People's China
現在位置: 中日交流中日交流ニュース

かけがえのない財産

 

石井旭実

小学生のころ、中国製の食べ物に異物が入っていて問題になり、テレビで連日報道されていました。そんなこともあり、私の中で中国のものは粗悪品、空気は汚いと、とても悪い印象になっていて、大嫌いでした。中国のことがニュースになると「だから中国は。」と思っていました。中国に行くことはもってのほか、中国製の物を使うのも嫌でした。

月日は流れ、私は高校生になりました。私の高校には中国にルーツを持っている生徒が多く通っています。そこで初めて中国を身近に感じ、私たちと一緒に体育祭や文化祭など行事を楽しむ彼らからテレビを見たときに感じた悪い印象は感じられませんでした。すると、今まで「やっぱり中国は。」と思いながら見ていたニュースを少し真剣に見るようになりました。相変わらず、いいことはあまり報道されておらず、PM2.5など、悪いニュースばかりでした。でも、「なぜ悪いニュースばかりなのだろう。中国にもいいところはあるのでは。」今まで思ったことがない疑問が芽生えてきました。

そして2年の冬、中国研修旅行の募集を知りました。何も考えず「行きたい。」と担当の先生に伝えました。どんな国なのだろうといろいろ想像し、テレビからの情報ではなく、自分の目で見てみたいと思いました。引率の先生が授業中、「中国にはトイレットペーパーを流す習慣がない。隣にあるごみ箱に捨てる。」とおっしゃいました。みんなは「ありえない。汚いよ。」と言っていましたが、私は文化の違いって面白いな、そう思いました。他にどんな違いがあるのか知りたくなりました。

念願かなって、中国の大連、瀋陽に行きました。空港に着くと、中華料理の匂いがしました。日本にはない匂いでした。瀋陽外国語学校も訪問しました。そこには日本語を学んでいる生徒さんがたくさんいて、しかも流暢な日本語で話しかけてくれて驚きました。ですが、私は難聴なので言葉が聞こえず、会話が難しいときがあります。昔から、聞き返すと「面倒だなあ。」といった顔で返されることも多く、辛く思うことがありました。だから、彼らも私には話しかけてくれないだろうと思っていました。しかし、彼らは明るく、積極的に声をかけてくれました。何度聞き返しても丁寧に、ゆっくりと話してくれ、とても感動しました。中国に行くと、言葉が通じない上に、耳が聞こえない私をあまり歓迎してくれないと思っていましたが、その中国人に対する思い込みはいい形で裏切られました。中国人はただ騒がしい、マナーが悪いだけの人たちだと思い込んでいた私にとってこの気遣いはとても驚きで、とても嬉しかったです。異国の地に暮らしていても、優しさは万国共通だと思いました。

また、彼らの紹介で中国最大の地下街も行きました。そこはとても賑やかで、お祭りのような雰囲気で、それが中国の日常なのだと知りました。日本にくる中国人が大声で話す理由がわかった気がしました。噂のトイレも経験できて、楽しかったです。

今回の研修で学んだことは、人からの情報は鵜呑みにしてはならないこと、何でも自分の目で確かめるということです。私は今までメディアからの情報を鵜呑みにして、中国は悪い国だと決めつけていました。ここには思い込むことの危険性や怖さがあると思います。今まで私が見ていたのは中国という国でした。研修を通して、私は国ではなく、その国の人を見ることの大事さを学びました。騒がしかったり、少し性格が大雑把なところもありますが、交流していた時に私が「日本人です。」と言うと日本のアニメが描かれたスマートフォンを見せてくれ「日本大好き。」と言ってくれたり、聞こえない私にもやさしく接してくれたりと、中国人のいいところを見つけられました。このことを学べた経験は私にとってかけがえのない大きな財産となりました。

同コラムの最新記事
異国で会ったベストフレンズ
つながりを「友好」に
文化の違いを越えて
尊敬する友人とわたし
日中の学生の勉学に対する意識の違い