立秋の取入れ 貴い処暑の雨
文=郭冷秋
立秋
プロフィール |
黒龍江中医薬大学、漢方薬薬理教育研究室副主任、医学博士。漢方の食事療法、養生の研究に従事、黒龍江漢方医薬科学技術進歩一等賞を受賞。 |
立秋の節気と民俗
立秋は、中国では大変重要な歳時の一つ。3000年以上前の周代においては、すでに「立秋の日、西郊で秋を迎える」という祭事が執り行われていた。その日になると、皇帝自らが三公九卿や諸侯大夫を率い、西の郊外に赴く。そこで、秋を迎えるべく、祭事を執り行った。この祭事は漢代にも踏襲されたが、それに加えて生け贄が供えられた。これは、秋は武の気運を高めるということを意味している。また、この時季は、武人たちが訓練を開始し、来る戦に備えた季節でもあった。
夏の最も暑い時季は食欲がなくなり、多くの人が少し痩せてくる。痩せれば当然それを「補う」必要がある。「補う」には、まず立秋のこの日に肉を食べる。立秋には、中国では一般的に、とろ火で煮込んだ肉や骨付き肉を食べるが、もう少しこだわる人なら、白切肉や豚のバラ肉の煮込み、紅焼肉、それに肉入り餃子やアヒルの肉の煮込み、羊肉の串焼き、しゃぶしゃぶなどを食べる。
立秋の養生
立秋の頃は、まだまだ厳しい暑さが続き、天気の変化も激しく、朝晩の温度差も大きい。日中は、相変わらずの炎天下である。この時季は、「早く臥して早く起き、鶏と具に興じる」という早寝早起きの生活をする。夜の睡眠時間を増やし、夏の睡眠不足を補う。立秋を過ぎると、朝は暑くも寒くもなく、過ごしやすいので、体を鍛えるのに最適である。ただ、秋の空気は湿度が低く、肌が乾燥しやすいので、水分とビタミンの摂取が大切である。そして、体力の消耗がだんだん減り、食欲が増し、栄養分を補うのに最適な季節でもある。「乾燥を防いで脂っこくない」陰陽にかたよらず両者を補益する「平補」の食品を選ぶ。例えば、マコモタケ、カボチャ、ハスの実、リュウガン、黒ごま、干しナツメ、クルミなどである。脾臓や胃が弱く、消化不良の人は、脾臓と胃を補う、ハスの実やヤマイモ、インゲンなどを食べるとよい。
処暑
太陽暦では今年は8月23日が処暑である。「処」とは、身を隠す、終えるという意味と「次」という意味がある。処暑とは、うだるような暑さもその身を隠そうとし、秋の気配を感じるが、秋でありながら厳しい残暑もあり、その暑さが夏に次ぐという意味。暑さがまだ猛威をふるうこの時季を、俗に「秋老虎(秋の虎)」と呼ぶ。
処暑の節気と民俗
処暑の前後の民俗には、祖先を祭る祭祀や秋を迎える祭事などが数多くある。民間では、中元を祝うための民俗習慣がある。俗に「作七月半」或いは「中元節」と呼ばれる。古くは、旧暦の7月1日から黄泉の国の扉が開き、7月末にその扉が閉まるまでの間、普渡布施の儀式が行われる。今でも、祖先を祭る重要な祭祀を行う時季である。処暑を過ぎると、秋の気配が濃くなり、郊外に出かけるなど、秋の景色を楽しむ時節になる。この頃には暑さも止み、空には雲が悠々とたなびき、夏のような分厚い雲の影は見えない。民間では「7月8月には美しくたなびく雲を見る」というが「各地を旅して秋を迎える」という意味がある。アヒルの肉は、甘みがあり、体の熱を冷ます性質があるので、処暑にはアヒルの肉を食べる習慣がある。調理方法は多種多様で、煮込んだアヒル肉の薄切り、アヒルのレモン煮、アヒルのショウガ煮、アヒルの丸焼き、アヒルのハスの葉包み焼き、アヒルのクルミ入り揚げなどがある。一般的に北京の人々は、処暑の日に、アヒルとユリの薬膳などを買って帰る。
処暑の養生
処暑が過ぎると、だんだんと湿度が少なくなる。皮膚が乾燥しピンと張った感じがし、髪の毛も乾燥しつやが無くなる。唇も乾燥して切れたりする。これがいわゆる「秋燥」で、漢方で言う「温燥」に属し、さらに、咳や少痰、咽の乾燥、鼻や口の乾燥、手の平と足の裏が熱くなるなどの症状に発展する。また一部の疾病はこの時季ぶり返しやすく、症状が重くなる可能性が高い。例えば、気管支拡張や肺結核など。乾燥を防ぐことが大変だいじである。「秋燥」は体質と密接な関係がある。「秋燥」を防ぐのに一番有効なのは、体質の増強と、飲食の調整と体を鍛えることである。飲食では、まずは津液に養分を与える。適度に水や豆乳、薄目の茶などの水分を摂り、肺を潤し、乾燥を取り除く性質を持つ食物を食べる。例えば、梨、ユリ、ハスの実、シロキクラゲなどである。辛いものや油で揚げたもの、などは控える。
人民中国インターネット版 2010年9月