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4人の女友だちの愛と冒険『小時代』

文・写真=井上俊彦

ここ数年、興行収入急上昇の勢いは止まらず、ますます多くの作品が公開され、さまざまな話題が生まれている中国映画です。そこで、このコラムでは地元・北京の人々とともに映画館で作品を鑑賞し、新作や映画界の話題を紹介していきます。同時に、そこで見聞きしたものを通して、北京の人々の生活も感じ取っていければという姿勢で映画館通いをしていきますので、お付き合いいただければ幸いです。

人気小説家が自ら監督し大ヒット

出張などのため、また間が開いてしまいました。すみません。その間に1年も折り返し点を過ぎてしまい、上半期の全国興行収入が発表されました。それによると、1月から6月までで興行収入はすでに約110億元に達しているそうです。この数年と同じく年率で20~30%の成長が続いているようです。一方、この数年との違いは国産映画の健闘ぶりで、約69億元と、海外作品の約41億元を大きく上回っています。トップの『西遊降魔編』の約12億5000万元を筆頭に、国産映画ベスト10に入った作品はすべて2億元を越える興行成績です。

そんな中、最新の大ヒット作となっているのが、人気作家の郭敬明が自らの同名長編小説を映画化した『小時代』です。公開16日間で興行収入4億5000万元を突破しました。物語は流行最先端の上海を舞台にしています。林蕭(ヤン・ミー)ら4人は同じ大学の宿舎に住む高校時代からの親友。ある日、林蕭は著名ファッション雑誌の編集部に実習生として採用され、そこでクールな編集長の宮ミン(リディアン・ヴォーン)や奔放な作家の周祟光(チェン・シュエドン)と出会い、高校時代からの彼氏簡渓との関係にも微妙な変化が生まれます。そしてクリスマス、林蕭が現場を任されたファッションショーの日に思いかげない事態が発生します……。

人気女優のヤン・ミーを主役に、クー・チェンドン、アンバー・クォ、クォ・ビーティンら台湾地区の人気アイドルら配した青春もので、友情、恋愛、仕事での成功など、若者を取り巻くさまざまな要素が盛り込まれたさわやかな物語です。しかし、ヒットとは裏腹に前回ご紹介した『天機-富春山居図』などと並べて、「“爛片”(ダメな映画、くだらない映画の意味)があふれて中国映画は危機だ」というようなコメントがあふれています。

独り歩きする“爛片”の批評

私はこの作品の公開当初は出張中で、丸々半月を過ぎて見に行きましたので、先にたくさんの映画評やネットのコメントを見ていましたが、それらの批判ほどひどい出来だとは思えませんでした。作家が監督をしたことで、自分の作品への思い入れが強すぎるかなという部分はあるかなとは感じますが、だからといってとても見るに耐えないという作品ではないと思います。親友4人の個性の描き分けもしっかりしていますし、この作品を見て感動する女子高校生や大学生は少なくないだろうなと思わせるものがありました。

面積3700平方メートル、8つのホールに座席数1200以上を有する大型シネコン。映写装置や音響装置にも最先端のものを使うなど、設備も充実

場所柄子ども連れも多い。会員制度充実に特に力を入れていて、さまざまな割引や優待があるだけでなく、ポイント制度から誕生日にはプレゼントが用意されるなどきめ細かなサービスをしている

最近評判になった『致青春』『中国合夥人』などで描かれた庶民派の青春像とはかけ離れた、トレンディードラマの劇場版のようなおしゃれで上流な世界観が反発を招いたのか、「これは私たちの時代を描いていない」というようなコメントもありました。しかし、もともと少女たちの夢を描く物語ですし、そこを批判するのはどうかなと思います。ストーリーの矛盾をいちいち批判するコメントもありましたが、若い女性向けの恋愛・立志物語に「邏輯」(ロジック)を厳しく求めるのはどうかなと思います。もちろん、技術的に改善の余地はあるかもしれませんが、初監督作品として暖かく見てあげることはできないのでしょうか。どうも、このところ“爛片”の言葉が独り歩きしているように思えてなりません。最近では『不二神探』(ウェン・ジャン、ジェット・リー主演)も批判にさらされましたが、私はとても楽しく見ました。

ロビーや通路には映画のポスターやディスプレーが数多く飾られていて、映画を見に来たワクワク感を盛り上げてくれる。『小時代』の大きなディスプレーも発見

巨大なショッピングモールの敷地内では、フリマらしいイベントも開催されていて、映画館同様家族連れでにぎわっていた

それより最近私が気になっているのは、映像制作現場を舞台にした作品がやたら多いことです。今年になって私が見たものだけでも『愛情不NG』『越来越好之村晩』『阿嬤的夢中情人』『変身超人』『北漂魚』『大片』などがありました。大量に作品が作られている現在、監督や脚本家が手近な素材にしか目がいかなくなっているとしたら、そちらの方が問題ではないかと思います。

ちなみに、大ヒットを見越してか、同時に『小時代2』が制作されており、8月公開とのことです。昨年の『太極』と同じパターンですが、どうなりか。

【データ】

小時代(Tiny Times)

監督:グォ・チンミン(郭敬明)

キャスト:ヤン・ミー(楊幂)、アンバー・クオ(郭采潔)、クー・チェンドン(柯震東)、クオ・ビーティン(郭碧婷)、リディアン・ヴォーン(鳳小岳)、チェン・シュエドン(陳学冬)

時間・ジャンル: 116分/愛情、友情

公開日:2013年6月27日

 

新華国際影城

所在地:北京市海淀区大鐘寺中坤広場C座3階

電話:010-82511616

アクセス:地下鉄13号線大鐘寺下車徒歩5分、A出口を出て目の前のショッピングモール中坤広場のC座3階

 

 

プロフィール

1956年生まれ。法政大学社会学部卒業。テレビ情報誌勤務を経てフリーライターに。

1990年代前半から中国語圏の映画やサブカルチャーへの関心を強め、2009年より中国在住。

現在は人民中国雑誌社の日本人専門家。

 

人民中国インターネット版 2013年7月15日

 

 

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