ジョン・ロス(英国)=文
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英国人専門家のジョン・ロス氏
ジョン・ロス
中国経済研究の専門家、ロンドン市の元副市長。現在は上海交通大学安泰経済管理学院の訪問教授を務める。 | 中国は、間もなく中央指導部の改選を控えており、今はまさに過去10年間の経済発展を総括するには、ふさわしい時期と言えるだろう。
この10年間に、中国は世間から注目を浴びるほどの成果をあげ、世界第2の経済体および世界最大の輸出国になった。このほかにも特筆に値する二つの点がある。
まず、過去10年間の一人当たりのGDP(国内総生産)成長率が、人類史上存在したすべての経済体の成長率を上回った。
次に、この成長率を生活レベルで換算すると、過去十年間に見られた中国の消費成長率も、同様にすべての経済体を上回ったことになる。
過去10年間に、中国の年間一人当たりのGDP平均成長率が9.9%、経済成長総量が158%。世界銀行のデータとアンガス・マディソン氏の権威ある歴史統計書『世界人口、GDPと一人当たりのGDP、西暦元年から2006年』によると、中国経済の成長速度は、人類史上の主要な経済体の中で最速だ。そして2008年以降、世界経済が過去80年間で最も危機的な事態に陥っているにもかかわらず、中国経済が依然としてこのような高い成長率を維持できているのは、確かに驚くべきことだ。
このほかに、中国経済は過去10年間の成長規模も現在の主要な経済体を優に上回った。表1は、過去10年間におけるG7、BRICs(ブリックス)と韓国の一人当たりのGDP年間平均成長率と総成長率を示している。中国の経済成長総量は、2位であるインドの2倍に相当し、さらにロシアの2.5倍、韓国の3倍以上に達した。
欧米諸国の一部のメディアは根拠もなく、中国経済の成長は消費の成長に転化できないという見方を示しているが、この点も事実に基づいて説明すべきだ。表2から以下の情況がうかがえる。過去10年間の、中国の一人当たりの消費成長総量は103%で、世界1位だ。中国の消費成長総量はロシアよりも57%高く、韓国の3倍に相当し、米国の約10倍であり、日本の約16倍だ。したがって、中国の消費成長率は決して遅いわけではなく、むしろ世界の他の主要な経済体よりも速い。
これらの成果は、一貫して基本的な経済事実を否定し続け、中国経済の失敗を予測する欧米諸国の学者の見解を見事に反駁するものとなった。
雑誌『エコノミスト』は、2002年6月特別増刊号の中で次のように論じた。「中国経済の成長は、主に国内の推進力に依存し、この推進力は、今になって緩やかになった。過去5年間に、経済成長は主に政府による大量投資に依存するようになり、政府の債務増加を加速させてしまった。このほかに、銀行の不良債権問題と巨額の養老金負担などにより、中国が金融危機に陥るリスクが高くなるだろう。」しかし、実際には中国経済は、危機を迎えるどころか、一人当たりのGDP成長率で、すべての主要な経済体を上回った。
米国の作家ゴードン・チャン氏は、2002年に出版した『やがて中国の崩壊がはじまる』の中で、「5年前、中華人民共和国の指導者には、まだ選択の余地が残されていたが、現在はなくなってしまった。彼らに解決策などなく、時間ももはや残されていない」と記した。しかし、中国は今日に至るまで崩壊することなく、むしろかつてないほどの急速な発展を遂げた。
世界金融危機が発生した時、北京大学のマイケル・ベティス教授が2009年に、「私はやはり昨年の見通しを堅持する……この危機から回復を見せる最初の経済体は米国であり、中国は最後になるだろう」と書き記した。しかし、実際には金融危機発生後の4年間、中国経済は4〇%の成長を記録し、米国の成長はただの1%に留まった。
これらの発言および他の「中国衰退論」を唱えている欧米諸国の見方は、中国経済に対する予測上の細かな誤りに起因しているのではない。なぜなら細部に対する予測を誤ることは避け難いからだ。彼らの見方は、中国経済の全体的な発展傾向に対する誤った予測に基いている。もし適切な分析を行うならば、中国の一人当たりの経済成長率の新記録が更新されているにもかかわらず、なおも中国経済の発展が鈍化する、危機に直面する、あるいは崩壊するなどといった彼らの予測は、すべて信頼性が乏しいことに気付くだろう。
とはいえ、中国経済の注目すべき実績だけを見て、中国の経済発展には何ら問題がないと言えるだろうか?
もちろん答えはNOだ。しかしこの問題において大切なのは、適切な情況下でこの問題を扱うべきであるということだ。過去10年間に、世界のどの国も中国のように急速な一人当たりのGDP成長を遂げたことがなく、中国が遂げたこれらの成長は、まさに驚くべき偉業だ。事実に即したデータによってまとめられた経済論説を信じる人々はみな、中国が収めた成功の目覚しい規模に加えて、これらの実績は中国経済が危機に陥るという見解を徹底的に反駁するものだということを理解できるだろう。
人民中国インターネット版 2012年11月
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