全土に行きわたる書の香り
段非平=文
「書香」という言葉は宋代の詩『述懐次柴主簿』に由来し、本来は防虫剤として書籍にはさむ香草の香りを意味するが、現在は読書の気風の表現に用いられる。近年、中国は国民読書促進に関する一連の政策と措置を打ち出し、読書を全ての人々が享受する生活の楽しみにし、「書香」を新時代の最も濃厚な文化的下地にしている。
提唱から国レベルの行動へ
2006年、元中国新聞出版総署など11部門が共同で「全国民の読書活動の展開に関する提案書」を発表した。ここから「本を愛し、良書を読み、読書を生かす」という理念が中国の各家庭に徐々に広まった。
14年に政府活動報告に初めて「全国民の読書を提唱する」が盛り込まれた。これは国民読書がすでに社会への提唱にとどまらず、国家戦略へと正式に格上げされ、中国の経済社会発展の全体的な計画における重要な要素となったことを意味する。それから10余年を経て、国民読書は13回連続で政府活動報告に盛り込まれ、表現も「提唱する」から「力強く推し進める」「深く推進する」などますます掘り下げられ、政策レベルも向上し、戦略的配置も日々明確になっている。

読書推進に関する政策体系は年々整備されている。「全国民読書活動週間」が正式に発足し、「全国民読書促進条例」も公布され、「第15次五カ年計画」では「読書社会づくりを推し進める」という目標と任務が明確に打ち出された。一連の制度的配置は読書が真の意味で国民の素養を向上させ、文化強国づくりの重要な基盤となったことを意味する。
こうした政策を受け、各地では関連措置が相次いで打ち出され、公共文化への投資が増え、都市・農村読書環境が改善され、読書の普及を急速に推し進めている。データによれば、中国人の総合読書率は12年の76・3%から24年には82・1%に上昇し、1人当たり平均読書量は6・74冊から8・31冊に増加した。14億もの人口を持つ大国にとって、数字の微々たる変化は数百万から数千万人もの読書生活の大きな改善を意味し、ますます多くの人が本を手に取り、読書を愛することを意味する。
多彩で身近な読書イベント
読書が社会に浸透し、人々の心に根差したのは、各地で盛んに行われている読書イベントの貢献が大きい。一連の特色あふれた活動によって、読書は社会的風潮となっていった。
中国で最も影響力を持つ地域レベルのブックフェア「南国書香節」は、もはや広東省の名物となっている。昨年の南国書香節は会場が人で埋め尽くされていた。広州市天河区に住む王夢さんは毎年子どもを連れて来場する。「良い本が安く手に入りますし、子どもは読書に集中できるし、一石二鳥(1)です。帰り際には必ず子どもが、早く読みたくてたまらないというふうに私の手を引っ張ります。こういう親子の時間はとても貴重だと思います」。サラリーマンの李さんも時間ができた週末に駆け付けた。「普段は仕事が忙しく、落ち着いて本を選ぶ時間もありません。ここには豊富な種類の本が並び、作家のトークショーもあるので、気に入った本を買えるし、勉強にもなります。香港ブースに行きましたが、遠出しなくても粤港澳大湾区(広東・香港・マカオグレーターベイエリア)の多様な書籍を味わえるのがお得です」
中国で初めて全市を挙げて1カ月間開催する市民読書活動――「深圳読書月間」は、前衛的な視野と国際的な対話で独自のブランド力を持つ道を進んだ。毎年11月に深圳市は「読書時間」に入る。期間中は国内外から有名な作家や学者が訪れて意見を交わし、海外の優れた作品や出版リソースを輸入し、中国文化と海外文化が相互参考する特別な場が築かれる。近年、読書月間はデジタル読書、没入型体験、インタラクティブAIなどの新しい形式を深く融合させ、ハイテクと書香文化を緊密に結び付けている。深圳読書月間はもはや単に本を買って読むだけの期間ではなく、都市全体を巻き込んだ文化フェスティバルであり、忙しない都会人がゆっくり落ち着いて読書を通じて精神的なよりどころを探せる機会であり、「本を愛し、良書を読む」を深圳というイノベーション都市の最も鮮明で魅力的な特徴にしようとしている。
このような大規模ブランドイベントのほかに、各地の現場で行われる読書活動も特色にあふれ、ぬくもりのある取り組みとして読書を日常に溶け込ませている。江蘇省江陰市の長江村では月に1、2回読書会が行われる。村民が課題図書を決め、家庭教育や農業技術などみんなが関心のある話題を話し合う。寧夏回族自治区の固原市では、多くの図書館が「選書」サービスによる読者リクエストを受け付けている。困窮家庭の児童に必要な書籍を購入し届けるのが目的だ。すでに3000冊以上の図書を無料で配送し、困窮家庭の児童の読書力向上と習慣づくりに貢献してきた。浙江省杭州市では多くのコミュニティーが文化ステーションで「読書+無形文化遺産」「読書+手作り」などのイベントを行い、読書と伝統文化体験を融合させ、住民たちは古典を読みながら剪紙、篆刻、書道といった伝統芸術を体験し、読書をより面白く、書香をより日常に溶け込ませている。
全土に広がる読書習慣
