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圣女

 

山口 真弓

「よく働き、よく食べ、よく笑う」

これが私が彼女に抱いた最初の印象だった。彼女は私が大学の時に知り合った中国人だったが、中国人だということを忘れてしまうくらい日本語が上手で彼女といるととても元気になり、一緒にいて楽しかった。そんな彼女と久しぶりに連絡をとった時のこと、彼女がふと私に溜息まじりにいった

「我现在已经是剩女了」

私は彼女が「剩女」という言葉を使った時、だいたいの日本語の意味を知っていたので、すぐに笑いながら「『剩女』だなんて大げさだな、まだ若いし、結婚していなくったって普通でしょ」といった。実際、彼女は私と2歳しか年齢が変わらず、別に結婚に焦るような歳でもないと思ったからである。彼女は「うん、そうだね」といい、そこでその話題は終了したが彼女のそっけない言い方は私の頭の隅に記憶としてぼんやりと残った。それから間もなく彼女はお見合いで恋人を見つけ、交際期間もほとんどないまますぐに結婚をした。

しばらくたったある日、ある記事をみた。それはある日本の化粧品会社のCMが、中国で話題となり100万回以上再生されたという記事であった。そのCMの内容は中国人の女性達が「剩女」という言葉にプレッシャーを感じ、もがき苦しみながらも自分の生き方に誇りを持ち社会にそして両親に自分という存在、生き方を認めてもらおうとするCMであった。私はこの記事を読み以前彼女と会話した時をうっすらと思い出した。彼女は口には出さなかったものの仕事が楽しいあまりに、早くお嫁にいかないことを親不孝だと悩み苦しんでいたのではないだろうか。そう考えると彼女に対し、彼女の話を笑い飛ばしてしまった自分が恥ずかしくなり、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。

その後反省した私は「剩女」という言葉の意味について、中国人が結婚に対してどのような考えを持っているのかインターネットで調べることにした。調べていくうちに日本人と中国人では結婚に関してかなり考え方の差異があることを知った。中国人は家系を非常に重視し、永遠に家系が続くことを望むために、結婚を大切にし、結婚が一種の親孝行としての位置にあることが分かった。また同じ中国人でも世代間で結婚に対して考え方にかなりの差があり、両親世代は子が結婚しないことに悩み、子は親がお見合いを進めるのに悩むことがあることを知った。今、中国では多くのドラマや映画で「剩女」を題材にしたものが制作されているようである。

私は今回「剩女」という言葉から言葉の意味だけでなく、中国人の結婚に対する考え方や、中国文化を学ぶことができた。そして何よりも嬉しかったのは同じ女性として「剩女」と呼ばれている中国人女性が、苦しみながらも、社会のプレッシャーにも負けず、自分の幸せを自分で築き、人生を楽しんでいるということが分かったということである。

私も「剩女」だ。今は仕事や趣味が忙しく楽しいうえ、恋人を見つける暇がない。もしかすると私も今は何もプレッシャーがなくても、もう少ししたら結婚について悩み苦しむ時がくるかもしれない。でもそんな時こそ、中国人女性の強さを思い出し、結婚しようがしまいが、自分を見失うことなく人生を楽しみたいと思う。

そう、私達は「剩女」ではない、「聖女」なのだ。

 

人民中国インターネット版2016年9月

 

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