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「世界の工場」が「幸せ」作りへ

王征=文

福建省福州市の低所得者向け住宅の建築現場。販売価格と家賃が低価に設定されている(新華社

「世界の工場」——いつの間にか中国はこう呼ばれるようになった。2010年の国内総生産(GDP)は39兆8000億元で、世界第2位に躍進した。だが、1979年からこれまで年平均ほぼ2桁だった成長率を、今後五年間の目標でははるかに低い年平均7%とした。この数字には、創立90周年を迎える中国共産党の「幸せ」な社会作りへの決意と知恵が込められている。

「GDPはほぼ倍増、穀物生産高が連続五年増加、100年に1回といわれる国際金融危機を克服し、世界に先駆けて成長を回復させ、北京五輪と上海万博も開催……」、中華人民共和国史の編さん・研究を担当する中国社会科学院朱佳木副院長は、過去5年間の出来事を挙げ、政策の正しさを指摘。

「改革開放」以来、政府投資が主導する経済成長モデルのもとで、国家が比較的多くの収益を得て、中国経済規模の急速な拡大につながってきた。

一方、こうした成長モデルは、分配の不均衡、消費の不足など多くの問題も中国にもたらした。社会の富を少数の人々に集中させ、所得格差は分配の不平等さを測る指標、ジニ係数が示す危険水域にせまりつつある。その上、社会矛盾も激化する傾向が見られる。「GDPではなく、幸せがほしい」という国民の声が強まっている。

こうした事態に関して、山西省左権県寒王郷の段崴副書記は「GDPばかりではなく、住民の満足度も幹部の評価基準の一つとなっている」と説明し、国家の政策が「以人為本(人間本位)」に変わりつつあると話す。

これから5年間の方向を決める第12次五カ年規画(2011~2015年「十二・五」)でも、国民収入の増加幅をGDPの成長率以上に定めるなど、国民生活重視の姿勢を打ち出した。財政支出に占める医療、社会保障、住宅、雇用など国民生活にかかわる分野の割合も増えた。温家宝総理は国民生活の問題が政策の「出発点であり、着地点でもある」と強調する。

「国民生活の改善は社会矛盾を緩和するためだけではない。今は社会問題と経済問題が重なっている。国民の収入を増加させ、政府が医療、保障住宅などの公共分野に力を入れて消費を確保し、投資主導から消費主導へと成長モデルを転換させることは、中国の今後30年を支える戦略的選択だ」と、中国(海南)改革・発展研究院遅福林院長は言い切る。

だが、「失業率を抑えるには、高い成長率を維持することが必要。そのため、現状では、今までの投資主導の成長モデルに頼らなければならない部分もある」と、北京大学国際経済学李継民講師は指摘する。

大きな方向で一致すべき成長率、国民生活の向上、成長モデルの転換が、矛盾するという現状のなか、中国が3者のバランスをとりながら、「十二・五」では、年平均成長率目標を7%に決めた。

今年の7月に中国共産党は創立90周年を迎える。政権の運営能力が高まり、「幸せ」な社会作りへ確実な一歩を歩き出した。(『人民中国』2011年第6号より)

 

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