、娯楽性、文学性の三者の重力バランスが绝妙なラグランジュ点で生まれた、奇跡の超現実SF小説」と絶賛した。 

『神なるオオカミ』と『三体』は、海外に進出し成功を収めた中国の現代文学の代表にすぎない。素敵な物語に加えて、全人類が認める共通の価値観が多くの作品の成功の鍵となっている。共通の感情や考え方は、言葉や文化の違いを越えて、文学や文化交流の基礎となっている。 

「世界四大文化現象」に仲間入り 

「現在、中国ネット文学の海外ファン層はかなり広がっています。中国ネット文学は米国のハリウッド映画、日本のアニメ、韓国のドラマと並んで『世界四大文化現象』といわれていて、世界のポップカルチャーの重要な一部になっていることが分かります」と、中国ネット文学市場のパイオニアである閲文集団の最高経営責任者兼社長の侯暁楠氏は語った。中国ネット文学は、素敵な物語や壮麗な想像力、心を動かす感情によって、異なる文化背景の人々の共感を呼び起こし、海外の読者が中国を理解する重要な窓口の一つになっているというのが侯氏の見解だ。 

閲文集団が発表した「2024中国ネット文学の海外進出トレンドレポート」によると、中国ネット文学の海外読者数はすでに3億人を超え、世界200カ国以上に及んでいる。海外読者数の成長率が最も高いのは日本で、成長率は180%だ。同集団の海外向けポータルサイト「起点国際(WebNovel)」に掲載されている6000点以上の作品のうち、閲覧数1000万以上の作品は400点以上、1億以上の作品は9点だ。現代の女性の成長を描いた『許你万丈光芒好』(君に一万マイルの光を)は、4億5000万以上の閲覧数でトップとなった。突出した閲覧数に加えて、『慶余年 ~麒麟児、現る~』『斗羅大陸~7つの光と武魂の謎~』など26作品が大英図書館の中国語作品目録に収録されたことは、中国ネット文学が世界的に大きな意義を持つコンテンツ、文化現象になりつつあることを明らかにした。 

多くの中国要素を取り入れたネット文学は、ますます多くの海外読者に中華伝統文化への憧れを抱かせている。人気ネット小説を原作とするドラマ『永遠の桃花~三生三世~』や『琅琊榜~麒麟の才子、風雲起こす~』などに深く感動し、魅了された韓国の朴努力(パクルリ)さんは浙江大学で中国現代文学を専攻することを決めた。そして中国ネット小説に夢中になっていた読者から、ネット文学の韓国語翻訳者に変身した。中国の優れたネット文学作品を韓国に紹介し、韓国人が中国をもっと深く理解できるようにすることが朴さんの夢だ。 

「海外の読者が特に求めている武侠や仙侠などの優れた作品は、中国ネット文学が世界の大衆文学に果たした貢献です。これらの作品は、東洋の神話や人物を主な素材として再構築し、欧米のファンタジー文学とは全く異なる精神的な境地を開いています」と、魯迅文学院の王祥研究員は語る。武侠、仙侠、SFなどの題材が中国ネット文学の初期の繁栄を築いたといえる。近年、ネット文学はより身近な生活から素材を探し、さらなる発展の可能性を広げている。「一般人の生活や感情に共感を呼び起こすこれらの作品が、世界の読者によりリアルで立体的な中国を見せることができると信じています」 

 

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