「幸福」を伝える「囍」コレクション

2023-02-23 11:00:00

金知暁=文

王浩=写真

赤い。 

部屋中が、赤一色に包まれている。 

天井から赤いカーテンが垂れ下がり、赤いテーブルクロスの上には赤と白のキャンディーが置かれている。玄関から中に入ると、テーブルや椅子、スーツケース、ビスケットの箱など、空間の至る所にユニークな「」という漢字が見られる。 

北京郊外の古い衣料品工場の敷地内にあるこの工房は、自身の発想によるアートカルチャー「コレクション」の収集家である王艶平さんのアトリエだ。 

「世界の音楽の都」として知られる黒龍江省ハルビン(哈爾濱)市生まれの王さんは1973年、北京舞踊学校に入学した。79年に卒業後、彼女は北京舞踊学校バレエ団、中央バレエ団で働き、研さんを積むため米国にも留学した。『白鳥の湖』『眠れる森の美女』『ドン・キホーテ』『ジゼル』など多くの作品で主役を務めたこともあるという。 

99年、友人と北京市の潘家園骨董市場へ行ったとき、王さんは偶然にも「」と出会った。「その日、『』の文字が書かれた翡翠のペンダントをたまたま目にしました。翡翠は特に好きではなかったのですが、二つの『喜』が合わさったこの字が、まるで二人が踊っているように見えて、なんとも言えない特別な感じを覚えたのです。そうして、『』こそ最もシンメトリーで美しい漢字の一つだと思うようになりました」。その瞬間から、「」にまつわるアイテムを収集する王さんのアート活動が始まった。 

現在、王さんはもはやプロのバレエダンサーではないが、彼女はコレクションによって、もう一つのアート人生を歩み続けている。 

中国北部の内蒙古自治区フルンボイル(呼倫貝爾)市から東北地方、さらには蘇州市、杭州市、重慶市など、時間があれば、王さんは息子と娘を連れ、親友も何人か誘って、一緒にコレクションの旅に出る。 

」にまつわる品物の収集ではさまざまな苦労があり、妹が結婚するからと言って店主と値段を交渉したこともあれば、雲南省大理市の川辺で野菜を洗っていた女性が持っていたほうろうの洗面器を買い取るため、あれこれと掛け合ったこともあった。また、2014年には審美眼を養うべく、北京大学の古代美術とコレクション鑑賞の上級研究コースに参加し、中央美術学院にも通って西洋美術史を学んだという。 

「この鏡を見てください。一見普通の鏡ですが、物不足で貧しかった時代に、20人以上の人がお金を出し合って買った新婚夫婦への贈り物です。 

また、この壁に飾ってあるほうろうの洗面器は、生産を中止した工場から譲り受けたものです。飛行機の中でたまたまこのお店に関する新聞記事を読んで、降りてすぐに工場に連絡したんですよ」 

20年以上をかけて、「」が書かれたものなら何でも集めてきた王さん。現在、翡翠や磁器をはじめとして、銀や青銅、鉄の器、さらに竹や木、刺しゅう、版画など、王さんのコレクションはすでに数千点を超えている。過去には北京市や上海市などで展示会を開いただけでなく、モスクワの東洋美術館に招待されたこともあるという。 

しかし、なぜ王さんは「」の文字にこだわるのか。「」は一体どういう意味を持っているのだろうか。 

漢字の「」は、「喜」という字から派生したもので、字形の成り立ちと本来の意味を説く中国で最も古い字書である『説文解字』によると、「喜」は五声八音の総称だ。五声とは宮・商・角・徴・羽、八音とは金・石・糸・竹・・土・革・木のことで、五声八音は肉声による直接表現と器楽の間接表現を包含し、このグループの総和を「喜」と呼ぶ。 

清代の乾隆年間(1736~95年)中頃から宮中で「」が使われるようになり、嘉慶・道光年間(1796~1850年)に入ると、「」が庶民の間でも受け入れられて、結婚する際に欠かせない要素になったと考証されている。現在でも「」の字を貼ったり、「」が書かれたあめを食べたりする風習は黄河の中流・下流一帯を中心に綿々と受け継がれている。 

では、「」を収集する王さんにとって、この字は何を意味するのだろうか。 

「『』は『結婚』『子ども』を意味し、一族繁栄の象徴であり、吉祥と希望の証しでもあります。多くの人はアトリエを訪れるとずっと写真を撮りっぱなしになり、特に壁一面の結婚証明書を見て結婚したくなったと言う人もいれば、結婚について改めて真剣に考える機会になったと話す方もいました。『』と私は二つの磁石のようなもので、私が『』を探している間、『』も私を探しているような気がします。人々の一番幸せな瞬間を集めることができて、私はとても幸せです」 


「囍」の文字が刻印された魔法瓶とほうろうの洗面器

 

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