私たちから変えていく
古谷恵莉子
近年、中国の国際的な動向がテレビや新聞で大きく取り上げられている。中国と聞いて思い浮かぶのはあの島の問題や九段線の問題である。
また日本で中国人観光客が爆買いをするイメージが強い。これらから自己主張が強く、他国を顧みない国だという印象を受けた。
街中でも中国人に対して、ネガティブな感情を抱くことが多い。
それは銀座での出来事だった。中国人の子ども2人が、公共の花壇に咲くパンジーを摘んでいた。この行動に対して、親は知らん顔。注意をするどころか、その様子をスマホで撮影し、子どもにポーズを取らせていた。
これを見て私は悲しい気持ちになり、中国人はやはりモラルがないとも感じた。
そして周りにいた日本人は睨み付けたり、見て見ぬふりをしたりして通り過ぎた。私を含め、そこにいた全員が関わらないようにしていた。このとき私たちは、日本での常識が中国人にとっても常識だと考え、それを押し付けていた。もし誰かが話しかけて、理解してもらえば、解決していたかもしれなかった。中国での当たり前を日本人が分からないように、中国人も日本での当たり前を知らないのだ。お互いに教え合えるような関係になったらいいと思う。
しかし先月、中国人に対してマイナスのイメージを持っていた私を大きく変える出来事があった。それは羽田空港駅改札でのことだ。
精算機の列に並んでいると、私の前は3人の中国人であった。なかなか列が進まないので覗き込むと、操作方法が分からない様子だった。
私は中国語に自信がなかったので、簡単な英語で話しかけてみた。精算の方法を教えるととても感謝された。別れ際には、何度も何度もお礼をされた。
その時に言葉が通じただけなのに、心も通った気がした。それだけでなく、相手に対して親近感や安心感を持った。初めて日本人も中国人も変わらないのだと思うことが出来た。
また、必ずしも完璧な言葉で伝える必要はないのだと分かった。大切なことは、笑顔と相手を理解しようとする姿勢であることに気づかされた。
そして大学での餃子パーティーの出来事も印象的だった。参加者は中国人が2名、アメリカ人1名、日本人22名であった。目的は主に親睦を深め、中国語で話してみるという体験をすることだ。これをきっかけに、中国人とも打ち解け友達になることが出来た。彼女達は、私の拙い中国語での質問を親身に聞いてくれた。質問に答えるだけでなく、その書き方まで教えてくれた。彼女は日本人の学生より丁寧で真摯な対応をしてくれた。
このように、1対1で実際に話してみることで、中国の印象はネガティブなものから、ポジティブなものに変わった。
また私が偏見を持って、見ていた部分が大きかったことに気づいた。
ニュースやテレビでは中国という国家が引き起こした、国際問題だけが切り取られている。そこだけを見たら自分勝手な国だと思う。けれどそれはある側面にしか過ぎない。メディアが切り取ったその外側を見たい。
“中国人”という言葉で片づけるのではなく関わりのある個人個人で考えたい。一括りにしたくないという気持ちが芽生えた。
そして私たち学生同士の友情が、未来の関係をよりよく変えると信じている。日中の大学生が交流し、仲良くなることによって未来の日中関係はより良いものになるだろう。なぜなら、私たち若い世代の関係性が外交を作り上げると考えるからだ。
また、これらの体験を通して、言葉が通じるだけで、偏見という壁が消えた気がした。言葉を学ぶことは、相手を理解するための大きな役割を果たすのだと痛感した。そのために、私は中国語を勉強している。それを中国と日本をつなぐツールとして使えるようになりたいと考えている。
日本と中国の関係性は、まだ希薄なものに感じる。私たち学生からそれを変えていきたい。