中日経済貿易関係の基盤と未来
中国社会科学院日本研究所前副所長 張季風=文
半世紀にわたり、中国の急速な発展は中日経済貿易協力の健全な発展に根本的な原動力をもたらした。同時に、中国経済の異なる段階における発展の需要に日本も相応の貢献をしてきた。経済貿易協力において、中日両国は互いに促進し、補い合ってきた。
しかし、2010年9月に漁船衝突事件が起き、12年に日本政府がいわゆる「島の国有化」を実施したことにより、両国関係は冷え切った。中国経済も年平均で2桁の高速成長から、質を求める中高速成長へ転換した。さらに新型コロナウイルス感染症の影響、また日本政府が米国に追随して中国封じ込めを行い、経済上の「脱中国化」政策を推進することにより、中日経済貿易関係は転換・調整期に入った。
この時期の中日貿易の年平均成長率はわずか0・8%であり、全体として後退・低迷・変動の局面が見られた。12年以降、日本の対中投資は全体としてマイナス成長を示し、昨年の投資額が39億1000万㌦とプラス成長に転じたものの、過去最高額の半分程度しか達していない。
だが、喜ばしいことに、今年1月に地域的な包括的経済連携(RCEP)協定が発効した。これはアジア地域の経済一体化を深め、世界経済を安定させる上で象徴的な出来事だ。中日両国はまた、RCEPの構想から発効に至るまで重要な役割を果たした。
2020年7月に中日(蘇州)地方発展協力模範エリアが設立され、国レベルの中日協力模範エリアの建設が新たな段階に突入した。同年9月4日、総投資額約100億元、中日双方が共同で打ち立てた「長江デルタ中日センター」プロジェクトの調印式が行われた(写真提供・張季風)
現在、世界は過去百年なかった国際情勢の変動に直面しており、中日経済貿易協力は多次元・多ルート・多様化の局面が見られる。「一帯一路」の枠組みの下、18年に中日第三国市場協力フォーラムで総額182億㌦に及ぶ52件の協力覚書が締結された。同年、中日は総額2000億元の通貨スワップ協定に調印した。これは両国が5年ぶりに通貨スワップを再開し、金融協力が復活したことを意味する。また、17年に「中日省エネルギー・環境総合フォーラム」が再開し、20年から二酸化炭素(CO2)排出量ピークアウトとカーボンニュートラルの「ダブルカーボン」での両国の協力が絶えず深まっている。20年、国家発展改革委員会は成都、天津、大連、上海、蘇州、青島、北京の7都市の中日地方発展協力模範エリアの設立を承認し、日本企業の投資誘致および金融や投資、科学技術・イノベーション、サービス貿易分野での中日協力に新たなチャンスをもたらした。日本の国際協力銀行(JBIC)が昨年に発表した「わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告」によると、今後3年程度の有望な事業展開先国・地域について、中国は47・0%の得票率で引き続き首位に立った。日本企業が依然として中国市場に自信を抱いていることがうかがわれる。
50年の発展を経て、中日両国の経済貿易協力は深まり、互恵的かつ相互補完的なパートナーシップを形成した。伝統的な分野でも新興の分野でも大きな協力の余地があり、特に科学技術・イノベーションや「ダブルカーボン」、医療・ヘルスケア、金融サービス、第三国市場の開拓などの分野では、高いレベルの互恵・ウインウインを実現する大きな可能性を秘めている。次の50年間の中日経済貿易関係も期待できるだろう。