多種多様でより身近に

2026-02-03 10:14:00

王金臣 李士萌=文 李士萌=写真 

オフィスで香り漂うクコとキクの花のお茶、食卓に並ぶ薬膳料理、リラックス用携帯匂い袋、多くの都市で開かれる中医薬の夜市、中医薬ヘルスツアーなど、中医薬という古くからある医学体系はまさにいま新たな活力を放ち、より多元的かつおしゃれで身近な方法で人々の日常生活に浸透している。 

「治已病」(すでに発症した病気の治療)から「治未病」(病気の予防、または病気の進行の阻止)へ、そして専門分野から一般人の日常へ、中医薬は現代人へ自然に回帰し心身を調和するという生活の哲学を提供している。 

食べて健康に 

「このパンには黒ゴマ、クロミグワ、百合根、陳皮が入っています。どうぞお召し上がりください」。第56回全国生薬生薬製剤交易会では、多吉多美ケーキ店のスタッフの声掛けが大勢の来場者を引き付けていた。「近年は人々の健康意識が高まっているので、伝統的な食材と中医薬の要素をベーカリーに取り入れました。改良した健康ベーカリー製品は以前より好評です」と同店マネージャーの徐智敏氏は語った。 

多吉多美ケーキ店の近くでは、「薬草カクテル」を売りにするブースが同様に大人気だった。まだ20代のバーオーナーの鄒健氏が「養生湯」という名前の特製カクテルを作っている。ベースとなる黄金色の酒をシェイカーに注ぎ、低温調理や冷浸法で抽出したウコン、イヌビワの根、クコなどのエッセンスを加え、さわやかな甘みのココナッツウォーターを注ぎ、軽くシェイクすれば、薬香漂う澄んだ色合いのカクテルの出来上がりだ。「私たちのカクテルは『薬食同源』の理念に基づき、味と健康の両面から開発を進め、中医学の養生理念をよりおしゃれで若者に合った形で日常生活にお届けしたいと考えています。まさかここまで人気だとは思いませんでした。多くのお客様がリピーターになってくれました」 

中国の「薬食同源」の文化ははるか昔にさかのぼる。現在、伝統的な知恵に新たな息吹がもたらされ、現代人の生活に深く溶け込んでいる。例えば北京の白塔寺薬店ではハイビスカスと烏梅のドリンク、上気冷ましの茅根ドリンク、梨のスープなどが飛ぶように売れている。上海の奉賢区中心病院の薬膳甘味処「小南益膳堂」では、「薬食同源」デザートを目当てに連日大にぎわいだ。鄭州の東済堂中医館にある「食養厨房」はさらに個性的で、中医薬を使った炒め物、主食、軽食、スープ、デザートなどのさまざまな料理で「養生」をより身近で多様にしている。 

「新中国式養生が勢いよく進んでいます。その理由は、まず消費者の健康ニーズが高まりつつあるからです。もう一つの要因は、『薬食同源』の理念の認識が広まり続けているからです」と華南農業大学食品学院の杜冰教授は述べる。中国で「薬食同源」リストに登録されている中医薬は100種類以上に上るが、まだ多くの資源が十分に開発されていない。今後5年でさらに多くの中医薬が食事に取り入れられ、新中国式養生市場のいっそうの発展を後押しすると杜教授は考える。 

嗅いでリラックス 

中医学の食療が食べて養生なら、香療(芳香療法)は嗅いで保養だ。 

江西中医薬大学香療研究院にはほのかで上品な香りが漂い、人々を伝統の知恵と現代科学技術が融合する静かで穏やかな空間へといざなう。ここでは当帰(セリ科植物)、沉香、スイカズラといった生薬を超臨界抽出や分子蒸留などの先端技術を使って高純度で高活性な中医薬精油へと変換する。研究院はあらゆるデータの記録を取り、千年の香療の知恵を定量化検証可能普及可能な現代の健康プランに転化することに専念する。 

「研究院ではすでに30種類余りの生薬を活用し、100種類余りの中医薬配合精油を製造しました。健康的な保養、感情のコントロール、スキンケア、そしてセルフケアなどの場面で広く応用できます」と同研究院香料鑑定士の唐芳瑞さんは説明する。 

中医香療は中医薬理論をもとにし、香薬特有の生理的および心理的な調整機能にのっとって、薫香、塗布、あん、おきゅう、内服などの方法で人体に作用し、病気の予防、未病の保養、回復の促進を図る、安全性と快適性を兼ね備えた自然療法だ。 

