文化の的確な保護と継承

2025-08-22 09:51:00

李家祺=文 

西蔵は人々を魅了する雪の高原だ。ここには壮大で美しい自然のほかに、悠久の歴史を持つ文化の土壌がある。西蔵自治区が成立して60年、経済と社会の発展に伴い、優れた伝統文化もより良く保護され受け継がれていき、現代文明との融合の中で生命力と魅力を発揮している。 

刷新する文化財 

朝、ポタラ宮はその日最初の観光客を迎えた。人々は興奮気味に宮殿と記念写真を撮り、その雄大で壮観な美しさに驚きの声を上げる。観光客が撮影に夢中になる中、ダサン(達桑)さんはカメラを背負ってポタラ宮の隅々を駆け回っている。観光客と異なるのは、彼のレンズの向かう先が壁や床、そして柱だということだ。 

ラサ市マルポリ(瑪布日山)にそびえるポタラ宮は7世紀に築かれたもので、西蔵自治区で最も保存状態が良く、規模が最大の宮殿式建築群だ。「たいへん古い建造物だから、壁や木材のひび割れや虫食いなどはしょっちゅうです」とダサンさんは詳細に記録を取りながら話す。「私の仕事はそれらを写真に収め、すぐに上司に報告して、直ちに職人に修復してもらうことです。修復が終われば、比較用の写真を撮影して、修復記録として保存します」 

ダサンさんは2018年にポタラ宮の管理所に入職して整備課の職員になった。7年間、カメラを背負ってポタラ宮の隅々を渡り歩き、破損または修復箇所を逐一記録している。この仕事を始めて撮影した写真は3万枚以上に上る。 

整備課にはポタラ宮の建造物の研究、管理、保護、修繕などを行う者が75人いる。中でも修繕チームはさらに石工、木工、左官、裁縫チームなどに分けられ、各チームが役割を果たしながらこの「家」を守っている。 

「西蔵自治区が成立してから、党と国家は文化財保護と文化継承を非常に重視し、2度にわたって巨額の資金を投入し、ポタラ宮の大規模修復を行いました」と整備課長のザシピンツォ(扎西平措)さんは語る。彼によると、ポタラ宮の第1期修復工事は1989年から94年まで行われ、第2期修復工事は2002年6月に着工し、09年8月に完工した。この間、中央政府は総額2億1000万元以上の資金を投入した。特筆すべきは、第2期修復期間中に研究チームが改良型「アガ土」(「アガ」は純天然の半石灰化微晶灰岩で、古いチベット式建造物の屋根や床に普遍的に使用される伝統的な建材)や低圧グラウト工法などの重要な成果を上げ、歴史的建造物の保護に貴重な礎を築いたことだ。 

近年、科学技術イノベーションはポタラ宮の保護に新たな活力を注ぎ込んでいる。軽くマウスをクリックするだけで、3Dモデルによって壁画の細部まで一目で確認できるようになったり、約800個の構造型センサー(7)が継続的に作動し、1000万組以上のデータを記録、文化財保護のための精密なデジタルアーカイブを構築したりしている。 

石や木材、土でできた古い建造物であるポタラ宮は耐火性が低く、内部にはタンカや経典など可燃性の文化財が大量に保管されているため、防火は保護作業の中で最も重要な課題だ。これに対し、科学技術も的確な解決策を提供している。近年、ポタラ宮にはインテリジェント自動火災報知システムが導入され、先進的なセンサーとアルゴリズムを利用して、宮殿内の火災状況をリアルタイムで監視し、火源を発見すると即座に警報を作動させる。さらに、ポタラ宮にはスマート電力使用量エネルギー消費モニタリングシステムも導入され、回路の作動状況をリアルタイムで監視することで、電気利用の安全における精密化管理を実現している。 

職人たちの日々の細やかな修復、建造物の予防的保護、そして先端技術の活用により、ポタラ宮は千年の風雨を経てもなおその美しい姿を保ち続けている。 

継承の環境整備 

銅鑼と太鼓の音が鳴り響き、仮面が現れた。シャンパ(湘巴)チベット劇の役者たちが地面を踏み鳴らして身を翻し、高らかな歌声を上げて豪快に踊る姿に喝采が起こる。 

これはシガツェ市ナムリン(南木林)県の無形文化遺産(8)公園で開催された無形文化遺産展示イベントの一幕だ。 

ナムリン県のシャンパチベット劇には600年以上の歴史がある。06年にナムリンシャンパチベット劇は第1陣国家級無形文化遺産代表プロジェクトリストに登録されたチベット劇流派の一つとなった。 

控え室では高齢者が慌ただしく動いていた。シャンパチベット劇国家級無形文化遺産継承者のツェリンドルジ(次仁多吉)さん(76)が、次に舞台に上がる若者たちの衣装を整えていた。 

シャンパチベット劇について語るツェリンドルジさんの情熱は尽きない。「子どもの頃から大人と一緒に見ていたチベット劇はいつしか娯楽から趣味、そして仕事になりました。これを演じて40年余りになります」 

チベット劇を演じ始めたばかりの頃は人や金、そして公演の機会が不足し、どこも困窮していたと語る。「政府の支援とチベット劇団の努力で、私たちの劇団は次第に大きくなり、今では祝祭日には県で公演を行うほか、ラサのショトン(雪頓)祭やシガツェのチョモランマ観光文化祭などの大規模イベントにも参加しています」 

現在、ナムリン県は充実したチベット劇継承システムを備えている。国家級継承者1人、自治区級継承者1人、県級継承者12人を擁し、11の県級無形文化遺産プロジェクトと11の伝承拠点を基盤に、30の民間チベット劇団が草の根レベルで活躍している。 

ツェリンドルジさんはもう表舞台から裏方に回り、後進の指導に力を注いでいる。「環境が整ったことで、より多くの弟子を育てられると思います」 

データによると、12年から昨年にかけ、中央政府と西蔵自治区政府は総額4億7300万元の資金を投入し、西蔵の無形文化遺産代表プロジェクトの保護、国家級無形文化遺産継承者の記録、伝承活動、設備と建造物の保護と利用などに活用した。第15次五カ年計画(「十五五」計画、2026~30年)の終わりまでに自治区全体の無形文化遺産プロジェクトは3000件を突破し、継承者は2000人に達する見込みだ。 

科学技術が文化財に新たな命を吹き込み、政策が無形文化遺産のために継承の橋を懸ける。そしてダサンさんやツェリンドルジさんのような文化の守り手たちは、誠意ある心と卓越した技で、チベット族の伝統文化を新時代の土壌に根付かせ、輝かしい花を咲かせている。 

 

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