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−手紙− 彼女が私に気付かせてくれたもの

 

 赤松咲

私は、中国留学中に知り合った私の親友、阿秀という中国雲南省に住む女の子と文通をしている。去年の7月に帰国してから、もう1年となるが、彼女と交わし合った手紙の数は十数通に及ぶ。中国雲南省の昆明にある彼女の家から、私の住む東京までを旅してくる彼女の手紙を、私はいつも心待ちにしている。私は家に帰るとき、いつもポストをのぞいてしまう。彼女からの手紙が届いているかどうかが、いつも気になってしまうのだ。「お母さん、私に手紙きてなかった!?」と毎日母親に確かめてしまう。その度、「まだきてないわよ。」と返されるほど、私は阿秀からの手紙が届くのが楽しみで仕方ないのだ。

昆明の彼女の家から、東京まで手紙が届くのに約二週間かかる。連絡をとりたいのならば、we chatのほうが数倍速いし、今ならテレビ電話もできるので、わざわざ手紙を書かなくても、と思われるかもしれない。けれども、私はあえて手紙を書くことにしている。手書きのほうが文字に温かみが出るし、言葉もずっと丁寧になる。また、手紙だと、季節に合わせて便せんを選ぶことが楽しくなる。この前彼女に送った手紙には、ある写真を添えた。私の祖母の家にあったお盆のちょうちんがあまりに美しかったので、彼女に見てほしかったのだ。便せんには、海をイメージさせるブルーの色調にすいか(西瓜)の絵が描いてあるものを選んだ。そして手紙の中には、赤、青、黄、白など色とりどりの美しいちょうちんの写真を入れた。

このように季節に合わせて便せんの色や添える写真をかえるなど、ちょっとした工夫を加えることができるのが手紙の面白いところだ。手紙は書くときだけではなく、書く前の準備期間も楽しい。例えば、私は大学に行く途中の電車や、家でテレビを見ている時や、ご飯を食べている時など、あらゆる時に彼女への手紙の内容を考える。「あ、このこと面白いから、手紙に書こう。」と思った事柄は、その度に専用のノートに書き留めておく。手紙を書くときに、そのリストの中から何が面白いかを選ぶためにそうするのだ。

ある手紙には、こんな風に書いたこともある。ある日、私がテレビを見ていた時、世界各国の国々の人々が集まり、その国に特殊な習慣について述べたり、外国人からは理解できない日本の変わった点について意見を述べ合う番組がやっていた。そこである韓国人の面白い話を聞いたのだ。韓国人は友人のうちに遊びに行くと、あることをする。それは何かというと、その家でうんちをすること。韓国では人の家でうんちをすることは良いこととされており、そのうんちはその家に富をもたらすといわれている。これは面白い、と思いリストに書き留め、阿秀に手紙を書いた。

「我看电视候,听了一个有意思的习惯。在韩国去朋友家的时候,他们经常大便。因为他们的大便带来财富。こう書いた後に、日本では人の家でうんこをすることはあり得ないが、中国ではどうだ?と聞いてみた。それから、約二週間経って、彼女から手紙がきた。「你写的韩国的习惯,很有意思!在中国当然没有那样的习惯!」彼女によれば、中国にはそのような韓国の変わった習慣はもちろん無いとのことだった。私はこの返事をみて思わず笑ってしまった。

阿秀へ手紙を書き始めてから、私は日常がとても楽しくなった。何故なら、ほんのちょっとした事や、どうでもいいと考えていたような事にも注意を払うようになったからだ。当たり前と思っていた東京での日常も、彼女に伝えたいという気持ちから、新鮮なものへと変わっていった。彼女は本当に面白いことは日常に溢れているということを、私に教えてくれた。これからも、中国の遠く離れた私の親友に私の日常の楽しみを伝えるため、手紙を送り続けたい。

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