優遇政策で幸せな生活を
段非平=文
かつて、封建的農奴制度の抑圧の下、旧チベットの人々は極めて困窮した生活を強いられていた。満足に食べられず、服も足りず、医療や教育といった基本的な保障は夢のような存在だった。60年の歳月を経た今、西蔵自治区の民生事業は全面的な発展を遂げ、人々が穏やかに楽しく暮らし、幸せに満ちた絵巻が雪の高原に広がっている。
夢を支えた就職支援
雇用は最大の民生だ。近年、西蔵自治区は就業・起業支援の強化に力を入れ、夢を抱く若者が地元で才能を発揮できる舞台を提供している。大学卒業生向けの「基層就業支援計画」により、ロカ市出身のデジヤンゾン(徳吉央宗)さんは卒業後、順調に地元の農業産業パークに就職した。パーク側は彼女に経験豊富なメンターを割り当て、学校で学んだ専門知識が実践力に変わるようサポートした。「最初は現場の課題に戸惑いましたが、メンターの手厚い指導で今では温室栽培を農家に教えられるようになりました。収穫量が倍増したのを見ると、自分がボーナスをもらうよりうれしいです」と彼女は誇らしげに語る。
昨年、西蔵自治区の大学新卒者全体の就職率は95%に達し、都市部登録失業率は3%以内に抑えられた。この優れた成績の後ろには、地元の優遇政策によるサポートのほか、「西蔵支援プロジェクト」も重要な役割を発揮している。第14次五カ年計画(「十四・五」計画、2021~25年)期間中、各支援省・市や国有企業は西蔵自治区の住民向けに2万以上の雇用機会を提供し、より広い世界で夢をかなえられるようサポートした。
ナクチュ市出身のソランザシ(索朗扎西)さんがその中の一人だ。22年に西蔵就職支援プロジェクトを通じて、彼は江蘇省にある大手製造会社に就職した。「最初は慣れない環境で緊張しましたが、同僚たちの温かい心遣いと手厚いサポートで、すぐこの大家族に溶け込めました。ここでは高度な技術を習得でき、本当に多くのことを学びました」と彼は語る。将来について尋ねると、彼は目を輝かせてこう続けた。「ここで貯めたお金と学んだ技術を故郷に持ち帰り、故郷で起業して、より多くの地元の人々と共に豊かな生活を過ごせるようにしたいです」
教育で人生に光を
ラサ市にある江蘇実験学校には、近代的な校舎が目立ち、先進的な教学設備が整い、校庭には生徒の笑い声が響き渡っている。「私たちの学校にはロボットプログラミングや3Dプリントなど面白い授業がたくさんあり、いろいろな部活動もあります。これらの授業では教科書以外の知識がたくさん学べます」と5年生のデジチュマ(徳吉卓瑪)さんは興奮気味に話す。豊富な校内授業のほか、学校は遠隔教育システム(6)も活用し、江蘇省の名門学校と同期して授業を行っている。これにより、生徒たちは高原にいながら豊かな教育資源を享受できる。
西蔵自治区はすでに全国に先駆けて幼稚園から高校までの15年間の無償教育体系を確立している。この期間中、生徒の学費と教科書代は全額免除され、農牧民の子女と都市部の困窮家庭の子女はさらに「三包政策」(食事・宿泊・学用品の無償提供)の対象となる。これらの施策は、より多くの子どもたちの「学校に通う」という基本的な願いをかなえたばかりか、子どもたちが「良い教育を受ける」というさらに高い目標に向かい、成長の道のりを支える堅固な教育基盤が築いた。
職業教育の分野においても、西蔵自治区は優れた成績を上げている。地域産業の発展ニーズに合わせて、数多くの実用的人材を育成している。シガツェ市職業技術学校でチベットじゅうたん製作を専攻するザシピンツォ(扎西平措)さんは、卒業後地元のチベットじゅうたん製造企業に就職した。「この専門を学んだおかげで、民族文化を継承しながら生計を立てることができます。将来は上級技術者になり、チベットじゅうたんの製作技術を伝え、より多くの人にその独特な魅力を知ってもらいたいです」
健康の防衛線を守る
旧チベット時代、医療環境は極めて劣悪で、医師と医薬品の不足が常態化しており、人々は診療の難しさと高額な費用に頭を悩ませていた。しかし今、この状況は根本的に改善され、医療・保健施設のネットワークはすでに西蔵自治区をあまねくカバーしている。西蔵では現在、各レベル・種類の医療・保健施設の数は1700カ所以上に達し、全ての郷に保健所があり、全ての村に保健室があり、家の近くで便利な医療サービスを受けられるようになった。
