西園寺一晃=文
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日本人学者の西園寺一晃氏
西園寺一晃(さいおんじ かずてる) 1942年東京生まれ。1966年に北京大学経済学部政治経済科卒業。1971年から2002年まで朝日新聞社に勤務。現在は日本工学院大学孔子学院院長、東京都日中友好協会副会長、北京大学客員教授、中国伝媒大学客員教授などを務めている。 | 今年秋に中国共産党第18回全国代表大会が開催される。今回の大会において、私は3点に注目している。一つ目は人事で、中国にとって大変重要な今後10年間の指導陣容が決まる。二つ目は経済運営だ。中国経済は過去の30数年間で驚異的な成長を遂げてきたが、国内外の新たな環境変化の中でモデル転換が迫られている。三つ目は対外政策だ。冷戦崩壊後、新たな世界秩序はまだ確立されていない。中国が責任ある大国として、どのような対外戦略を打ち出すのか、どのような世界を望むのか、これらの点は非常に興味深い。
中国が独立を勝ち取った過程において、中国共産党は決定的な役割を果たした。さらに中国を改革開放という現代化の方向に導き、人々の生活を飛躍的に向上させたのも中国共産党だ。30数年の奮闘を経て、中国は驚異的な成長を遂げ、世界第2の経済大国となった。しかし中国革命はまだ道半ばであり、依然として発展途上国だ。この発展途上国の中国を「中進国」に引き上げるのが新指導部の役割だと思う。国の発展の基礎は経済だ。しかし、経済の発展とともに、国民の意識やモラルなど素養の面でも飛躍的な向上がなければ真の発展とは言えないだろう。
中国経済は今、転換点に立っている。発展途上において、幾つかの困難に直面している。例えば収入格差の拡大、環境破壊、エネルギー不足と効率の問題などだ。さらに内需と外需のアンバランスは、産業構造、貿易構造の転換を求めている。GDPに占める消費(内需)の割合は、米国70%台、日本60%台、中国は40%台だ。内需を掘り起こさない限りさらなる成長は難しい。その問題解決のカギは都市化にある。これまで立ち遅れていた内陸部農村地帯の都市化が進めば、大きな需要が生まれ、さらなる経済成長の原動力となる。それには政治的安定が不可欠だ。
中国はこれからも安定成長を続けていくだろう。そして、近い将来は確実に強国となるに違いない。人類史上、多くの強国が出現した。それらすべての強国は対外侵略、覇権主義を行った。中国はどうだろうか。もし中国が強国になっても対外侵略を行わず、覇権主義の道を歩まないならば、人類史上初の「平和的強国」の出現となる。
人民中国インターネット版 2012年11月 |