中国のAI業界で活躍する「文系」人材が増加中
AI業界が発展するにつれて、AIプロダクトマネージャーやAI法律顧問、AI教育カリキュラムデザイナーなどが登場し、以前は暗黙の了解で「理系の業界」とされていた同業界で今、文系出身の人材が存在感を強めている。
「業界の垣根」を越えてAIの分野に足を踏み入れた文系の人材は、この競争の激しい業界でどのように自らの足場を築いているのだろうか。
大学で漢語(中国語)文学を専攻した竹子さんは今、「AI+教育」のスタートアップ企業で、企業・事業機関の従業員や小中高生向けのAIトレーニングカリキュラムを設計している。そんな彼女は「複雑なAIに関する知識を普通の人が理解できる内容に変え、基礎レベルが異なる受講者がAIツールを使いこなすことができるようサポートするのが私の仕事」と話す。
日用消費財業界から業種違いのエンボディドAIのスタートアップ企業に転職し、広報・宣伝の仕事をしている十佳さんは、AI業界の発展の見通しが明るいことに目を留めたという。「宣伝動画撮影やPR文書作成、展示会見学、メディアリソースのマッチングなどは、本質的には、商品のセールスポイントを掘り起こし、より多くの人に当社の技術や商品を知ってもらう広告・マーケティングのアプローチだ」と話す。
新たな注目業界となっているAI業界には今、人々の想像をはるかに上回るスピードで人材が集まっている。中国のある求人サイトが発表した「2025年AI人材流動報告」によると、今年1-7月期、AI関連の新たな求人は11倍以上に増加し、寄せられた履歴書の量も12倍に激増した。
技術主導のAI業界において、文系の人材はどのように自らの足場を築いているだろうか。それは、文系人材ならではの専門的能力、表現力、コミュニケーション力、共感力といったソフトスキルと関係がある。
あるIT系企業において、労働法大規模AIモデルの法律顧問をしたことがあるという劉心さんは、「法律の適用は高い柔軟性が求められる仕事で、時間をかけて経験を積まなければならない。現時点で、AIが生成するコンテンツは依然として法律専門家の修正を必要としている」と説明する。
表現力やコミュニケーション力、共感力も、文系人材がAI業界において足場を築くうえで「プラスポイント」となっている。竹子さんは、「受講者のためにカリキュラムの内容を設計する際、ユーザーの立場に立って、『何を一番学びたいと思っているのだろう』と繰り返し考えなければならない。こうした共感力や教育の経験がなければ、より実際のニーズに合ったカリキュラムを設計することはできない」と話す。
中国人民大学就業・民生研究院の周広粛副院長は、「新技術が進歩するにつれて、技能だけを重視する雰囲気は薄れており、市場では、複合能力人材のニーズが高まり続けている。理系と文系だけに分ける従来のスタイルを打破することを試みるべきではないか。人材に『文系』や『理系』といったレッテルを貼る必要はなく、それぞれの得意分野やポテンシャルを尊重するべきだ。また、高等教育機関や職業教育機関は、リベラル教育とAIツールの普及的学習を強化し、学科間の壁を取り除くよう取り組む必要がある」との見方を示している。(編集KN)
「人民網日本語版」2025年11月19日