光と円満がテーマの現代舞踊 赤字でもダンスの感動伝える
2019-07-23 15:35:00
インスタレーション作品と共鳴するコンテンポラリーダンス作品『形隠・不離』のワンシーン(写真提供・北京現代舞団)
昨年11月、上海と北京で日本の舞踏グループ「山海塾」による『降りくるもののなかで―とばり』が上演された。それから間もなく、高艶津子率いる北京現代舞団が『水・問』と『三更の雨・願い』というオリエンタリズムあふれるコンテンポラリーダンス(現代舞踊)2作品を上演した。これは日本と中国の二つのコンテンポラリーダンス・ユニットに起こった偶然の対話だ。両者の作品ははっきりと異なる様相を呈しているが、共に西洋文化とぶつかり合う中で、自国や現代に適したコンテンポラリーダンスの表現を探求したことは疑う余地がない。
面接に来た若いダンサーの演技を稽古場でチェックする高さん
反抗から伝統への回帰
高艶津子という名前から日本人だと思われることが多いが、彼女は貴州省出身のトゥチャ(土家)族だ。1995年に北京舞踏学院第1期コンテンポラリーダンス脚本・演出クラスを卒業し、同年に北京現代舞団に入団した高さんは現在、唯一の創設メンバーとして同団の芸術ディレクターを務めている。コンポラリーダンスに対し、高さんは次のように理解している。「コンテンポラリーダンスは異なるジャンルの芸術を最も尊重していて、あらゆる生命の独自の思考、イメージ、表現力を重んじています。伝統的な舞踊では、全員をまとめ上げて同一のものを表現しますが、コンテンポラリーダンスでは、各自が自信を持って大胆に自己を表現します。これがコンテンポラリーダンス最大の魅力です」
コンテンポラリーダンスは西洋ではクラシックバレエへの反抗であり、身体言語における探求と克服だ。中国に進出したコンテンポラリーダンスは、同様に「常識を打ち破る」革新者としての役割を演じた。しかし、ダンサーの表現がより成熟し自信にあふれていくうちに、「反抗」はもはや重要ではなくなった。高さんは次のように話す。「16歳から20歳の頃に反抗することは、格好良いと言えなくもないですが、それからも反抗する人はとても子どもっぽいと思いますね。自分に自信がないと言っているのと同じです。ダンスも一緒で、自身が持つあらゆる可能性を探求してから伝統文化に戻れば、自信は自分をより強くさせてくれます。だから私は伝統文化を拒みません。私の作品は、考え直す、想像し直すというオリエント文化に深く根差しています」
同じ東洋のコンテンポラリーダンスとして、「暗黒舞踏」のような日本のダンスは色合いが暗く、ゆがみやねじれがあって、たけだけしい。これには、日本人の骨に刻まれた悲劇の美学や、「空寂」を追い求めることと関係があるかもしれない。高さんの作品には痛みやあがきがあるが、結末は中国人観客が胸をなでおろす大団円と温かみが用意されている。高さんはこう話す。「『暗黒舞踏』が表現する生命の原初の状態が大好きで、生の表現も死の表現も好きです。その美学は俗世間からかけ離れていて、特殊な美しさがあります。しかし、それは私の求めるものとは違うとも考えています。私は、暗黒のものに興味がないのです。私の作品は苦痛を表すとしても、最後に希望の光を見せます。その光が苦痛を見つめているのです」
『三更の雨・願い』では、無念の気持ちを抱きながら死ぬ喜娘(花嫁の付添の女性)が雨の夜に花、鳥、魚、虫、草に5回生まれ変わり、最後に自身との和解に至る。そして『水・問』では、ずっしりのし掛かる岩石の下で舞うダンサーたちが、最終的に満開のハスの花を見る。これらの「光」の原点は高さんの女性的な優しさにあり、もしくは中国の伝統的な美学が追求する「円満」の体現かもしれない。
『水・問』を演じる高艶津子さん(右)
次世代のダンサーとファンへ
高さんは感情と直感に従う創作者だ。「私は作品で自分の体のスタイルをデザインしません。私の生命の形を作品に変えるんです。既存のテーマにのっとった作品は、私の生命とは関係がないものなので創りたいとは思いません。今の私が痛みや喜びを生み出すところから思考やイメージを始めなければならないんです」。北京現代舞団が生き残っている現状から言えば、彼女の創作理念はぜいたくかもしれない。
北京現代舞団は民間の非営利団体で、現在は7、8人の常駐ダンサーがいる。年間運営コストは200万元に上り、各種プロジェクト基金の援助があるが、水道・電気代や賃貸料などはみな興行収入でまかなう。北京の劇場の使用料が1日10万元の現在、チケット代の売り上げが使用料に届かないのも珍しいことではない。これに対し、高さんは次のように話す。「お客さんが買ってくれる1枚のチケットに私たちは生かされています。北京現代舞団がここまでやり続けてきた理由は、優秀なダンサーに芸術を信じさせ、ステージを用意するためです。あまりにも純真である彼らには、自分の専門分野で生きてほしいです」
大きな経済的困難に直面しているが、同団体は赤字覚悟で公演を続けている。『三更の雨・願い』が、300年以上の歴史を持つ北京の劇場「正乙祠戯楼」で上演して4年たつが、会場はいつも満席だ。しかし古くて狭いため座席は100席もなく、満席でも元が取れない。しかし高さんはここで公演を行うことを大切にしている。なぜなら、正乙祠戯楼に見に来るお客さんの大半はダンスの素人だが、その中にはダンスに興味を持つようになったり、偶然観光で立ち寄った客がダンスファンになることもあるからだ。
京劇から多くのインスピレーションを得ている『三更の雨・願い』のワンシーン(写真・文芳)
「ダンスとは本来、人生の中で利益を求めるためのものではありません。ダンスとは美しい願いで、他の芸術の形式と比べて、一瞬で消え去り、体と年齢とステージの制限を受けますが、ぬくもりがあります。劇場を訪れれば、ダンサーが流す汗、ダンサーの呼吸、ダンサーの激情を見られます。ダンスがもたらすのはこの温度です。私たちに何か求めるものがあるとすれば、それはどうやってお客さんにこの感動を伝えるのか、ということです」(高原=文 馮進=写真)
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