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互いに見つめ合うこと

 

長橋 侑生

私は自身が日本人でありながら、日本人に対して一つ納得できないことがある。

それは我々日本人にみられる強い排外の傾向である。日中関係史の専門家である楊仲揆はかつて、台湾企業のエリートの言葉を引用し、「日本人の団結はただ団結して外からの人を追い払うだけで、いささかも愛の心を持たない」と言った。日本人がもつ強い団体意識と帰属感は時には中国人に対してマイナスイメージをもたらしているのではないだろうか。

私には助けてあげられなかった友人が2人いる。どちらも以前一緒にアルバイトをしていた中国からの友人だ。私のアルバイト先は少し珍しい。一見ごく普通の飲食店だが、雇う側は日本語の会話レベルが日常会話以下の留学生も受け入れ、接客以外の仕事を任せることがある。留学生は皆、生活費を稼ぐためだけでなく日本語力の向上に期待をして仕事をする。もちろんどちらの成果も得られることは確かだ。しかし私が感じるのは我々日本人が彼らを排斥するような言動である。もし彼らの仕事が遅いとチームメンバーは彼らを怒鳴ることがある。もし彼らが何かを間違えるとどこからか溜息が聞こえることもある。

ここでの仕事を辞め、故郷である上海に帰国をした洪さんと、私は今冬に再会した。彼は職場で日本人に何か言われるたび心の中でいつも「じゃあ、あなたには中国語ができるのか、日本人であることがそんなにも偉いのか」と叫んでいたと言う。まったく彼の言う通りだ。私たちは時折、集団の中の一人として存在することで自分たちの言動が外国人にとって非常に不可解であることに気付いていないことがある。

そして、これは私が上海から日本に帰国してまだ間もない頃だった。私が以前と同じアルバイト先に復帰すると、新人として一つ年下の王くんという男の子が働いていた。私は店長と王くんとの間でのちょっとした通訳を任されていたので、彼と一緒に働くことが非常に多かった。もちろんお店が忙しくない時は、まだ日本での生活に不慣れな様子だった王くんと日本での生活について又は上海での私の留学体験についてなど様々な雑談を2人で楽しんだ。しかし、ある日、私は任された仕事を黙々と処理していた最中に、突然キッチンの奥の方から聞こえてきた罵声に対して、震えと、体温の上昇と、目頭がぼっと熱くなるのを身体で一気に感じた。店長が王くんに誤って口を滑らせたのは「お前、日本語が分からないなら自分の国に帰れよ」という一言だった。そして私にはその日、王くんと会話する時間を与えられず、王くん自身も私には特に何も言わないまま数日後、アルバイトを辞めてしまった。

私は王くんを誘い出し、また数人の友人も連れて皆で食事をした。もちろん、その時にアルバイトに関する話題は一切しなかった。悪いのは私たち。そして、強い集団意識は持つくせに、一つの大きな間違いに対し、それはおかしいと主張できない自立性の無さ。日本人の弱点、そして私自身の弱点もここにあると思う。

日本に在住している中国人の中には、「日本は何より清潔だし、礼儀や気遣いの面では中国は日本に勝れるものがありません」などと言ってくださる方がいる。しかし私からしてみると、そのように日本を褒めてくれる貴方の心こそが日本人より優れていますと言いたくなってしまう。何を言おう私は中国人が大好きである。日本は歴史的にみても中国から様々な技術や知恵を模倣してきた。中国なしに今の日本は存在し得ない。現代においてももちろん「どっちが勝っている」ということは言えないし、今後も互いに模倣し合い、高め合っていくべきだと私は思う。私が親しくなった中国人は、すべて私の人生のパートナーであるという認識をこの先もずっと持ち続けていたい。

 

人民中国インターネット版2016年9月

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