記念館——歴史との「対話」方法探る
王朝陽=文
「一番面白かったのは孫中山(孫文)が使用した切符です。米国で革命活動を宣伝した足跡の証しです」「私は孫中山が着たヘリンボーンのコートが気になりました。1911年の辛亥革命のときに着ていた、特別な記念品だから」
孫中山旧居記念館で行われた「歴史の少年探偵団」の探究学習活動が終わりに近づく頃、翠亨小学校の児童たちは一堂に集まり、自分が館内で見つけた孫中山の革命の生涯と関係のある展示品を話し合った。あらゆる歴史的展示品とそれらに込められた物語が、孫中山の革命の足跡を児童たちの前に顕現した。
時空を超えた対話
広東省中山市にある孫中山旧居記念館は、今年5月1日にリニューアルオープンし、「メーデー」期間中だけで延べ14万人以上が訪れた。進化した展覧方法には音響・照明・映像技術や複合現実(MR)技術が導入され、来館者はよりリアルな鑑賞を体験できるようになった。
深圳からやって来た小学5年生の周語薇さんはMRゴーグルを装着して見学を始めた。そして「興中会結成」「臨時大総統就任」など重要なコーナーに差し掛かると、詳しい解説音声と共に孫中山や革命志士たちの映像が彼女の目の前に現れた。当時の現場にいるような臨場感を味わった彼女は興奮した。「授業で孫中山の多くの功績を学びましたが、展示を見終わって、これまでの知識が一気に色鮮やかになりました」
「マルチメディアのインタラクティブな体験によって、子どもたちは孫中山と時空を超えた対話をしたかのように感じていました。こうした観覧方法は新鮮で、豊かな教育的意義があります」「インクルーシブ体験で子どもたちは歴史的事件をより直感的に、そしてより深く理解することができました。教科書にはない躍動感がありました」。同館の感想ノートには、このような保護者の感想がいくつも書かれている。
革命の記憶の伝承
「皆さんが見ているこのマークの名前は『党の誕生地』で、党の徽章と石庫門、そして上海という2文字を組み合わせて作られています」。中国共産党第1回全国代表大会記念館内に、丈の長い中国服を着て中国共産党創設の主要メンバーの一人である李大釗に扮したスタッフが来館者を案内しながら、100年余り前の革命の先駆者たちの理想の光をたどった。
旧漁陽里2号エリアでは、「党課」(党の講義)を演劇風にした『破暁』が上演されていた。4人の若い解説員が100年以上前の革命の先達に扮し、建党前に行われたマルクス主義理論を巡る討論を再現している。「演劇風党課は教科書に載っている歴史上の人物が血肉の通った人物として現れ、強く印象に残った」と湖南省から来た高校1年生の李梓穆さんは演劇のシーンをスマホで撮影し、友人と動画を共有した。
インクルーシブな演出のほか、展示ホールに設置された「初心の旅」新聞も来館者の興味を引いていた。新聞に掲載されている問題の答えが展示ホールの各所に隠されており、館内を回りながら手掛かりを見つけ、クイズに挑戦できる。
「あったあった!」と余思成さん(13)は新聞を握りしめながら、興奮気味に母親を「主義の選択」展示コーナーに連れてきた。「党の歴史の勉強と遊戯性をこのようにして組み合わせた企画は素晴らしいです。子どもは答えを見つけるためにパネルを何度も読み返すから、普通の解説文より生き生きと勉強できます」と思成さんの母親の王さんは評価する。そして、このように革新的な参加型の展示により、表面をなぞった(10)見学は過去のものになり、本当の意味で歴史と深い対話ができるようになったと述べた。
同館の阮竣副館長はこう語る。「来館者にもっと豊かで立体的な体験を提供し、皆さんに感動をもたらし、思い出を持ち帰ってもらいたいです。革命の歴史が今日の素晴らしい生活の中でもより多くの共感を呼び起こすことを願っています」
歴史の個人に目を向ける
インタラクティブ経験を強化するほか、多くの記念館ではミクロな物語を通じて来館者が歴史を身近に感じさせるようにしている。今年第1四半期の「中国博物館人気ランキング」記念館部門で1位を獲得したのは、侵華日軍南京大虐殺遭難同胞記念館だった。歴史的事件をテーマとするこの記念館では、歴史的悲劇を繰り返さず、平和を呼び掛けるため、展示品に多くのミクロ史観を取り入れている。例えば、1213枚の写真からなる「生存者の写真の壁」は、生存者が亡くなるごとに該当者の写真のライトボックスが消灯する仕組みになっている。また、1万人以上の犠牲者の個人情報を収めた黒いファイルボックスからなる高さ12・13㍍、横20・08㍍の「巨大ファイルの壁」は、誰のファイルでも自由に開け、犠牲者たちの名前、年齢、家族、そして死亡状況を閲覧できる。これらの展示品は来館者に戦争が個人にもたらした傷を実感させるとともに、平和の尊さを訴えかけている。
「南京大虐殺について人々が思い出すのが30万という数字だけであってほしくありません」。2017年に同館が新たな史料コーナーを発表した際、当時の張建軍館長はインタビューにこう答えた。「われわれの使命は、一般人の運命が戦争によってどのように変えられ、またどのようにして暗い影から抜け出し、新しい生活を送ったのかを可能な限り客観的かつ詳細に展示することです」
同年、Panda杯全日本青年作文コンクールの受賞者たちも侵華日軍南京大虐殺遭難同胞記念館を訪れ、張館長と座談会を行った。団員の山本晟太さんから、「館長として、このような展示を通じて、私たちのような若者に一番学んでほしいことは何ですか?」という質問に対し、張館長は息子が夏休みに記念館でボランティア解説員を務めた例を挙げ、「恨みを忘れないためではなく、率直に未来と向き合うために歴史を銘記してほしい」と答えた。
座談会後、岩瀬正美さんは重い口調で語った。「日本では戦争の歴史について多く学ぶことはできません。今後、もし教育に関わることがあれば、歴史に関する考え方を少しでも変えていくことができたらと思いました」
歴史を冷たい展示ケースの中に入れるのではなく、来館者が自らの行動で歴史の継承者となるよう促すこと――これが記念館の存在意義かもしれない。