涼を求めて野鴨湖へ
暑熱に包まれた北京を脱出して、市街地から約100キロ離れた「延慶県野鴨湖湿地自然保護区」で涼を求めました。
「野鴨」(ワイルド・ダック)と聞いて、先ず、北海道の美唄市郊外の宮島沼を思い浮かべました。渡り鳥の中継地として、毎年、春と秋にはメーンのマガンとカモの仲間を含めて数万羽が飛来しています。空が埋まるほどの壮観で、ヒッチコックの「鳥」を思い出させますが、筆者には運転していた愛車が瞬く間にフンまみれになった記憶の方が鮮明です。
さて、野鴨湖に来て見ると、夕日を浴びて、水鳥が湖水を団体で泳いでいました。係りの人によると水鳥はカモで約1000羽いるそうです。筆者は渡り鳥の中継地だと思い込んでいますから、「最盛期は何羽ですか」と聞きました。係りの人は私の勘違いに気が付いて、「ここにいるのは飛べないカモですよ」と、観光用に飼育しているカモだということを説明してくれました。
それならば「北京ダックですか」と聞いてみました。係りの人はあきれた顔で「北京ダックは填鴨(ティエン・ヤー)といって、肉用のアヒルにえさを口から押し込んで短期間に太らせるのです」と、姿かたちは似ていても役割が違うことを教えてくれました。どおりで、ここのカモはヤセ型なのだ。納得。
野鴨湖保護区は総面積6873ヘクタールあり、そのうち湿地は3939ヘクタールだそうです。北京市唯一の湿地鳥類自然保護区で、264種類の野鳥が生息し、国家一級保護鳥類のナベコウ、イヌワシ、ノガンも見られるそうです。公園内には「湿地学校」が設けられ、野鳥の生態観察に無料で開放さているそうだ。
今回お目にかかったのは、「野生の鴨」ならぬ「野原で飼われている鴨」たちだけでしたが、えさを求めて、尾をふりふり歩き回る様子を見るのも愉快でした。平日でしたので、家族連れもゆっくり涼感を楽しみ、子どもたちを「放牧」していました。
夕暮れ時、飼育係がこぐ小船をカモが取り囲む構図は一幅の絵のようでした。
島影均 1946年北海道旭川市生まれ。 1971年、東京外国語大学卒業後、北海道新聞社に入社。 1989年から3年半、北京駐在記者。 2010年退社後、『人民中国』の日本人専門家として北京で勤務。 |
人民中国インターネット版 2011年6月29日