People's China
現在位置: 中日交流中日交流ニュース

人生で初めて出会った中国人

 

大久保 弘樹

私は、中学生の時に卓球を始めて以来、卓球がずーっと大好きだ。それは、一人の中国人との出会いがきっかけだった。部活動だけでは飽き足らず、私は先輩に誘われて地元の卓球クラブに入ったのだが、そこでコーチをしていたのが中国人の胡さんだった。胡さんは私が人生で初めて出会った中国人であった。胡さんは卓球のことだけではなく、たまに中国のことや簡単な中国語も教えてくれたのを今でも覚えてる。でも、当時中学1年生の私にとっては、何のことだか分からなくて、日本語を流暢に話す彼女のことを、私は中国人だと意識したことはあまりなかった。私にとっては、いつも笑顔で卓球を教えてくれる、優しいお姉さんだった。そんな彼女が私は大好きだった。

それから高校を卒業して、私は地元を離れて県外の大学に進学した。卓球が大好きな気持ちは変わらなくて、将来は卓球に携わる仕事がしたいと思っていたが、大学で何を学べば良いのかずっと悩んでいた。そんな時に、よくあの頃の胡さんのことが頭をよぎった。私に卓球の素晴らしさを教えてくれたのは、胡さんだから。そうだ、世界で1番卓球が盛んな国、中国の言葉を学ぼうと思い、大学で中国語の勉強を始めた。

中国語をきっかけに、私はたくさんの留学生と出会い、忘れられない経験をした。中国の蘇州に1年間留学をし、その成果を活かして、2014年には、東京で行われた世界卓球選手権大会で、通訳ボランティアとして中国代表選手の通訳も担当した。自分の中国語で憧れの選手のサポートをすることができて、自分の長年の夢が一つ叶った瞬間だった。その時私は、胡さんという一人の素晴らしい中国人との出会いから全てが繋がっているんだと感じた。

中国語を学べば学ぶほど、胡さんにもう一度会いたいという気持ちは大きくなっていた。先日、私は地元に帰った際に、あの卓球クラブを訪れてみた。いつも練習していた体育館に行くと、彼女はそこにいた。私は本当に嬉しくて、中国語で「お久しぶりです、僕のこと覚えていますか?」と言うと、彼女はすごく驚いた様子で、「もちろん覚えてますよ。」と言ってくれた。彼女が子供達に卓球を教える姿は、10年前私たちに教えてくれた頃と何一つ変わっていなかった。私は、「胡さんと出会ったおかげで中国語を始めました。昔教えてくれた言葉『我爱乒乓球』。あの時は何のことだか分からなかったけど、今でははっきりその意味がわかります。胡さんありがとう。」と中国語で伝えた。彼女は泣きながら「本当にありがとう」と言ってくれた。この日のことを、私は一生忘れないだろう。それから私たちは10年ぶりに一緒に卓球をした。中国語を勉強してきて、大変なこともあったけれど、私の人生の道しるべを作ってくれた胡さんと中国語で話をすることができて、今までやってきたことが全て報われたような気持ちだった。

日本に住んでいても、日々たくさんの中国人と出会う。私の大学に留学に来る中国人の留学生、アルバイト先で来る中国人のお客さん、街で道を尋ねてくる中国人。私は、彼らに何ができるだろうかといつも思う。胡さんが私たちにしてくれたように、私も彼らに優しくありたい。今日も私は日本から中国に想いを馳せている。

 

人民中国インターネット版2016年9月

同コラムの最新記事
中国語に耳を澄ます
互いに見つめ合うこと
中国から来た朋友
あの木
わたしが発信する「中国」