青年対話:理念を理解し未来を「共創」
張雪松=文
中日関係の根幹は民間にあり、未来は若者の手にある。3年目を迎えた青年対話会は、このような初心を引き継いで明日に目を向け、未来を論じ合った。「分断に向かう世界と人類の未来に希望はあるか」と題した今年の対話会では、厳しい国際情勢と大きな困難に臨む時代において、中日の若者はどのような責任を負い、どのように未来を切り開くべきかについて話し合った。
冷静に世界を見る
世界に200万以上のユーザーを有するグローバル・オンライン教育プラットフォーム「VIPKID」の創設者兼CEOの米雯娟氏は次のような考えを述べた。「反グローバリゼーション」というカオス(10)が世界中で現れているが、大部分の人々はグローバル化を変わらず求めていて、民心の通じ合いと海外進出への熱意はすさまじいままだ。従って、若者は世界に目を向け、相手国の国民と率直に交流し、分断がもたらすマイナスな影響を払拭しなければならない。
中日の対外援助を研究し、中国のグローバル発展イニシアチブや「一帯一路」イニシアチブなどに深い考察と理解を持つ国際文化会館・地経学研究所主任研究員の土居健市氏は次のような考えを述べた。現在、世界は地球温暖化、地域紛争、戦乱や衝突など各種の複雑な課題に直面している。グローバルサウスが独自に成長を遂げ、国際的な場でさらなる発言権を得たいと考えるようになり、中国からも同様の声が上がっているが、先進諸国はその新たな状況に適応できていない。先進諸国は自分たちが世界の発展をリードしていると常々思っており、そのために新たな矛盾や意見の相違、分化や調整が起きている。世界の東側と西側、発展途上国・先進国間での多くの誤解や溝はこうして生まれている。
中日両国民にある相互信頼の不足について、中国社会科学院日本研究所総合戦略研究室主任の盧昊氏は、「コップ半分の水」を例に出し、水が半分しか入っていないと考える人もいれば、まだ半分も入っていると楽観視する人もいると指摘した。そして、「中日両国のポジティブで建設的な部分に目を向ける人間が多ければ、中日関係の未来が広がったり、より大きな空間ができたりするだろう」と述べた。
競争から共創へ
中国に19年暮らし、清華大学を卒業した「Asu Capital Partners」ファウンディングパートナーの夏目英男氏は、中日民間交流の使者だ。今の若者の重要な問題として、相互理解と交流が欠如し、相手国の現状が理解しづらいことを挙げ、このような環境では協力が非常に困難になり、双方が協力を深めるメカニズムをつくるのはさらに難しいと述べた。「『競争』と『共創』は発音は同じだが、意味は正反対。日中の若者は競争から脱し、未来を共創してほしい」
東京工業大学工学部博士課程に在籍し、全日本中国人留学生学友会会長を務める王成蹊氏は、国民の相互信頼の欠如と溝が深まり続ける根本的な原因は、「第一歩を踏み出そうとしない」からだとする。この第一歩には、相互交流し、協力を深め、問題解決のために手を取り合おうとする意欲が含まれており、「人々を歩み寄らせるために、より多くの交流の場を設けるべきだ」と指摘した。
未来はすでに訪れており、科学技術がこれまでにない革新力と創造力で世界を変え、われわれのコミュニケーションと生活すらも変えている。交流の役割はこれによって減るのだろうか? それに対する米氏の答えはノーだった。科学技術がどれほど猛烈に成長しようとも、未来の世界はまた新たに結び付けられるというのが彼女の考えだ。「2050年には、現実世界、仮想世界、AI世界といった数々の世界ができ、コミュニケーション方法も現在と違うかもしれないが、それらの世界はなおも互いに浸透し合い、つながり、融合し続けるだろう」
文化を基礎に心の橋を
中日は一衣帯水の隣国であり、東方文化圏に属し、似通った東方文化を持っている。文化の根源を同じくすることは、中日が何世代にもわたり友好を続けられる盤石な土台である。「難民を助ける会(AAR Japan)」東京事務局プログラム・コーディネーターの清水美徳氏が、自分は中国に行ったこともなく、中国語も話せず、中国にもあまり詳しくないと語ったとき、中国側司会である筆者が「大丈夫です。『清水』『美徳』という名前を見れば中国人ならひと目で分かりますし、ほほ笑ましくもなります。これこそ両国が共有する文化の力です」と言うと、会場の笑いを誘った。
中国人女性と結婚し、米国大手IT企業のマネージャーを務める倉田尚弥氏は国際的な経歴の持ち主だ。「日中関係を改善するためには、両国の若者が東方文化を基礎とし、西洋の先進的な思想を取り入れる必要がある。そうすることで日中関係を改善し、グローバリゼーションに関する多くの問題を解決することができる」と持論を述べた。盧氏も、未来の世界は「地政学が文明の形態とさらに結び付き」、さらなる文化理念や文明観がこの世界に影響を与え、文化が持つ主体的な役割を発揮するという考えを述べた。
「絶えることなく青年交流を強化し、文明の対話を進め、中国を理解し日本を理解することが両国の若者の共に向かう目標となるようにすべきだ。同時に美美与共(自他の美を共に美とする)、和をもって貴しとなす、協力・ウインウインの理念を両国の青年の心に植え付けなければならない」。中国国際青年交流センター公益協力部副部長の許嬿琳氏は最後にそう締めくくった。共に同じ目標を目指し、未来に向かって進む中日の若者にとってふさわしい言葉といえるだろう。