夢と活気があふれる都市
起業に適し、イノベーションを奨励する都市・義烏には、高すぎる敷居もなければ、地域性による偏見もない。どこの出身者も、努力しさえすれば自分の居場所を見つけられる。大勢の起業家が何もないところから事業を興して成功し、無数の人々がイノベーションによって「雑貨」に「大市場」をもたらした。起業の活力とイノベーションの原動力が義烏の発展の基盤を形作っている。
団結して夢追い掛け
義烏の魅力は、どんな努力にも結果で応じてくれるところだ。各地から集まった夢追い人が、懸命な頑張りによって自分の物語をつづっている。
「85後」(1980年代後半生まれ)の湖北省出身者の涂宏名さんは義烏の起業家の中でも抜きん出た成功を収めた人物だ。2015年にたった500元を握りしめて義烏に来て、全くのゼロから越境Eコマースの世界に飛び込んだ涂さんは、起業当初は運転資金すらほとんどなかったため、宣伝用の横断幕すら隣の店舗から借りてきた。取扱量が少なく、物流会社が集荷に来てくれなかったため、毎日どんな天気でも自転車をこいで荷物を受け取り発送するしかなかった。経営を軌道に乗せるためには、苦労をいとわず真面目に努力するだけではなく、チャンスをつかみリソースをうまく活用することも大事だと涂さんは深く理解していた。雑貨の品ぞろえが豊富で出荷対応が柔軟な義烏の強みを生かし、仕入れルートを少しずつ確保し、安定した顧客を増やしていき、商売も徐々に軌道に乗った。今では彼の会社は年間売上高20億元を突破し、自身が立ち上げた越境Eコマースプラットフォームが世界中の販売者に商品を提供し、1日平均20万個の貨物が彼の倉庫から世界中に発送される。「義烏は奇跡を生み出せる都市です。頑張れば必ず夢はかないます」と涂さんは語った。
義烏国際商業貿易城に隣接する福田街道に、「中国ライブコマース村」と呼ばれる江北下朱村がある。ここには8000以上のEコマース業者が集まり、1日の発送量は平均500万件を超え、3万人余りの起業家が夢を追い掛けている。この村は団結して発展する風潮が強く、起業家たちは商品の情報を共有し、配信のノウハウを教え合い、大口注文があれば手分けして受注することが当たり前になっている。助け合い、共に発展するモデルは、小さな村を越境Eコマース起業家たちを成長させる肥沃な大地に変えた。
吉林省長春市出身の「95後」の黄宇さんは、3年前に身一つでこの村にやって来た。市場への鋭い洞察力を頼りに、手掛けた多くの商品がライブ配信で人気になり、創業した会社の年間売上高は3000万元を突破した。「ここには孤独な人間はいません。困難に直面しても、周囲に経験者がいて、手を貸してくれます」と黄さんは語る。このような助け合いの雰囲気が義烏でしっかりと足場を固めさせ、さらに大きな注文やさらに広い市場に挑戦させてくれるという。

義烏の開放と包摂の精神は中国の大量の夢追い人を引き付けるばかりか、世界各国の起業家たちが安心して奮闘する場所を提供している。セネガル人のスラーさんは、義烏に比較的早めに訪れたアフリカ人経営者だ。03年に初めて義烏で金物商品を仕入れ、ここの圧倒的な品ぞろえと競争力のある商品に魅せられ、すぐに義烏に移った。最初は45日ごとにアフリカに2、3個のコンテナを送るだけだったが、いまでは毎年2000~3000個のコンテナを世界各地に送るまでになり、経営も拡大する一方で、昨年の貿易額は7億元を超えた。「義烏は言葉も文化も違う人たちが自分の居場所を見つけられる場所です。この町は出自を気にせず、努力しか見ません」とスラーさんは語る。この公平で開かれた起業環境が、スラーさんのような異邦人もこの地に腰を据え、全世界と取引できる理由だろう。
イノベーションが市場を刺激
市場でのやり取りの中で義烏の業者たちは商売の嗅覚を研ぎ澄ませていった。市場が何を求め、商品をどこに売るべきか、彼らはいつも一番早く気付き、行動する。
02年にユーロが正式に流通すると、欧州の多くの人々は新紙幣のサイズが財布に合わず、持ち運びしづらいという問題に気付いた。それと時をほぼ同じくして、新紙幣にピッタリな財布が欧州の市場に出回った。この背後には、ニーズを事前につかんでいた義烏の業者たちがいる。08年に世界金融危機が起き、欧米の人々が現金の安全性を不安視すると、義烏は直ちに新型の家庭用金庫をリリースし、海外からの注文が同年末まで続いた。10年のサッカーワールドカップ南アフリカ大会で鳴り響いたブブゼラは、もともと南アフリカで流行していた細長いラッパを義烏の業者が改良して大規模生産し、ワールドカップという舞台で一気に有名になった。このような市場に対する的確な把握と素早い反応は、義烏がイノベーションに適した場所である証しでもある。雑貨で名を馳せた都市は、単純な加工と流通にとどまらず、改良を重ねて既存の商品に新たな価値を吹き込んでいる。
義烏国際商業貿易城を見渡せば、創意工夫あふれる新商品をすぐに発見できる。感情を読み取り交流できるAIフィギュア、LEDライトでデザインを自由に変えられる野球帽、水に濡れると色が変わる子ども用傘など、科学と実用性を兼ねそろえた商品は、雑貨に対する古い認識を改め、義烏が「商品を売る」から徐々に「アイデアを売る」へと遂げていることも示している。
