世紀の大変革期における「一帯一路」
筑波大学名誉教授 進藤榮一
一帯一路はグローバル・ガバナンスの象徴
世界は世紀の大変動期を迎え、その転換は中国などのアジア諸国が主導している。この大変動について分析する前に、我々は近現代史における2つの大変動にさかのぼってみたいと思う。18世紀の産業革命と、19世紀末から20世紀中葉にかけて起こった第二次、第三次産業革命だ。
御存知の通り、科学技術は人類の歴史の発展を推し進めてきた。科学技術の飛躍的発展は、その後100年から150年間の歴史を変えていく。1785年に英国は蒸気機関による工場制機械工業を確立し、第一次産業革命の担い手となった。その後19世紀半ばにはムガール帝国と清朝に勝利し、世界の覇者となる。19世紀末からの第二次産業革命では、電力や石油を使った新たな動力が生まれ、20世紀中葉の原子力の利用という科学技術のブレイクスルーは、新たな世界の覇者・米国の出現を呼んだ。そして現在の産業革命は、国際的な分業形態を徹底的に変え、サプライチェーンを世界中に張り巡らせ、国と国とを密接に結びつけた。これにより、南北と東西の逆転が徐々に現実のものとなった。2010年の中国の国内総生産(GDP)は日本を超えた。一部の学者は2030年あたりまでには米国を凌ぐと予測しており、将来的には「グローバル・サウス」の国家(ラテンアメリカ、アフリカ、アジアの一部を含む発展途上国)のGDPは先進国を上回る可能性すらある。こうした劇的な変化は、国際秩序とグローバル・ガバナンスの変化にも必然的につながってくる。
19世紀の世界は英国を筆頭とする帝国主義植民地体制が築いた「陽の沈まない帝国」、イギリスが掌握し、「パクス・ブリタニカ」の世紀が登場した。20世紀は米国が世界覇権を掌握して、いわゆる「パクス・アメリカーナ」の時代となった。そしてヒト、モノ、カネがかつてないスピードで流通している21世紀の今、グローバリゼーションの波に適応するために、従来とは全く異なる新しいグローバル・ガバナンスが出現すると私は見ている。2013年に中国の習近平国家主席が提唱した一帯一路は、まさにこの新しい国際秩序の象徴だ。
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