異文化理解促すドラマ

2025-05-21 13:57:00

李家祺=文 

「中国ドラマ『30女の思うこと ~上海女子物語~』を見て、古色蒼然とした蘇州の町並みを見たくなりました。実際に来てみるとドラマと全く変わらず、優雅な景色がこんなにちゃんと残されていることに感動しました」と浅野仁那さん(23)は語った。 

近年、中国ドラマを意味する「C–ドラマ」が海外のSNSの流行語となっている。広範で多彩な中国ドラマは、世界の視聴者が中国を理解し、中国に親しむための新たな扉だ。 

各国でリメーク 

「初めて見た中国ドラマです。全50話は多すぎると思いましたが、気付いたら見終わっていました。これで中国ドラマが好きになりました」。これは日本の視聴者がネットに投稿した『陳情令』の感想だ。 

仙侠ファンタジードラマ『陳情令』は近年海外市場でヒットした中国ドラマの一つだ。日本のオリコンチャートによると、2020年8月に発売された『陳情令』のブルーレイディスクは50回以上もオリコン週間映像ランキング入りし、最高で5位だった。東南アジアでも大勢のファンを獲得し、19年9月にタイで行われた『陳情令』ドラマ出演陣ファンミーティングはチケットの入手が困難になるほどだった。 

中国国家広播電視総局が発表した「2024年中国ドラマ発展報告」によると、中国ドラマの輸出額は12年から24年で3倍近く増加し、2403万1600から7032万4600になった。 

『陳情令』を代表とする古装ドラマ(古代を舞台にしたドラマで、完全に架空のものも実在の歴史に基づいて描いたものもある)には独自の東方の文化的コードが付随しており、多くの海外視聴者の興味を引いている。日本の「みんなのランキング」の中国ドラマランキングトップ10のうち、9作品が中国の古装ドラマだ。 

一方で、製作水準の向上と宣伝配給ルートの拡大によって、中国ドラマは国際市場で多様化の傾向を見せ、恋愛、成長、奮闘といった文化的隔たりを乗り越え普遍的共感を呼び起こしやすい内容が注目されている。昔付き合っていた男女が数年ぶりに再会するという中国の恋愛ドラマ『2回目のロマンスはままならない』は、日本のオリコン週間ドラマ作品別映像ソフト売上げランキング(今年3月17日付)で10位だった。SFドラマ『三体』がペルーで配信された初日は42万人以上が視聴した。新疆ウイグル自治区アルタイ(阿勒泰)地区に暮らす漢族の女性が自分探しをする『我的阿勒泰』は昨年、カンヌ国際ドラマ祭にノミネートされた初の中国語長編ドラマとなった。 

中国ドラマのリメーク権に狙いをつける海外のサイトが増えているのは、中国映像業界のクリエイターのアイデアが国際市場で受け入れられているということでもある。恋愛ドラマ『微微一笑很傾城』とサスペンスドラマ『隠秘的角落』は中国で大ヒットし、日本でそれぞれドラマ『シンデレラはオンライン中』と映画『ゴールドボーイ』にリメークされた。家庭や職場での女性の苦しみと成長を描いた冒頭のドラマ『30女の思うこと ~上海女子物語~』のリメーク権はすでにタイなど六つの国と地域に売られている。 

また、1話数十秒から数分程度のマイクロドラマが中国のエンターテインメント分野でこの2年ほど注目の的になっている。今年の中国マイクロドラマの市場規模は504億元に達すると見込まれており、これは昨年の中国映画興行収入(約425億元)を上回る。急成長の勢いは国内市場で続いているだけではなく、国際市場でもブームを巻き起こしている。 

時間が短く、頭を使わないというマイクロドラマはいつでもどこでも見ることができ、その内容もテンポが良くどんでん返し(6)に次ぐどんでん返しでストレスを発散できる「スカッとするドラマ」がほとんどで、異なる場所に住み異なる言語を話す視聴者でも共感しやすい。 

米市場調査会社センサータワーが昨年3月に発表した「2024年中国ショートドラマ海外市場の洞察」によると、昨年2月末で40以上のマイクロドラマアプリが海外市場に進出し、累計ダウンロード数は約5500万回、アプリ内課金による収益は1億7000万に及ぶ。例えばReelShortというアプリは、リリースから14カ月後(23年10月)にダウンロード数が1100万回を超え、今年3月18日でAppStoreの米国市場におけるエンターテイメントアプリランキングで1位になっている。 

ショート動画とSNSの親和性 

最近はテンセントやiQIYIなどに代表される中国の動画配信サイトが、海外向けストリーミングプラットフォームの構築を推し進め、国際市場に進出する中国ドラマにユーチューブやネットフリックス以外のプラットフォームの選択肢を提供し、中国ドラマの海外進出を加速させている。 

19年にテンセントとiQIYIは海外向け動画配信アプリWeTVと海外向けiQIYIをそれぞれリリースし、タイやマレーシアなどでローカライゼーションを始めた。たった3年でiQIYIアプリのダウンロード数は世界で1億回を突破し、WeTVは昨年末に2億5000万回を超え、アプリで配信されている中国の映像作品の合計再生時間は4万時間以上になり、中国の映像作品を見る世界の観客層を大幅に拡大した。 

近年人気を集めたショート動画アプリが、ドラマの視聴者を拡大する重要な手段となった。中国社会科学院世界伝媒研究センターの冷凇研究員は次のように指摘する。多くのSNSユーザーがドラマの二次創作をして、ドラマの切り抜き動画を上げ、SNSに投稿することで多くの海外のユーザーを引き付けている。このようなショート動画は海外の視聴者のハードルを下げ、文化的隔たりによる普及の障害を減らした。 

もう一方で、従来の長いドラマと比べると、1話の時間と準備、製作期間が短いマイクロドラマはTikTokやX(旧ツイッター)などのSNSや、多言語多形態のプラットフォームにおけるリアルタイムデータやユーザーフィードバックに基づいてより早く正確に調整や改善が可能で、海外市場の早期開拓に有利だ。「7日あれば、そのショートドラマにさらに投資するかどうか、同じジャンルのドラマをまた製作するかどうかが判断できる」と杭州の映像製作会社創業者唐琥珀氏は語る。 

 

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