古来、香りをまとって疫病を避け、香をたいて精神を安定させ、匂い袋で疫病を防ぎ、薬草枕で快眠を促した。香療とは中医薬の「治未病」体系における重要な構成要素だ。 

今ではこの古くからある治療法は科学化と標準化の新たな段階を迎えている。世界的に権威のある学術雑誌『フロンティアーズインファーマコロジー』に掲載された研究によれば、沈香と雲木香(キク科植物)の揮発油は長期間軽度のストレス下に置かれたラットに対して抑うつ効果を発揮したとあり、神経調節の分野で中医香療に有力な科学的根拠を与えた。 

唐氏によれば、江西中医薬大学元副学長の楊明教授の指導の下、チームは理論の遡及、製品開発から抽出技術、治療効果の評価という整った閉ループ研究を完成させた。それとともに同大学香療研究院は七つの中医薬精油の基準を設けることを主導し、業界の規範化された発展のために基準となる裏付けを提供した。 

しかし近年で中医香療の注目度が高まっても、一般人にはその深い理論への理解が依然として不足している。「チームはより現代生活に身近な、携帯型アロマシールなどの製品を研究開発しました。香療がより簡単により効率的に日常生活に取り入れられるよう追求しています」と唐氏は語る。 

「健康中国戦略」の実施が進み、国民のヘルスリテラシーが向上し続けるに伴い、文化的意味と実用価値を備えた中医香療は医療、健康増進、美容、家庭生活などさまざまなシーンに加速度的に受け入れられていくというのが多くの香療業界関係者の認識だ。現在の香療製品市場は発展の初期段階にあり、供給が飽和しておらず、大きな潜在力がある。 

旅先で治療 

海南省の三亜国際友好中医療養院新区の療養室に入ると、窓の外に広がる海の景色に真っ先に目を奪われる。そして室内に置かれた鍼灸用の針、按摩ベッド、ガラス製の吸い玉(5)などのさまざまな中医学の器具がこの場所の特異性を物語っている。 

「ホテルとは違い、高齢者の方々がここに滞在すれば、鍼灸、中医足浴、おきゅうなどの中医薬サービスを受けられます」と同院の李曼玲副院長は説明する。三亜市中医院の待合室では、ロシアから来たヤーナさんが診察待ちをしていた。彼女は長年胃もたれに悩まされてきたが、鍼灸や按摩などの中医療法をしばらく受けた結果、症状が著しく改善したという。初めて針を刺されるときは緊張したが、体験後は気分が良くなり、恐怖心もなくなったと語った。 

ロシア語通訳者の王青氏によれば、何人ものロシアからの観光客が親戚や友人から評判を聞いて訪れているという。最新のビザ免除政策により、ロシアやカザフスタンなどの国の観光客は三亜に30日まで滞在可能だ。たくさんの観光客が治療の効果を定着させるために、1週間連続で鍼灸や按摩などの治療を受けに通う。 

「ロシアや中央アジアの多くの地域は寒帯に属し、頚椎症、腰痛、さらに高脂血症や高血圧などの慢性疾患にかかる人が特に多いです。中医薬はそれらの疾病の予防や治療に顕著な効果があるため、幅広く受け入れられています」と三亜市中医院の袁愛林副院長は説明する。「当院の患者の大半がロシアとカザフスタンから来ていて、そのうちロシア人患者が80%を占め、カザフスタン人患者は15%、残り5%はポルトガル、スペイン、ノルウェー、スウェーデンなどからの患者です」 

「現在、ヘルスツーリズムは世界のサービス貿易の新たな成長分野となりつつあります」。商務部研究院国際サービス貿易研究所の李俊所長はそう語り、次のように指摘する。タイとマレーシアはヘルスツーリズムを国家レベルの重点産業に育て上げた。中国の中医薬はもともと療養、保健と深く融合する独自の優位性を備えており、越境ヘルスツーリズムの先行分野となる可能性を十分に秘めている。中国は越境医療と観光業の連携を重視し、越境医療ツーリズムの質の向上を大いに推進すべきだ。 

舌で味わう養生から鼻で楽しむ上品な薬香、そして旅の合間の療養体験まで、中医薬は「食、香、旅」などの多様な形態で伝統の境界を打ち破り、現代の生活に溶け込んでいる。「治未病」という先人の知恵を守りながらも、健康的な生活への新たな可能性を絶えず解き放っている。「健康中国戦略」が推進される中で、そして業界の規範が整備されていく中で、中医薬といういにしえの文化を蓄積した至宝は人々の健康を守り、産業の高度化に寄与し、国際交流を結ぶ道のりにおいていっそう輝かしい光を放ち、新時代において伝統の知恵に恒久的な生命力を発揮させるはずだ。 

人民中国インターネット版

 

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