90年前の道程を再体験(1)特産品生かし発展

2026-10-21 13:48:00

1934年10月から36年10月にかけて、革命の力を温存し、民族再生の希望を追い求めるため、中国工農紅軍は人類史に刻まれる戦略的大移動――長征を行った。2年に及ぶ長い遠征で紅軍は過酷な自然環境と幾重にも張り巡らされた包囲網に直面し、終わりの見えない餓えと寒さ、生死の試練を経験し、想像を絶する粘り強さと勇気によって人類史における偉大な快挙を達成した。この10以上の省をまたいだ約2万5000里(1万2500㌔、中央紅軍第一方面軍で最長の行程)の行軍は中国革命の運命を転換させたばかりか、後世に続く長征精神を残した。 

長征勝利90周年を記念し、中国外文局は「長征の道を共に歩む」と題した当時の紅軍の足跡をたどるイベントを行い、本誌が所属するアジア太平洋広報センターが甘粛省での取材と報道を担当した。1週間に及ぶ行程で、中国、米国、英国、日本、オランダ、ブラジル、ニュージーランドなど各国の専門家やメディア関係者、中国と縁の深い海外の人々、党史研究者、紅軍の子孫などで構成された国内外取材団が甘粛省の蘭州市、岷県、臘子口(迭部県にある峡谷)、哈達鋪鎮、会寧県などを訪れ、革命の旧跡から歴史を振り返り、農村や産業の最前線で発展を見つめ、数々の取材と交流を通じて、長征精神がどのように現代に示唆を与え、世界にどのような啓発をもたらすのかを探求した。 

甘粛省南部にある岷県は甘粛省と四川省を結ぶ交通の要衝であり、古来、戦略上重要な位置を占めてきた。かつて紅軍はこの地で休養し、食糧を調達し、部隊を拡張して、その後の行動に備えて力を蓄えた。ここで開かれた岷州会議は、北上という戦略思想を統一し、紅軍主力が会寧での勝利の合流に向けた重要な礎を築いた。90年以上の時を経て岷県を訪れた国内外のゲストの目に、革命の旧跡に残る歴史の刻印とともに、温室や畑、加工工場、産業拠点が織りなす新たな景色が飛び込んできた。 

かつて国家貧困救済・開発活動重点県だった岷県は、六盤山区域(広域にわたって集中的に存在する特別貧困地域で、陝西・甘粛・青海・寧夏の4省・自治区にまたがる)の重点貧困県の一つでもあった。インフラが脆弱ぜいじゃくで、自然条件も限られ、産業の発展が不十分だったことが、地元の人々が乗り越えねばならなかった障壁だった。現在、岷県は地元の自然条件や物的資源を踏まえ、生薬や牧草産業などの特産品産業を発展させ、栽培から加工、取引、物流に至る産業体系を徐々に形成している。長征の道における戦略的要地は、今や農村振興の要所となりつつある。 

岷県トウキ研究院の種苗育成拠点には、各種の薬用作物が区画ごとに整然と植えられている。ゲストたちは研究員から優良品種の育成、標準化された栽培、そして伝統的な薬用資源の保護・開発について詳しい説明を受けた。 

岷県は「中国トウキの郷」とたたえられている。一株のトウキは栽培・加工・倉庫保管・取引といった複数の段階を結び付けるとともに、多くの世帯の生計にも直結している。大規模栽培、標準化生産、産業チェーンの延長を通じて、岷県のトウキは畑からより広い市場へと歩みを進めている。現在、岷県のトウキ取引量は中国全体の約80%を占め、薬用作物による収入は農民の1人当たり可処分所得の60%以上に達しており、生薬産業は岷県の県財政と住民双方を豊かにする第一の基幹産業となっている。 

地元経済は生薬という特色ある産業チェーンに支えられ、持続的に好転している。2020年11月、岷県は正式に貧困県リストから外れた。貧困脱却は単に収入の数字を変えることではなく、より重要なのは発展の在り方を変え、住民に持続的な発展能力を身に付けさせることだ。産業による貧困支援がもたらしたのは経済的収益だけでなく、自信と希望でもある。 

中国政府友誼賞受賞者で外文出版社の名誉英語編集長のデビッド・ファーガソン氏は甘粛省の農村発展に長年関心を寄せてきた。彼の見解では、農村振興の意義は農村を人々が「とどまることができる場所」にすることだけでなく、「戻ってきたいと思える場所」にすることにある。貧困脱却の難関攻略戦は人々が貧困から抜け出す手助けをし、農村振興はその上に雇用を創出し産業を発展させ、生活改善を持続可能なプロセスにすることを目指している。 

近年、岷県では若者が地元に戻り起業する動きが活発化している。故郷を離れて働いていた青壮年が、今では資金や技術、視野を持ち帰り、この良質な生薬を育む大地に根を下ろしている。沈建民さん(38)もその一人だ。長年よそで働いていたが、帰郷後、トウキの栽培・収穫・一次加工に従事し、岷県トウキの生育特性や伝統技術に詳しい「新たな薬用作物農家」となった。 

沈さんは地元で知られた「インフルエンサー」でもあり、ショート動画や畑での解説、対外PRを通じ、素朴で生き生きとした言葉で岷県の自然環境やトウキ栽培、薬用作物農家の生活を紹介している。さらには簡単な英語を使って海外に岷県トウキの文化を発信しようと試みており、岷県トウキ産業の民間広報における「ご当地顔役」的存在となっている。今回の取材では、英語でファーガソン氏と会話を交わした。 

寺溝鎮立林村では、もう一つの岷県特産品にゲストたちは新鮮な驚きを覚えた。かつては主に牧草として使われていたチモシーが、今ではペット経済の発展に伴い、ウサギやチンチラなどのペット用飼料となっている。地元の2世代にわたる人々は、試験栽培・買い付け・卸売りから始め、徐々に加工・EC・ブランド販売の段階へと進み、一株の変哲もない牧草を住民の雇用と収入向上を支える特産品産業に育て上げた。 

90年以上前に紅軍が岷県を通ったのは、追撃と包囲を振り切り脱出し、革命勝利への道を探るためだった。今日、岷県の住民が歩んでいるのは、貧困脱却から農村の全面的振興へと至る発展の道だ。 

中国政府友誼賞受賞者で廈門(アモイ)大学教授のウィリアム・N・ブラウン氏は、中国で40年暮らし、長征沿線の多くの地域を訪れ、現地の多くの人々と交流してきた。その中にはへき地の山間部で教える教師もいれば、厳しい環境に身を置き続ける末端幹部もいた。ブラウン氏によれば、今日の人々が直面している困難は90年前と全く異なるが、貧困脱却の難関攻略戦から農村振興に至るまで、目標を定めて決して諦めないという精神は変わっていない。10年前に長征ルートの一部を踏破した米国スプリングフィールド都市連盟のマーケティング・コミュニケーションマネージャーを務めるザヴィエ・ハリス氏は、今回再び甘粛省を訪れ、道路や施設、インフラの変化だけでなく、産業の発展や住民生活の改善も目の当たりにした。彼にとって、これらの現実の変化は、長征精神を単なる歴史的概念ではなく、今日においても検証可能な力として示すものだ。 

人民中国インターネット版

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