李軍さんが海外のバイヤーにプレゼンしているのは、「K宝」と呼ばれるAIトイだ。スマート大規模言語モデルを搭載し、本物の人間のように顧客と会話することが可能だ。ドイツのバイヤー高麗さんは現場で製品試験を行ってすぐに初回分として3000個の購入を決めた。「インタラクティブな体験とデザインが個性的で、欧州市場にぴったりです」と語った。高さんは商品の市場性に自信を見せる。李さんによると、このAIトイの客単価は一般的なぬいぐるみより7割近く高いが、欧米や東南アジアからの注文が途切れず、毎月平均500~600台売れる。「これまでのおもちゃは価格面で競争していましたが、今は機能と体験が物を言います。義烏では新しくなければすぐに追い抜かされるのです」。李さんの言葉は多くの経営者の本音を代弁している。
昨年10月、義烏グローバルデジタルトレードセンターが正式にオープンした。ここの最大の特徴は、デジタル技術をビジネスの至るところに組み込ませていることだ。全域に10ギガ対応光回線が張り巡らされ、経営者たちは世界の顧客と安定的にリアルタイムでやり取りできる。経営者向けに13の実用的なAIツールがカスタマイズして作られ、製品のデザイン、多言語翻訳、スマート商品選定、海外集客などさまざまなシーンで使用可能で、「万能アシスタント」となっている。

傅江燕さんは夫と年間2000万足の靴下を販売する店を経営している。輸出先は主に中東やアフリカ、南米だ。「私は最初にAI技術を使って商品の宣伝を始めた経営者ではないと思いますが、一番頻繁に使っているのは間違いないです」と傅さんは笑う。これまで海外の顧客に商品を説明するまでに、まず文案を作成してから翻訳、収録、編集を依頼するため、一つの動画を作るのに最低1時間かかった。いまではスマホで商品を選び、文案を打ち込んで言語を選択すれば、AIが自動で外国語の宣伝動画を生成してくれる。3分足らずで、英語、アラビア語、スペイン語など30種類以上の言語パターンを同時に生成可能だ。傅さんは毎日Chinagoods AIスマートプラットフォームで10本ほどの外国語動画を作成し、ワンタッチで20余りの国内外のSNSに投稿している。「バーチャルヒューマンによる販売」は彼女の海外市場開拓で欠かせないツールとなっている。
製品・技術面でのイノベーションに加え、義烏は貿易メカニズムでも先駆的な試みを積極的に行っている。これまで化粧品は製造地ごとに製造地の税関に個別に申告する義務があり、手続きが煩雑だった。昨年7月から義烏は全国に先駆けて「市場調達化粧品の輸出における調達地申告検査」の新たなモデルを導入した。義烏で貨物がコンテナに収納されてから調達地でまとめて申告することが可能になった。さらに「検査してから積載する」というデジタル化モデルを推し進めている。これまでは貨物をコンテナに収納し、税関到着後に開梱して検査する必要があり、検査対象となったコンテナの中身を全て出してから詰め直さなければならず、たいへん手間がかかった。現在、貨物を検査してからコンテナに詰め、検査と積載を同時進行できる。このモデルで越境Eコマースの輸出効率が約30%向上し、コストが15%削減すると見られている。
代替不可能な価値
国際貿易の最前線に身を置く義烏の業者は「臨機応変」の能力を身に付けている。関税障壁や市場の変動などの不確実性を前に、彼らはより強い対応能力とより柔軟な戦略で激しい市場競争の中で優位に立とうとしている。
世界をリードする3Dプリント玩具企業である義烏今奇科技有限公司の工場では、4000台以上の3Dプリンターがフル稼働し、1日平均5万個以上の玩具を生産している。「主な市場は欧米です。米国が関税を引き上げようとも、顧客は一旦様子見するだけで、発注を通常通り生産し、期日通り納品するよう求めています。顧客が重視しているのはうちの生産効率ばかりではなく、商品の更新スピードもです。毎日、5~10種類の新商品を投入できます」と責任者の曾豪氏は述べる。この驚異の「義烏スピード」が、顧客に毎日新しい商品と出会わせ、高頻度のイノベーションで消費者の購買意欲をかき立てている。米国の関税引き上げの圧力に直面していても、完璧なサプライチェーンと際立ったコストの優位性、そして業界を圧倒する商品のアップデート効率により、義烏の雑貨は短期的にまだ代替不可能だ。
「これまでは低コストで注文を勝ち取れていましたが、いまは『代替不可能』で市場を勝ち取らなくてはいけません」と義烏市ブランド発展促進会会長の何犁紅氏は感慨深げに語る。めまぐるしく変わる市場に対し、ますます多くの貿易企業が研究開発にいっそう力を注ぎ、「新品」「流行品」で競争力を「刷新」している。
開放・包摂の起業エコシステムから、持続的にアップデートするイノベーションの活力まで、義烏は国際貿易の潮流の中で安定して前進を続けている。世界各地の起業家を引き付けるこの都市は、持続的イノベーションの中で「代替不可」な競争力を向上させ、小さな雑貨により大きな価値を載せ、世界でさらに大きな輝きを放っている。
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