あらゆる人々に読書の機会を届けることは、中国が推し進める国民読書活動の核心的理念だ。10年余り、中国は農村部、少数民族地域、辺境地区、発展の遅れた地区への政策的重視や資源投入を継続的に強化し、一連の具体的措置で読書の習慣を社会の隅々にまで行き渡らせてきた。
インフラが脆弱で読書リソースが限られている多くの農村は、読書自体が難しいという課題に直面していた。これを解決するため、各地方政府は対策に乗り出し、ハードウエアからソフトウエアまでを駆使して農村の読書環境を全面的に整備した。中でも「農家書屋」(農村図書室)の設置は最も広範に普及し、最も人々に寄り添う代表的な取り組みだ。河南省南陽市内郷県には多くの「農家書屋」が設置され、それぞれに2000冊以上の書籍が所蔵され、村内の栽培農家や養殖農家の需要に応え、最新の農業技術関連書籍を取り揃えている。同県の清凉廟村に住む陳運喜さんはこの図書室でスモモの木の剪定や生物的防除技術を学び、果実の品質を大幅に向上させたばかりか、農薬の出費も抑え、収穫も年々増やしている。山東省威海市では退職した教員や帰郷した大卒を取り入れた「読書促進チーム」を結成した。毎週末、市内の各村の「農家書屋」は読書会に参加する子どもたちで満員になる。行動が不便な高齢者や障害者にはチームのボランティアたちが書籍を家まで届けることで、農村読書サービスの「ラストワンマイル」をつないでいる。
政府の力強い推進によって、読書の重要性を認識する村民が増えるとともに、農村に根を下ろす読書推進者も現れている。「微光書苑」創始者の李翠利さんもその一人だ。子どもたちの文化的生活を充実させるため、李さんは08年に自分が経営する小さなスーパーの一角に200冊余りの蔵書を置き、村の子どもたちに無料で開放した。設立当初は、本を読みに来る子、借りに来る子は多くなかったので、李さんはお菓子やおまけで子どもたちを呼ぶことで徐々に読書習慣を養っていった。「微光書苑」を18年続け、書籍はすでに5000冊を超え、村で一番親しみのある公共空間と化し、村人たちの読書の道を照らしている。「読書のきっかけは人それぞれです。ここに来て本を手に取ることが、きっかけの一つになればいいと思っています。近年、国が読書に多くのサポートをしてくれたおかげで、読書を趣味にする人がさらに増え、良い読書習慣を養えるでしょう」と李さんは語る。

独特な文化的土壌を持つ少数民族地域で読書活動を推進することは、人々の読書のニーズを満たすことになるばかりか、民族文化の保護と伝承にもつながる。そこで中国は少数民族地域に二言語読書リソースの供給を重点的に推し進め、その地域の人々が中国語共通語書籍を閲覧して視野を広げ、先進的な知識と技能を学ぶとともに、民族言語書籍でその民族の歴史と文化を理解し、精神的根幹を守ることを助けている。貴州省黔東南ミャオ(苗)族トン(侗)族自治州には、各村の「農家書屋」にミャオ語とトン語の書籍を置き、二言語読書を学校やコミュニティー活動に導入し、少数民族の子どもがその環境で健やかに過ごせるようにしている。同自治州凱里市に住むミャオ族の王小花さん(小学4年生)は、村の「農家書屋」で二言語絵本を読むのが一番の楽しみだ。「中国語共通語もミャオ語も読めます。読書をして、ミャオ族のたくさんの伝説を知り、教科書に載っていない多くの科学知識を学べました。読書で自信がつき、自分の民族文化をさらに好きになれました」と王さん。四川省涼山イ(彝)族自治州美姑県に住むイ族の阿木さんは読書で山外の世界を知った。「これからも勉強して、本に出てくるすごい世界をこの目で見たいです」と阿木さん。彼のように読書を通じて夢を持つ子どもがたくさんいる。
辺境地区は農村や少数民族地域より広大で、人口もまばらなため、読書リソースの供給はさらに難しい。この問題に対し、中国は辺境地区での「移動図書館車」「草原書屋」「辺境書屋」の設置に力を注ぎ、良質な書籍を遊牧民や村民のもとに届けるとともに、デジタル技術を使って地域的制限を打破し、辺境に暮らす人々にいつでもどこでも読書を楽しんでもらっている。新疆ウイグル自治区ボルタラ(博爾塔拉)蒙古自治州精河県茫丁郷の北地東村では、24年9月に「新疆デジタル農家書屋」読書プラットフォームが開設され、村民の読書の敷居を大幅に下げた。「今ではスマホの『ポケット書屋』アプリがあれば、いつでも本を読んだり聞いたりすることができてとても便利です」とレナグリ・アイニさんは語る。このアプリはUIと操作手順が最適化されているため、高齢者も使いやすく、字が読めない高齢者でも「聞く」ボタンの場所さえ分かっていれば気軽に読書を楽しめる。これら辺境の実態に即したサービスによって、辺ぴな地域の読書の困難を打ち破ったばかりか、辺境の人々に書香のぬくもりを届け、現地の人々の心を豊かにした。
現在、都市・農村部にあまねく存在する読書空間は、多種多様な読書活動を展開し、書香を日常生活の隅々にまで浸透させ、文字の中からより良い自分を見つけさせている。
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