中欧班列:ユーラシア大陸の経済を支えるバリューチェーンへ
中国物流研究会幹事 福山秀夫
今日は過去10年間の一帯一路イニシアティブの発展成果の課題について、国際物流の観点からお話をしたいと思う。
ご存知のように、一帯一路の「一帯」は「シルクロード経済ベルト」として13年9月にカザフスタンで、「一路」は13年10月にインドネシアで「21世紀海上シルクロード」としてそれぞれ提唱された。対象分野は経済政策、インフラ整備、投資貿易、金融、人的交流の5分野にわたり、構想に含まれる国は65か国となっている。考え方の枠組みとしては、東アジアと欧州の2大経済圏を繋ぐ陸上海上大通路建設が、国際物流の視点としては重要だと考えている。
シルクロード経済ベルトとは、経済ベルトの延伸によって中央アジア各国の貨物を太平洋の港まで運ぶ物流ルートを指す。2016年に「中欧班列建設発展計画」が出され、「中欧班列」という名称がこのとき初めて使われた。この計画では、中国、欧州、一帯一路沿線国におけるコンテナでの鉄道国際複合一貫輸送が、推進されることが明確にされている。
中国鉄道輸送の現代化と中欧班列
中欧班列の淵源は、中国鉄道輸送の現代化とコンテナリゼーションにある。2000年代初頭に海上コンテナ輸送の発展があり、中国港湾の取扱量が増大したことで、大量のコンテナを内陸部までどう運ぶのかという交通上の課題と鉄道の現代化の課題が出てきた。そこで鉄道コンテナ輸送を本格的に導入整備しようということになり、中国語で「海鉄連運」と呼ぶ国際複合一貫輸送に対応するために、第10次5ヶ年計画にも盛り込まれ、国内輸送だけではなく、三大海鉄連運ルートによる港湾起点のランドブリッジ輸送も始まった。これは連雲港港-阿拉山口-欧州、天津港-二連浩特-欧州、大連港-満州里-欧州というルートがメインとなっている。
ここで言う「中国鉄道輸送の現代化」は何かというと、運航の定時性、高速性、安全性の確保、ドアツードアのサービスの確立だが、裏を返せば中国鉄道にはそれらがなかったということになる。
鉄道部は鉄道コンテナ輸送の確立を目指して貨物のコンテナ化を進めたが、そのためには、鉄道コンテナ輸送の実現のためのインフラ整備を一から始めなければならず、コンテナ取扱駅の整備などのプラットホーム整備が始まった。
ここでは4つのことが行われた。まず中国全土のコンテナ輸送を管理する、中鉄集装箱運輸有限公司(CRCT)が2003年に設立された。さらに2006年に、ハブになる18ヶ所の鉄道コンテナセンター駅の建設が、昆明を皮切りに始まった。3番目には、国際複合輸送(インターモーダル)を管理する中鉄国際多式連運有限公司が作られた。多式連運とは中国語で複合一貫輸送のことだ。4番目には中鉄聯合国際集装箱有限公司(CUIRC)を作り、鉄道コンテナセンター駅の管理を行うこととした。
18ヶ所の鉄道コンテナセンター駅には、港湾型と陸港型の2種類がある。そこではハブ駅同士の輸送体制を整備し、ハブ駅と港湾の連携輸送体制を整備し、ハブ駅と国境都市との連携が進められた。さらに地方有力都市を結ぶということで、地方の有力都市に多数のコンテナ取扱駅が作られた。これにはだいぶ時間がかかっている。このネットワークのもとで、中欧班列が誕生した。
中欧班列の第1便は2011年3月に、渝新欧国際列車という名称で重慶鉄道コンテナセンター駅を出発した。重慶から新(新疆)を通って欧州への国際列車につながることでこの名前がつけられた。その後続々と、漢新欧(武漢発)、青新欧(青島発)、蓉新欧(成都発)、鄭新欧(鄭州発)、西新欧(西安発)といったセンター駅から一帯一路に向けた路線が続々と開通する。
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