草原で音楽と出会う 内蒙古・アジア太平洋音楽フェス
袁舒=文
王浩=写真
7月は、内蒙古の大草原が最も美しい季節。もくもくとした入道雲が青々とした草原にまだらな影を落とし、牛や羊が草を食べ、馬が駆け回る。7月15日、「2023内蒙古・アジア太平洋音楽フェスティバル」が、緑豊かな内蒙古自治区シリンゴル(錫林郭勒)盟タイブス(太僕寺)旗御馬園観光区で幕を開けた。2日間にわたる音楽フェスは、広大な草原の風景に音楽と活力を注入し、参加した音楽ファンにとって忘れられない週末となった。
シリンゴル盟タイブス旗のゴンバラグ草原は北京から350㌔の距離にあり、北京に最も近く、最も完全に保存されている原始的かつ典型的な生態草原で、首都の「裏庭」や天然の「酸素バー」と呼ばれている。車で4時間余りで到着できるここは、北京・天津・河北地区の多くの観光客を引き付けている。
音楽フェスティバルは、今年の中国の人々の生活トレンドの一つだ。広々とした会場で音楽に合わせて揺れたり叫んだり、情熱を思い切り解き放つことは、3年間の新型コロナウイルス感染症対策期間後の人々の生活の再構築でもある。1回目となるアジア太平洋音楽フェスは、タイブス旗の草原が「音楽+(プラス)」という形で観光客に認識してもらえる初のイベントでもある。草原での音楽フェスの開催は、草原観光経済の振興となるだけでなく、素朴で美しい草原の風情をより多くの人々に知ってもらう絶好の機会ともなった。
今回の音楽フェスでは、16組の歌手やバンドが出演した。太陽が西に傾くと、タイブス旗のウランムチ(牧歌隊)が、馬頭琴の演奏やホーミー、ダンスなど民族的特色を持つパフォーマンスを観客に披露。そして、一夜にわたる音楽の宴が幕を開けた。
手に持ったペンライトを思い切り振りかざすファンたち
ステージでは、面孔楽隊、周暁鷗、羅琦、王北車、麻園詩人、杭盖楽隊らが次々に登場。若手ミュージシャンとベテラン歌手が沸き立つ人波の中で次々と熱波を巻き起こし、観客たちの情熱に火をつける。音楽ファンたちに素晴らしいパフォーマンスを提供し、草原の夜が沸いた。
夜が更けていくと、ミュージシャンのパフォーマンスの合間に、壮観なドローンショーが音楽フェスの観客を感動させた。500台のドローンがゆっくりと空に上がり、隊列を組んでパフォーマンスを行い、空中で色とりどりの図案を次々と形作った。ライト、煙、レーザーと音楽が相互に映えるダイナミックな雰囲気に、観客たちはこの美しい瞬間を記録しようとスマホ(スマートフォン)を掲げた。
ミュージシャンのパフォーマンスの最後には、花火ショーが繰り広げられた。さまざまな花火が次々と空に上がり、観客の歓声が響く中、華麗な光や色彩が盛夏のゴンバラグ草原の夜空を照らした。
麻園詩人はファンとしきりに交流し、観客席は笑い声に包まれた
にぎやかな音楽がやみ、ステージのライトが消えると、人々は次第にキャンプエリアへ。第2ステージエリアでは、オレンジ色の明かりが白いテントから点々と透けて見える。音楽フェスで一日中思い切り楽しんだ音楽ファンたちは、心地よい虫の鳴き声や草の香りに包まれて眠りについた。このとき、頭上には一本のきらめく天の川が広がっていた。
今回の音楽フェスに参加した音楽ファンたちは、音楽に合わせて歌ったり、天の川の下でキャンプしたりするだけでなく、草原でフリスビーをしたり、馬に乗ったり、地元の濃厚な特産乳製品を味わったりと、思う存分に草原の楽しみを満喫できた。
天津で働く謝さんは、夏休みを利用してタイブス旗の故郷に帰省した。彼女は周暁鷗のファンで、好きな歌手目当てでアジア太平洋音楽フェスにやってきた。音楽フェスでは、熱気あふれる現場の雰囲気に感動し、「故郷がどんどん活気づいていく姿を見てとてもうれしく思います。これからも毎年このようなイベントが開催されることを願っています」と語った。
夕日に照らされるタイブス旗