美術館——インタラクティブ展示が鍵

2025-07-28 15:25:00

段非平=文

ここ数年、中国各地の美術館が従来の運営の枠組みを次々と乗り越え、多様性を持ち革新的な姿勢で人々の生活に溶け込んでいる。美術館はもはや難解で親しみにくい「芸術の孤島」ではなくなり、独自の魅力を武器に多くの都市の人気観光スポットとなり、地元の文化観光に新たな活力を絶え間なく注入している。 

古今が融合した芸術空間 

海南省海口市の騎楼(きろう)(回廊式の建築様式の一種)美術館では、デジタル映像が騎楼のアーチに投影され、現代のインスタレーションが100年前の彫刻柱と対話する。そして騎楼美術館では、来館者が歴史の重みに触れながら、芸術の前衛的表現も味わえる。 

写真家の林棟さんはSNSで見た騎楼美術館の写真に引かれ、河北省から海南省までやって来た。「騎楼美術館に入ると、まるで時空を超えたかのようでした。古いれんがの壁や精巧な彫刻が前衛的な芸術作品と引き立て合う、独特の雰囲気に魅了されました。ここで撮ったたくさんの写真から、展示品の物語が聞こえてくる気がします」 

騎楼美術館の陳茹館長によると、100年以上の歴史を持つ騎楼を美術館に改築することを決めたのは、歴史的建造物の重厚感と現代芸術の活力を融合させたかったからだという。「来館者が芸術を媒介にして歴史と現実が入り交じる時空の絵巻に浸り、芸術の生命力を感じながら、海南の歴史における文化的系譜と風土をより良く理解してもらいたいです」 

テクノロジーとの共存 

北京時代美術館は開館以来芸術の多様な可能性を探っており、仮想現実(VR)、拡張現実(AR)、人工知能(AI)などの最先端技術を創作と展示に常に取り入れ、来館者に新鮮な芸術体験をもたらしている。 

同館で5月30日から「Hello Kitty Cosmos 光影特展」が開催されている。同展の最大の特色は、最新の技術でインタラクティブ体験を多彩にし、さまざまな年齢層の来館者に光と影の中で芸術の温かさと感情の共感を感じてもらうことだ。「キティちゃんの魂に新しいテクノロジーの衣装を着せました」と、この企画のために日本から来たHello Kitty 3代目デザイナーの山口裕子さんはそう話しながらキャンバスに輝く星を描き加えた。 

多彩な展覧会のほか、AI絵画装置も見どころの一つだ。画面に近づくと、装置が来館者の動作、表情、衣服の色などの情報を感知し、これらのデータを視覚的要素に変換して画面に融合させる。「AIが生成した作品は想像力に満ちていて、色彩と構図も非常に独特です。特に子どもが気に入って、その絵についての説明が止まりませんでした。今回来て、芸術とテクノロジーの両方に強い関心を抱いたようです。芸術とテクノロジーの融合が生み出した独特の魅力を感じることができ、見学して本当に良かったです」と、来館者の李さんは子どもとの鑑賞体験を語った。 

来館者が作品を「創る」 

上海 EPSON teamLab 無界美術館は、境界のない幻想的な世界のようだ。ここには決まった見学ルートもなければ、案内もない。来館者は6600平方の空間内を自由に散策し、約50点の芸術作品と巡り合える。 

無界美術館の全ての展示品がインタラクティブアートになっている。来館者は受動的な鑑賞者から創作者となり、あらゆる動きがリアルタイムで作品を変化させる。このようなインタラクティブ体験により、どの画面の一瞬も二つとないものになる。 

『花と人の森』は館内で最も人気のある作品の一つだ。空間全体に映像が投影されていて、花が壁や地面で絶え間なく移り変わる。「ここで写真を100枚以上撮りました。どの角度から見ても美しくて、貴重な体験ができました」と北京出身の王凡さんはSNSで自分の感動を共有した。「最初は美しさに圧倒されていましたが、次第に、自分が動かなければ周囲の花はより一層咲き誇り、触れたり踏んだりしてしまうとたちまちしおれてしまうことに気付きました。この作品は、人間のあらゆる行動が自然に影響を与え、自然も静かに私たちに応えていることを伝えているのでしょう。このインクルーシブな体験で、人間と自然の関係について新たな気付きを得ました」 

伝統と現代を融合させた芸術の語り方や、テクノロジーを駆使したインタラクティブ体験など、ますます多くの美術館が絶え間ない革新を通じて、芸術を感じやすく、理解しやすい形にして、人々の生活に溶け込ませている。そしてこのような美術館もまた美しい文化的景観となり、各地から訪れる人々を魅了し、芸術と文化の魅力を探求する場所となっている。 

 

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