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太極拳の師に出会い大病克服

文=柴田文洋

僕の中国での生活に関して、日本の皆さんに報告することがあるとすれば、それは、一生を通してもしくは命を懸けて恩を返したいと思う方々と出会えたことです。

先天性すい胆管合流異常症という病気、それに伴う比較的大きな手術(胆のう、胆管切除、小腸の五分の二切除)によってさいなまれて来た体が、太極拳の練習と漢方薬の治療によって、今、奇跡のような回復を遂げつつあります。

太極拳の段俊先生、漢方の王文友先生は、僕にとって命の恩人と言っても過言ではないでしょう。今回は段俊先生に太極拳を学んでいることについて紹介させていただきます。

2006年、北京に来てすぐ段先生に習い始めました。段先生の師である馮志強先生は陳式太極拳の名手としてとても有名で、中国に来る前から、健康を回復するため、馮志強先生の所(地壇公園)で習おうと決めていました。

思い出があります。来てすぐのこと、北京の冬は想像以上に寒く、凍えそうになっていたら、段先生は御自分の服を一枚脱いで僕に貸して着せてくださいました。

太極拳の最大の特徴であり、またとても難しいのは、「放松」というリラックスを絶対的に重視するところです。習い始めて、なかなかできずにいたところ、段先生は「站桩功」をするように勧めてくださいました。これは、太極拳の基本となるもので、立ってする禅と理解すればいいでしょう。けれども、本当に正しい姿勢でこれを行うのは、簡単なことではありませんでした。

季節が変わり、夏が始まろうとする頃になっても、まだできずにいました。けれども、ある日のこと、練習していて、ふと何とも言えない気持ちの良さを感じました。そして、ベンチに座り、休んでいると段先生がおっしゃってくださいました。「さっきのお前の站桩功は見事だったぞ。俺、おしゃべりしながら見てたんだぞ」。その瞬間は、僕にとって一生のうちで一番うれしい瞬間でした。僕ができずに、七転八倒しているのを、段先生はずっと黙って見守ってくださっていたのです。

習い始めて一年たった頃のことです。段先生は僕があまり丈夫でないことに気づかれ、病気を治すための練習メニューを新たに考えてくださいました。その通りに練習することによって次第に体は回復し始めました。

その2、3年後、段先生は僕が度々ジェットリーや項羽の話をするので、「わかった、考えてやる」とジェットリーの力を使うカンフー(外功)を教えてくださるようになりました。ただ僕の体では、普通の健康な人達のように激しい運動は耐えられません。そこで先生は、そうした武術の激しい運動を太極拳風に改編してくださいました。これだけしていただいて、どうして怠けていいわけがあるでしょう。

けれども、僕がここまでやってこられているのは、周囲に思いやりを持って接してくれる中国の友人達がいるからでもあります。

柴田文洋

 

東京出身。首都師範大学歴史学院博士課程に在籍。2006年より心意混元陳式太極拳を学び始める。第二代伝承者、段俊先生に師事、直伝弟子に。他に五龍拳、形意拳なども学ぶ。

 

2007年、段先生に直伝弟子にしていただいた日

 

人民中国インターネット版 2012年5月

 

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