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アニメから始まる

 

 近江麗佳

「日本人一直都是很有礼貌,但是得很假惺惺。」と、任ちゃん(仮名)が言った。私が中国に来て以来最もよく聞かされた、日本人についての意見である。「日本人一直都是很有礼貌」は「日本人はとても礼儀正しいよね」という意味であり、「但是得很假惺惺」は「でも、いつもなんか嘘くさいよね」という意味だ。要は、日本人は自分の本音を隠したがっている、と言いたいのである。

任ちゃんに悪気はなく、彼女の中の一般的な日本人を語っているのだろう。メディアで語りつくされた日本人像と、そこに浮かぶイメージを話しているだけとも言える。しかし、私に言わせると任ちゃんの言葉は結局ステレオタイプの押し付けに過ぎず、日本「人」を正確に捉えているとはとても思えなかった。

私が上海に滞在していた時、“日本人ってケチだよね”“日本人は冷たいよね”“日本って勉強しなくてもいいんだよね”といった内容の会話は、かなり頻繁に耳にした。こうした大ざっぱな「括り」に私が同意できた場面は少なく、むしろ疑問ばかりが募っていた。つまり、「○○人は××だよね」といったかなり安易な民族論が、なぜこれほど浸透し、日常会話に出現するのか、という疑問である。

まったく同じ意味の会話は“日本においても”よく聞く。“中国人ってマナー悪いよね”“服のセンスってダサいよね”“中国人ってきついよね”といった内容である。「情報社会」や「グローバル社会」といわれて既に久しいが、日本と中国が今一つ友好的になりきれないのには、このあたりに理由があるのかもしれない。

任ちゃんだけでなく、多くの人がなぜこうした「偏見」を持つようになったのかを考えてみると、根本的な原因としては、メディアからの情報をそのまま受け取ること、ごく一部の人がネット上に書き込んだ日本(あるいは中国)への悪口を読んで真に受けること、与えられた情報のみを正しいと判断してしまうということなどが挙げられるだろう。日本人や中国人の間違った「定義」を作成し、それがネガティブなイメージの形成につながっていくのだ。

こうした現状を打開するのは容易なことではなく、「特効薬」はないのかもしれない。しかし、改善できる部分もあるはずだ。そして、ここで私が提案したいのは、アニメを媒介にした両国の交流である。

私が上海で生活していたとき、周りの友達にはアニメ好きが多く、日本のアニメについて熱く語っていた。アニメの中での学校生活に憧れたり、制服に憧れたり、文化にも興味を持つようになったり、一度でもいいから日本に行ってみたいとも言ったりして、来日を希望する人も多かった。また、他にも最近、“一人之下”というアニメ作品が話題を集めている。作風や絵柄、キャラクター名、ストーリーなどは中国が担当していて、声優や音楽などは日本が担当している。つまり、日中が共同制作した作品であり、日本で人気なだけでなく、中国でも好評だ。

こうしたアニメ文化を始点とすれば、両国がお互いに自分たちの意見を交換したり、交流も活発化させられるのではないかと私は考える。アニメはお互いに自分たちの文化や、自分たちの国を紹介するとてもよいアピール方法だと思うのだ。

私は中国人の母を持ち、日本人の父を持つ、いわゆる「ハーフ」である。中国にいたときは「日本人」扱いされ、日本では「中国人」として扱われてきた。誤解や偏見は日常茶飯事で、私の居場所はどこにあるのだろうかと悩むこともままあるが、一方で、日本と中国両方を知る私だからこそ言えることもあるのではないかと考えている。そしてアニメ文化での交流は、未熟な私が今言える、精一杯のアイデアなのだ。私は今後、勉学に励み、日本と中国の友好関係を深める事に貢献していきたいと切に願っている。

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