ハード面の整備に加え、西蔵自治区の医療人材育成も着実に進んでいる。支援プロジェクトなどを通じて、中国国内の各大病院の名医たちが遠路はるばる西蔵を訪れ、先進的な医療技術と理念をもたらすだけでなく、地元医療人材の育成にも力を注いでいる。ニンティ市人民病院では、広東省から支援に来た李華医師と地元医療チームが協力し、数多くの技術的難関を突破した。「着任当初は、多くの複雑な手術が行えませんでしたが、ここ数年の努力を経て、今では腹腔鏡手術や人工関節置換術などが可能になり、技術レベルは質的な飛躍を遂げたと言えます」と李医師は感慨深げに語る。
近年、家庭医療サービスも西蔵自治区全域に普及し、人々によりきめ細やかな健康管理を提供している。昨年8月の時点で、高齢者、妊産婦、児童、慢性疾患患者、身体障害者など重点対象層の家庭医療サービスの契約率は99・78%に達している。家庭医たちは健康の管理人として、契約住民に基本医療、公衆衛生、健康管理などの総合サービスを提供している。「家庭医がいて本当に心強いです。健康上の問題があればいつでも相談でき、定期的に健康診断にも来てくれます」とラサ市城関区に住んでいるゲサンデジ(格桑德吉)さんは笑みを浮かべた。
全ての人に温かい家を
「以前は山あいに住んでいて、市街地に行くなら狭くて険しい砂利道を2、3時間歩かなければならないから、どうしても必要なとき以外はほとんど出掛けませんでした」とチャムド(昌都)市昌慶街コミュニティーの新居で、ツェリンワンドイ(次仁旺堆)さんは当時を振り返る。「今の家は100平方㍍以上もあり、広くて快適です。団地内には幼稚園やコンビニがあり、歩いて10分ほどの所には病院もあります。孫は2時間も山道を歩いて学校に行かなくて済むし、妻の関節炎も定期的に診てもらえるようになりました。こんな生活は昔は想像もできませんでした」
ツェリンさんの生活の変化は、西蔵自治区の「易地扶貧搬遷工程(貧困者を立地条件の良い場所へ移転させる貧困対策プロジェクト)」の縮図だ。2016年に実施して以来、すでに27万人以上の住民が同プロジェクトを通じて閉鎖的な山間部から移住し、新たな家で新しい生活を始めた。全ての新設コミュニティーには耐震住宅が設計され、幼稚園やチベット医学診療室、文化活動センターなどの施設も整備され、住民が便利で快適な生活を送れるよう配慮されている。ナクチュ市セニ(色尼)区の那興塘コミュニティーでは、さらに牧畜民のために酥油桶(ヤクバターを作る道具)の収納スペースを設け、屋根には太陽光パネルを設置した。これにより、代々受け継がれてきた生活習慣を守る一方、現代生活の利便性も取り入れ、「住む場所がある」から「住みやすい環境がある」へと進化を遂げている。
都市部の保障性住宅(政府補助のある低・中所得者向け住宅)建設も着実に進んでいる。ラサ市にある陽光家園コミュニティーでは、42棟の建物が木と花に囲まれ、健康遊具エリアからは子どもたちの笑い声が聞こえ、高齢者活動センターでは数人の高齢者が音楽に合わせてチベット族の伝統舞踊「ゴルシェ」を踊っている。住民のニマラム(尼瑪拉姆)さんの2DKの部屋は整然と片付けられ、リビングの壁には娘の表彰状が貼ってある。「10年以上市場で野菜を売っていますが、家は賃貸で、家賃が高い上に収入が不安定で、いつ引っ越さなければならないか心配でした。23年に入居したこの保障性住宅は家賃が毎月たったの300元、団地を出るとすぐにバス停があり、娘の通学にも野菜の調達にも便利で、今は本当に安心です」
昨年末の時点で、西蔵自治区では約54万戸(世帯)の都市部保障性住宅が新築または改修され、約22万人が恩恵を受けている。これらの新築住宅は風雨をしのぐ住まいであるだけでなく、人々の幸福な生活への憧れをも具現化している。
民生改善のために実施したさまざまな取り組みは、まるで刺しゅうのように人々のより良い生活への願いを現実のものに織り上げている。もちろん、民生改善の道に終点はない。新たな歴史の出発点に立った今、幸福な生活の絵巻はこれからも西蔵自治区で描き続けられていくに違いない。
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