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カンニングとごま団子

 

永田香菜子 

拝啓 

お元気ですか。あなたが中国に帰ってからもう5年が経ちます。早いものですね。この間、家族みんなで近所の中華料理屋に行きました。そこでごま団子を食べたのですが、やはりあなたのごま団子には敵いませんね。あの時のこと、覚えていますか。

あれは中学校3年生の時。あなたは1年間だけ一緒のクラスにいました。最初はみんな外国人だからということで、どうあなたと接していいか分かりませんでした。あなたは思ったことをはっきり言いすぎてしまって、クラスになかなか馴染めませんでしたね。私は正直、「中国人」だから分かり合えない、馴染めないのだろうと思っていました。馴染めないのはあなたが「中国人」だからだと思ってしまっていたのです。

そんな時、期末テストで大事件が起きました。あなたはテストでカンニングをしてしまいましたね。あなたはテストのメモを書いた小さな紙を持ち込んで、テストを受けていました。テストを回収するときにそのメモが落ちていて、カンニングが発覚してしまいましたね。私はその前のテストで良い成績を取っていたようだったのに、なぜカンニングをしなければならなかったのかとても不思議でした。その後も何度かカンニング問題があり、あなたはますますクラスから孤立していきました。私もあなたに不信感を抱いてしまっていました。

そんな時、クラスで持ち寄りパーティーをすることになりましたね。あなたは本場のごま団子を作ってきてくれました。いろいろな料理が並ぶ中で、そのごま団子は本当においしかったです。私がおいしいと伝えると、あなたはお母さんに教えてもらって作ったのだ、と嬉しそうに話してくれましたね。このごま団子から私たちのクラスはだんだん仲良くなりました。カンニングについても、中国では成績が全てだからそうしなければ不安だったのだと話してくれましたね。あなたが話してくれたからこそ、私たちは日本でのルールや勉強について考え直せたし、あなたとじっくり話すことができたのです。それからはあなたのカンニングも無くなり、クラスのみんなとたくさん話すようになりました。あなたの成績に対するどん欲な姿勢から、クラス全体が勉強する雰囲気になりましたね。

話してみると、あなたは「中国人」だから理解できないなんてことはなく、一人の友達として明るく優しい人なのだと気付きました。カンニングもテスト勉強を真剣にした上での行動であり、本当に頑張り屋なのだとわかりました。私たちは最初、「中国人」というイメージを介して、いわば色眼鏡であなたを見ていたのです。それでは本当のあなたを理解することはできませんでした。「仲間」だと思わなければ、悪いところばかりが目立って見えてしまうのです。仲良くなれないのも当然ですね。あなたがくれたごま団子は、あなたを「仲間」として見るきっかけをくれました。「仲間」として見ることで、あなたの素敵なところをたくさん見つけられたのです。日本にいる中国人とは友達になれるのに国同士ではまだまだ溝があるのは、「仲間」という同じ土俵に立っていないからなのでしょうね。私は人と仲良くなる時に「○○人」という捉え方は壁になってしまうのではないかと思います。同じ人間として、「仲間」として同じ土俵に立つからこそ見えるもののほうがずっと有意義で、お互いの理解につながると思うのです。

私は今、大学でたくさんの留学生と交流しています。あなたと過ごした1年間があるからこそ、国の垣根を越えて友達がたくさんできました。中国人の友達は二人もできましたよ。あなたのことを思い出していたら会いに行きたくなりました。時間ができたら中国に会いに行きますね。その時はあなたのごま団子をごちそうしてください。ではまた。お元気で。

敬具

 

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