「アジアの給水塔」を守る
王朝陽=文
ラサは細長い河谷地帯にあり、市内を貫くラサ川の両岸には南山と北山が連なっている。ポタラ宮の真南にある緑豊かな南山は市街地と川を隔てて向かい合っている。木々が生い茂り、市民や観光客が遊歩道で散策を楽しむ場所だが、十数年前までは山肌がむき出しの荒山だった。「緑が乏しく、山は荒れ果て、毎日見ていると気分が落ち込みました」とラサ市民のチュチェン(曲珍)さんはそう振り返る。
草原の退化や土地の砂漠化を抑制し、住民の生活環境を改善するために、2012年にラサ市は南山の植林緑化プロジェクトを始めた。5年間で、かつての荒山は美しいラサ南山公園へと生まれ変わった。21年から、西蔵自治区はラサの南北山緑化をさらに推進するプロジェクトを実施し、10年間で206万7000ムー造林する計画を立てた。
標高4000㍍の植樹
南山の標高は3600㍍から4050㍍の間にあり、平均傾斜角度は60度に達する。山体の大部分は土壌層が薄く、60%が礫石だった。このような地質では、植樹や育林の難しさは想像に難くない。ラサ市林業・草原局の李宝平氏は次のように述べる。「1本の木を活着させるまでに37のプロセスがあります。苗木の選定、掘り起こし、積み込み、輸送中の保温保湿、苗木の荷降ろし、山への運搬、穴掘り、客土(外部から良質な土壌を運ぶ)、植樹、支柱固定、さらにその後の病害虫防除、追肥など、全てのプロセスが造林の活着率に影響します」
十数年のたゆまぬ努力の結果、現在、南北山では造林面積が約70万ムーに達し、約1億1400万本のさまざまな苗木が植えられ、活着率が85%以上に達している。空からラサ河谷を見下ろすと、両岸の山々は東西に約200㌔にわたる緑のベールをまとっている。さらにこうした緑化活動は、青蔵高原の隅々にまで広がっている。昨年1年間で、西蔵自治区は106万ムーを造林し、600万ムーの退化した草原と、102万ムーの砂漠化した土地を修復・整備した。
南山から遠くを見渡せば、澄み切った青空と真っ白な雲が荘厳たるポタラ宮の赤い壁と金色の屋根と互いに引き立て合い、美しい光景を描き出している。昨年の西蔵自治区の大気質「良好」だった日の割合は99・8%に達し、「高原の青」はこの地域の最も鮮やかな背景となった。
観光客にとって、西蔵の澄んだ空気と壮大な景色は、この地に対して最も深く美しい第一印象を与えてくれる。上海から観光に来た林さんは飛行機を降りた時点で感動し、「大都市ではこれほど澄んだ空気はなかなか味わえません。呼吸をするたびに、心が洗われるように感じます。ここに立って、青い空と白い雲を眺めながらこんなに新鮮な空気を吸っていると、もう帰りたくなくなりますね」と述べた。
世界の生態系・環境を守る
青蔵高原は世界でも生態環境が非常に優れた地域の一つであり、北極圏と同レベルの大気質、自然本来の状態を保つ土壌を有している。ここはまた世界有数の生物多様性を誇る地域でもあり、中国で最も高い木が健やかに生長し、チベットアンテロープ、オグロヅル、ユキヒョウ、ベンガルトラなどの野生動物が生息している。一方で、ここは生態系が脆弱な地域でもあり、気候変動に左右されやすい地域でもある。一度生態環境が破壊されると、修復は非常に難しい。
青蔵高原の生態環境を守ることは、中国の生態安全を保護するだけでなく、世界の生態安全にも重要な意義を持つ。「アジアの給水塔」と呼ばれる青蔵高原は、総量約4500億立方㍍の水資源を有し、瀾滄江、怒江、ヤルツァンボ(雅魯蔵布)江、センゲズァンボ(獅泉)川、ザユィチュ(察隅)川などアジアの主要河川の源流で、10億人余りの流域人口を養っている。青蔵高原はまた、北半球の気候「調節器」でもある。約0度の年間平均気温、1万本以上の氷河に覆われ、広範囲にわたる氷雪面積は、この地域を巨大な冷源とし、大気循環に影響を与えることで、地球の気候システムに重要な調整機能を果たしている。
脆弱で敏感な生態環境を守るために、西蔵自治区はこれまでに各種自然保護区を47カ所設立し、総面積は41万2200平方㌔に及ぶ。また、「二江四河(ヤルツァンボ江、怒江、ラサ川、ニャンチュ(年楚)川、ヤルン(雅礱)川、センゲズァンボ川」の植林緑化プロジェクト、退化した湿地の保護と修復、天然林の保護、草原生態修復の総合的な管理、砂漠化防止および森林生態利益補償など、一連の重要な生態プロジェクトを継続的に実施しており、これまでの累計投資額は127億元に達する。
昨年発表された「2023年西蔵自治区生態環境状況公報」によると、西蔵の主要河川や湖の水質は全体的に良好な状態を維持している。また、同年8月に発表された第2回青蔵高原総合科学調査の成果では、3000種以上の新種が発見され、多くの高原固有の希少種(10)の個体数が回復傾向にあるとした。
金のなる桃の木
生態優先の理念を実践する過程で、西蔵自治区の住民も確実な経済的利益を得ている。観光産業の発展を一例とすると、昨年、西蔵自治区が受け入れた国内外観光客数は前年比15・8%増の延べ6389万1000人で、収入は同14・5%増の745億9300万元に達し、共に過去最高を記録した。
ニンティ市ガラ(嘎拉)村は、西蔵自治区の「桃の花の第一村」と呼ばれる。3月に桃の花が咲き誇り、この小さな村は一面桃色に包まれる。「桃の木はガラ村の最大の特色です。桃の林を保護し、花をきれいに咲かせ、大きな果実を結ばせるために村全体で取り組んでいます」と村の党支部書記ベンバ(辺巴)氏は語る。近年、村では厳格な生態保護措置を実施し、専任の森林保護員チームを組織し、村民は毎年植樹造林活動を行い、地元に適した桃の品種を植え、「桃の花の村」の美しい風景を広げ続けている。
改革開放前、ガラ村の村民は主に伐採、放牧、ハダカムギの栽培で生計を立てていた。収入は低く、環境へのダメージも大きかった。国家の生態文明建設が深く推進される中、村民たちは木を切る人から森を守る人、木を植える人へと変わった。地元の1200本以上の古い桃の木は、村民たちが守るべき責任林であると同時に、村の観光事業をサポートする富をもたらす木ともなっている。昨年、ガラ村の集団経済収入は700万元以上に上り、村民1人当たりの年間可処分所得は4万1200元に達した。そのうち半分以上はエコツーリズムによるものである。
西蔵自治区の最大の価値は生態にあり、最大の責任も生態にあり、最大の発展可能性も生態にある。「桃の花の村」を縮図として、美しい生態環境が青蔵高原にもたらす持続的な発展の原動力を見ることができる。
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