新春特別企画【中国電影之旅 浙江編】
寧波 『捜索』『道士下山』
舟山から都市間ライナーのバスで約2時間半、寧波に到着しました。大監督のチェン・カイコー(陳凱歌)は、最近の3作でいずれも寧波とその近辺でロケを行っています。どういう経緯かは存じ上げませんが、寧波が気に入っているのでしょう。そこで、まず訪れたのは『捜索』(2012)でワン・ルオダン(王珞丹)、ヤオ・チェン(姚晨)が勤務するテレビ局の建物とされた寧波博物館です。この作品もコラムで紹介したことがありますので、詳しくはリンクをご覧ください。ネットによる暴力という社会問題をエンターテインメント化した作品は、特に若者たちにリアリティーがあったようで、たいへんヒットしました。私は寧波を訪れてみて、北京や上海ではなく寧波という規模の都市を選んだことで、ネットの影響力のクローズアップに成功していると改めて感じました。
http://www.peoplechina.com.cn/home/second/2012-07/05/content_464911.htm
テレビ局内のシーンで使われた博物館メーンホールの階段 |
その寧波博物館は市政府の庁舎を含む官庁街にあります。2008年に開館した博物館の建物はとてもモダンですが、正面の壁には明・清代のレンガが使われるなど、新しさと伝統をミックスさせています。せっかく来たのですから軽く展示も見ていこうかと入場しましたが、寧波の歴史を紹介するコーナーだけで見学に2時間を要し、あっという間に閉館時間になってしまいました。というのも、その歴史のあちらこちらに日本との関係が示されていて、どれも興味深く立ち去りがたかったためです。遣唐使や求法の僧侶、元寇や倭寇、勘合貿易から水戸学に影響を与えた朱舜水まで、もう日本と関係のない展示の方が少ないくらいなのです。高校の歴史の授業では、中日の交流について特定の都市まで強く意識しませんでしたが、ここで改めて寧波と日本の交流史の深さに触れ、いささか驚きました。
博物館の建物 |
【TIPS】102路、126路など多数の路線バスが通っており、寧波博物館で下車すれば建物が見えるはず。開館時間は9:00~17:00(月曜日休館)。入場無料だが、安全のため入口でライターなどは廃棄させられる。
保国寺 |
寧波では同監督の最新作『道士下山』(2015)のロケが行われた場所にも行ってみました。この作品は、ワン・バオチアン(王宝強)演じる道士が山を下り俗世間に出て、さまざまな人に出会い、人間の良い面、醜い部分を知っていく物語で、公開時には独特の作品に対してさまざまな議論がなされました。その中で、物語後半の重要なシーンが撮影されたのが保国寺でした。ここは市の北郊にあるため、市内から地下鉄とバスを乗り継ぐ必要がありました。寧波市内は大きく発展しており、宿泊したホテルに近い天一広場など市の中心部はすでに北京や上海と遜色ないイメージでしたが、郊外に向かうバスは路面が悪いためガタガタと大きく揺れてスピードも出ず、窓から見える民家には粗末なものが多い印象でした。保国寺に行かなければ、こうしたことにも気づかなかったと思います。到着した保国寺の各建物は歴史を感じさせる重厚なものでした。それもそのはず2013年に創建1000年を迎えた古刹なのです。物語の中では杭州の霊隠寺として寧波の保国寺と天童寺の景色をミックスして使ったようです。アーロン・クオック(郭富城)が技を見せる背景の塔などは天童寺ではないかと思います。それでも、苔のむした境内にたたずむと、本当に道士が出てきそうな雰囲気です。ま、道観ではなく仏教寺院なわけですが……。
境内のいくつかの場所が撮影に使われたようだ |
【TIPS】
地下鉄2号線の倪家堰で332路のバスに乗り換え、終点の保国寺下車、約50分。入場料は20元。入口左手の階段と坂道でけっこう登る必要があるが、建物や景色は美しく、登る価値は十分にある。