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「学习」と「勉強」

 

 杉本万由

「どうして日本の子どもは勉強しないの?」

このように質問したのは、中国・大連出身の男の子でした。

私は、自分の住む地域で外国から来た子どもたちに日本語を教えるボランティアに参加しています。その活動で今日本語を教えている子が、公立学校に通う中学2年生のA君です。A君は、今年の1月に日本に定住し始めました。なぜかというと、それは父親の教育方針によるものでした。単身日本にいた父親は、日本で暮らしていく中で、中国よりも日本の教育の方がA君の将来にとって良い、と考えたのだそうです。そこでA君を日本に呼び、特色ある教育を行う国立の附属学校に編入させよう、という方針でした。

私のボランティアとしての仕事は、7月に実施される彼の編入試験の対策です。主に試験に課される、日本語の作文とグループディスカッションの指導を行っています。私は彼への指導の中で、中国と日本の違いについて多くのことを学びました。特に印象に残っていることが、「中国と日本の勉強の違い」というテーマでディスカッションの練習をしたことです。まず私が、「中国の学校は日本と比べてどうだった?」と質問しました。するとA君は、「宿題がすごく多くて、みんな放課後も土日もずっと勉強していた。しかも先生が厳しくて、宿題を忘れると授業に参加できなかったし、テストの成績が良い子だけが評価された。」と答えました。A君にとって中国での学校生活は、勉強漬けの日々で本当に大変だったようです。今度は「日本の学校はどう思う?」と質問しました。すると、「宿題が少ないし、先生も優しい。しかも技術・家庭科といったいろんな勉強ができるし、放課後に部活動がある。」と、日本の教育に良い印象を持っているような答えが返ってきました。しかし、「だけど、日本の子どもたちは宿題を平気でやってこなかったり、休み時間に遊んでいたりして、全然勉強していない。」と答えていました。どうやら自分の周りにいる友達が真面目に勉強していない環境に疑問を抱いているようです。だから日本の子どもが一生懸命勉強しないことが不思議で、かつ不満を抱いているようでした。

日本の義務教育は、公立学校と私立・国立学校で大きく差があるのは現状です。しかし、総じて中国と比べて日本は非常にゆとりある教育だと思います。だから今、勉強をする意味が分からず、勉強をしない子どもが増えたことが問題になっています。反対に中国(主に都市部)では、良い学校・良い職場に入り、良い人生を送ってほしいという親の願いから、子どもたちが勉強を寝る間も惜しんで一生懸命がんばっています。ただ、そのため勉強の出来が評価の全てとなっており、子どもに大きな重圧がかかっているという現状があるのです。私は、隣同士の国なのに教育という観点から見るとこんなにも違っている、ということに気づき、衝撃を受けました。

「学」と「勉強」。同じ意味なのに、実際は全然違う。にもかかわらず、中国でも日本でも、自分の国の中だけにいると、自分の受けている教育が全てだと思わざるをえません。だから父親の教育方針で日本に呼ばれたA君が今、中国と日本の勉強の違いや周りの学ぶ姿勢の差に苦労するのも仕方ないことなのです。しかし、彼が今のうちにこの違いに気づけたという点で、とても良い経験していると思います。今日、両国共に、自分たちの国の繁栄を願い、一生懸命子どもたちに教育を行ってきています。けれども子どもたちは今、勉強する意味を見いだせず、勉強に良いイメージを持っていません。だからこれからは、子どもたち自身が日本・中国それぞれの教育の違いや勉強に対して思っていることを知り、お互いに「どうして勉強しているのか」について意見交換しながら考える、そんな関係を両国で築いていきたいと思います

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