経済分科会:不確実性から自由貿易守る
王朝陽=文
ドナルド・トランプ氏が1月20日に正式に米大統領に就任し、再びホワイトハウスに戻った。彼が掲げる高関税をはじめとする保護主義的な政策は、国際貿易秩序を乱し、世界市場を揺るがしている。今年、世界経済はさらなる分断に向かうのか、それとも開放協力を唱えるグローバリゼーションに戻るのか。経済分科会では、「多国間主義に基づく経済秩序と中日経済協力の修復」というテーマを巡って、中日経済界の重鎮が踏み込んだ議論を交わした。
世界に振るう関税という金棒
昨年11月の米大統領選挙で勝利して以来、トランプ氏は就任後に追加関税を課すことを重ねて表明してきた。2期目でトランプ氏が取り得る経済政策とその影響を見据え、「不確実性」は今回の分科会でパネリストたちが最も多く言及したキーワードとなった。元財政部副部長の朱光耀氏は「2025年は世界経済がさらに厳しい挑戦に直面する可能性がある」と断言した。米国が中国からの輸入品に10%の追加関税を課す措置や、中国政府が取り得る対抗措置について、前経済産業大臣の齋藤健氏は「今、自由貿易は危機にある」と悲観的に懸念を示した。
実際のところ、日本もトランプ氏の高圧的な関税政策の影響から逃れられない。元財政部部長の楼継偉氏は「1期目にトランプ氏は中国に圧力をかけると同時に、同盟国と貿易戦争をもした。今回4年ぶりにホワイトハウスに戻ったトランプ氏はますます強硬な姿勢を取るかもしれない。日本は巨額の対米貿易黒字を抱えており、同盟国の立場を利用して追加関税を逃れることは難しいだろう」と分析した。
近年、米国が取った関税政策やCHIPS法の制定などさまざまな保護主義的措置は、世界貿易のグループ化、ブロック化をますます加速させている。元中国輸出入銀行董事長の胡暁煉氏は、「これによって技術的障壁(4)が生じたり、産業チェーン・サプライチェーンの再構築を余儀なくされたりして、世界経済の効率の低下につながった」と振り返った。
世界経済の大船を安定させる
米国が関税を武器に自由貿易体制を恣意的に破壊し、世界経済に不確実性の影を落としている中、主要経済国である中日両国はどのようにして今年のトランプストームを乗り越え、世界経済の大船を安定して航行させられるか。
前中国人民銀行総裁の易綱氏は「2008年の世界金融危機以降、世界貿易機関(WTO)加盟国が発動した貿易制限的措置はすでに2100件に上っており、それによる貿易の断片化で世界のGDPが5%減少した」とWTOの統計データを引用した上で、「困難な環境の中で、われわれはWTOのルールを尊重し、自由貿易を守るために全力を尽くす必要がある。同時にRCEP(地域的な包括的経済連携)協定をはじめ、域内の自由貿易協定を支持し、少なくともアジア地域では排他的でないようにして、これにより世界の自由貿易を維持・促進しよう」と呼び掛けた。
胡氏も経済分野の安全保障化を避けるべきだと訴えた。「高齢化の対応やグリーン発展の推進といった分野では、科学技術イノベーションとデジタル情報技術が欠かせない。デジタルと科学技術分野における協力を全て国の安全保障に関わる問題だと見なし、交流の扉を閉めれば、最終的に全人類の福祉向上に影響を及ぼす」と具体的に述べた。
朱氏は中日両国がより多くの制度づくりの協力を展開すべきだと提案した。「中日韓+ASEANが金融分野における協力をさらに強化することを期待している。チェンマイ・イニシアチブの通貨スワップ資金規模は2000年の創設当初の800億㌦から現在の2400億㌦に増加し、国際通貨基金(IMF)デリンク割合も40%へ引き上げられており、運営メカニズムの構築を推進するときが来ている。中日はチェンマイ・イニシアチブの最大の出資国として重要な役割を果たせる」と踏み込んだ具体案を出した。
競争の中で共に発展
自由貿易の前提は国と国との信頼関係にある。分科会で、複数の日本側パネリストは両国指導者の早期相互訪問の実現に期待を表明した。齋藤氏は、首脳同士の意思疎通は二国間関係の発展にとって重要なけん引力になるという考えを述べた。
元アジア開発銀行研究所所長の河合正弘氏は、中日の第三国市場協力に対する指導者の戦略的指導の促進作用にとりわけ注目している。「ポストコロナ時代に日中は代表的な第三国協力プロジェクトを打ち出す必要がある。両国首脳が会見でこれを議論し、推進することを期待している」と展望を語った。
目下、中日企業は東南アジア市場で一連の協力事業を展開している。中国企業は東南アジア諸国で新しい市場を開拓する際、資金調達や情報獲得などの面において、日本企業と緊密に協力しつつ、電気自動車などの業界において、日本企業との競争を繰り広げている。このような実例を挙げて、大阪経済大学教授の福本智之氏は「日中両国は互いの強みを補完し合い、共に革新を進めると同時に、競争を通じて共に成長している。このような競争と協力の関係は比較的理想的なモデルだ」と述べた。
これはまさに自由貿易の最も主要な役割――つまり、競争によって企業の革新力を引き出し、世界の繁栄を促進し、全人類の福祉を高めること――だ。不確実性に満ちた2025年に、同じ自由貿易の受益者として、中日両国は保護貿易主義に断固反対し、手を携えて自由貿易の守護者になるべきだ。