ゆったりが第一、四川人気質
島影均 1946年北海道旭川市生まれ。1971年、東京外国語大学卒業後、北海道新聞社に入社。1989年から3年半、北京駐在記者。2010年退社後、『人民中国』の日本人専門家として北京で勤務。 |
四川省の省都・成都市の郊外にある望江楼公園で目にした光景です。5月下旬のある金曜日の午前中、出張のついでに12元(約170円)の入場料を払って、ぶらっと入ってみました。錦江沿いにあり清代に建てられた望江楼と唐代の女流詩人・薛濤の遺跡が有名で、詩人が竹を愛したとかで230種類もの竹がうっそうと茂っていました。
堤防の上に張られたテントの下、竹林の中、大きな榕樹の下に数え切れないほどの真四角のテーブルとイスが無造作に置かれ、あちこちで既に戦闘開始です。中国では日本のマージャン牌の倍近くある大ぶりの牌を使います。男女半々でしたが、ほとんどが引退組でしょうね。昼どきが近づくとどんどん増えてきます。よく見ると、トランプをしているテーブルもあれば、女性4、5人が持参のおやつを食べながら、万国共通の「井戸端会議」を開いていました。
竹林のあちこちにあずまやがあり、そこでは、石の欄干の上で、酒盛りも始まっていました。大衆の酒として有名な「二鍋頭」を2、3人の男たちがちびちびやっていました。
お茶売りが来ましたので、マージャン卓に同僚と2人で座り、お茶を飲みました。500人以上がマージャンを楽しんでいるとは思えないほど、静かでした。しばらくすると、「チーンチーン」という音が聞こえてきました。耳掃除のおばさんでした。最近、日本では耳掃除をする理髪店が減っていますから、直ぐに頼みました。キャップライトで耳の穴を照らしながら、何本かの掃除用具を使って、きれいにしてくれました。片方の耳が終わると、、「チーンチーン」の振動で鼓膜マッサージ。あの音は楽器の音合わせに使う音叉でした。
マージャンの合間にお茶を飲み、耳掃除をするお客さんがいるのでしょう。日本人だと知ると、耳掃除のおばさんは「去年は日本人の観光客がたくさん来ていたよ。今年は大地震でお気の毒だね」と、心配してくれました。
猛スピードで高齢化が進んでいる中国では、2030年に65歳以上の人口が総人口に占める割合が日本を追い抜き世界一になると推定されています。さらに2050年になると、高齢人口は4億7300万人に達します。中国人の3、4人に1人は高齢者になる計算です。
公園で耳掃除をしてもらいながら、こうした光景が高齢社会なのだなろうな、と思いました。
四川省は昔から豊かで、気候も穏やかで「天府」といわれてきました。そのせいか四川人は楽天的でゆったりしているように見えます。公園で憩う人々もあわてず、のんびりの典型でした。ただ、毎日、同じメンバーでマージャンをして飽きないのかな、と余計な心配もしてしまいました。
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緑陰マージャンを楽しむ四川人。まるで「高齢社会」モデル地区(写真・王衆一) |
人民中国インターネット版 2011年7月