成都で三国誌の世界へ
島影均 1946年北海道旭川市生まれ。1971年、東京外国語大学卒業後、北海道新聞社に入社。1989年から3年半、北京駐在記者。2010年退社後、『人民中国』の日本人専門家として北京で勤務。 |
四川料理「川菜」は辛さで有名ですが、全部のメニューが辛いわけではなく、何品か甘い料理や点心が和食の「箸休め」と同じように出てきます。今回の旅で発見したのは、炒め物に使う油が北京では大豆油ですが、四川はナタネ油だということでした。そのせいか、辛さのせいか、5泊6日の四川旅行から北京に帰って体重を量ると、2キロ減っていました。
四川名物の火鍋はスープにこくがあり、具材が豊富で本場の味でした。また、朝、街角の小さな食堂で食べたワンタンは皮が薄く餡がたくさん入っていて、スープには乱切りのキャベツも入っていて、美味でした。
もうひとつ忘れられない味は文殊院の精進料理です。おひとり様30元のビュッフェでナスの煮物はお袋の味でした。もちろん辛さ抜群でしたが。
戦国時代の知恵者・諸葛孔明の廟「武侯祠」は広々とした敷地に多数の堂が建ち並び、三国志演義に登場する劉備、関羽、張飛の像もそこかしこに建っていて、3人が兄弟の契りを結んだ桃園もあり、2千年前にタイムスリップした気分を味わえます。3人の任侠の男の中で誰が好きか。いつしか商売の神様、家内安全の神様になった関羽は日本各地の中華街でも関帝廟に祭られている人気者ですが、さてあなたは。
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諸葛孔明を祭っている成都・武侯祠の入り口 |
武侯祠に祭られている諸葛孔明の像 |
夜のお勧め散歩コースは寛窄巷子(広い通りと狭い通りが交わる横町)。清末、民国初年の街を保存し、観光地として整備した一角です。老舗の食べ物屋や骨董の店が並ぶ中に、現代風のバーもあり、にぎわっていました。その中に、日本で言えば高級料亭があり、そこで開かれた宴会に招かれましたが、部屋には書画骨董がしつらえられ、料理にも盆栽風のデコレーションあり、凝った大皿ありで、セレブの気分を楽しみました。食事中に胡弓の演奏があり、かぶっている京劇のお面がどんどん変わる道化風の踊りも披露してくれました。
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成都・望江楼公園の入り口 |
望江楼公園もお勧めスポットのひとつです。錦江沿いにあり清代に建てられた望江楼と唐代の女流詩人・薛濤の遺跡が有名で、詩人が竹を愛したとかで230種類もの竹がうっそうと茂っていました。ぶらっと入ったのは金曜日の午前10時前でしたが、既に卓を囲んでいます。竹林の中、大きな容樹の下に数え切れないほどの真四角のテーブルと竹製のイスが無造作に置かれ、あちこちでマージャンが始まっていました。ほとんどが定年退職した高齢者だと思いますが、みなさんはつらつとしています。
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成都・望江楼公園で耳掃除をしてもらう筆者 |
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こんなにある耳掃除の道具、道具の下に見えるのは音叉 |
四川省は昔から豊かで、気候も穏やかで「天府」といわれてきました。そのせいか四川人は楽天的でゆったりしているように見えます。公園で憩う人々もあわてず、のんびりの典型でした。